新聞記事文庫 製鉄業(08-038)
国民新聞 1925.7.1(大正14)


世界で指折りの製鉄国になる日本

理研の工学士花岡元吉氏が砂鉄製法の新発見


欧米各国及び我国でも松方家経営の常盤商会、久原鉱業等十ケ所で砂鉄から鉄を採る研究をしているが熔鉱炉に熱風を通して砂鉄を熔かす方法であるため経費も多額を要する上に其産出品は白銑鉄など云う劣等のもので、其上砂鉄が熔けると熔鉱炉の中でそれが固着し一々炉を破壊しなければならない不便があるので、学者間には右諸工場の研究はまだ実用に適せぬものと断定されている、ところが大正十年以来大河内正敏博士の指導を受け四年間に亘って理研で、『砂鉄硫化鉄工等を用い電解による製鉄法の研究』をしている工学士花岡元吉氏の苦心は此程漸く報いられて前記の如き難事業が至極簡単にそうして品質も亦優良な純鉄が採れやがては大戦前から世界第一の称を擅にしていた独逸をも凌駕するであろうと期待されている

電気分解法で

花岡工学士語る

花岡工学士は理化学研究所七号館にて語る『日本に存在する砂鉄の鉄含有量は十数億噸と云われていて鉄鉱も沢山あるが、其適当な利用方法が知れなかったのである、然るに丁度独逸がアルサス・ローレンスにミーテと云う鉄を多量に含んだ鉄鉱を大戦前に研究して鉄を採るようになってから世界第一の鉄産国になったように日本も之れから多量の鉄を産出するであろう、理研の方法は全く欧米各国や日本内地の会社のそれと其趣を異にし電気分解法によるもので、先ず陽電極の中へ鉄煕の水熔液を入れ、其中に又砂鉄を注入し電気を与え分解すると陰極の方へ純鉄が流れて来る、其処へ型を置けば従来多大の労力と経費を用いなければ出来なかった継目無しの鉄管や、砲身に用うる鉄板、ブリキの心鍋、釜何でも直接に出来る、此方法は七十年前から欧米各国の学者が着目した所であるが、学術国の仏蘭西でも未だに幼稚な方法でパイプをヤッと作り出している位である、此外に鉄の採れる鉱物に黄鉄鉱、白硫鉄鉱、満州の鉄鉱等があるが、何れも極く簡単な加工を施した上分解に掛ける、又経済的関係から是まで捨てられてあった屑鉄も非常に多くの純鉄となる』と



データ作成:2001.7 神戸大学附属図書館