新聞記事文庫 鉱産物(02-129)
東京日日新聞 1933.3.31(昭和8)


鉄の代用として鉄より便利なエタニット

鉄に恵まれないわが国に耳よりなはなし


現代文明の基礎である鉄の需要は激増して行くばかり、殊に非常時日本の最大武器として、いくらあっても足りない現状だ、その鉄!鉄!の嵐の中へ、ひょっこり現れた鉄の代用品がある、エタニットといって、石綿(アスベスト)とセメントが原料だが、コンクリートや他のセメント製品と全く異なって、材質は鋳鉄に似ている
石綿を送風機にかけて、あらい繊維状の部分をふるい落し、柔らかい綿花状としたのと、セメント、水を同時に混合し、製紙作業によく似た状態の工程を経てフエルトで漉いた薄い膜を強圧を加えながら鋼鉄ルーラーに幾百回となく巻き、それを外すとパイプ状の製品となる、そのまま水槽の中に一週間位浸した後乾燥して出来上る、これは工業となってからの製法だが、もともとセメントやコンクリートを材料にして鉄材の代用品を造ろうとする考えは古くからあってエタニットの発明も遠く大戦前オーストリアでこれに似た物質の実験されたのが最初だったが、最近イタリーで改良され工業的に成功して注目されて来た、試験によるとエタニット製のパイプは千三百六十八瓩毎平方糎の耐圧力があり厚さ十三・五粍、内径百粍の時、九百六十ポンド毎平方インチの破壊圧力に耐えるというから精々二百五十ポンド位の圧力で少し古くなれば破壊し勝ちな水道鉄管等より強度は遥に高いわけだ
鋳鉄と違って内部に空洞が生ずる恐れもなく、熱や化学作用を絶対に受けず、電気、熱の不導体、勿論さびて腐蝕する事もない、しかも値段は鉄の半値、パイプとしては水道、ガス管等あらゆるパイプから電柱類、板としては建築材料等に鉄製品以上の能率をあげると見られている、最近日本にも入り、イタリーのパテントによって事業を始めているが、セメントは世界でも優良を誇るわが国、アスベストは満洲国にも産出するというから鉄に恵まれない日本には耳よりな話だ

鉄では困る場合その特色を発揮各国では盛んに使用

右につき商工省技師三輪震一氏は語る
これまでもパイプとしてはセメント製のヒューム管等もあったが、エタニットは鋳鉄製品の代用物として立派なものと思う、試験の結果では材質も鉄に劣らない、面白いのは硬度に比して弾力がある事で、コンクリートやセメント製品に対する常識的概念を根本から破っている、水道ガス等の鉄管や柱等にも勿論使えるが鉄では困る場合殊に特色を発揮すると思う
海水に平気だから、築港工事材料や、桟橋等には持って来いだ、最近ある都会の海岸を通るガス管が腐蝕して五年位しか持たないと言うので、エタニット管を使用していたが温泉や海水等の導管も鉄では使えない、日本では日本エタニット・パイプ会社が比較的小規模にやってるが、本場のイタリーや英国等では最近非常に盛んなものらしい、残念ながらパテントがイタリーにあるが、自分としては鉄代用品として立派なものと思う



データ作成:2001.7 神戸大学附属図書館