新聞記事文庫 鉄道(03-091)
時事新報 1914.2.17-1914.2.18(大正3)


横浜市内鉄道改良工事 (上・下)


(上) 三貨物駅新設 貨物線の敷設

海陸連絡改善

横浜港は曩に政府に於て九百余万円を投じて築港に着手し殆ど竣工を告げたるも其海陸連絡の設備不完全なる為め新築港の効用を十分発揮するを得ず殊に大貨物の船積及び陸送に多大の不便を感じたるより鉄道院に於ては其後改良を計画し遠からず一部の竣工を見んとするに至れり抑も鉄道院の工事は海陸連絡の改善殊に貨物運搬の便を計るの趣旨に基けるを以て汽船乗客即ち海外渡航者が該工事竣成後果して従来に比し多大の便益を受くるやは疑問なり

三貨物駅新設

偖従来横浜市内には横浜、神奈川、平沼の三駅あり右の内平沼駅は東海道線専用駅とも見る可く主として横浜市内及び附近の旅客乗降駅たり横浜駅は海外輸入貨物積卸し及旅客の乗降駅たりしと雖も前記の如く陸上設備不便なりし為め旅客は勿論貨物も全部直に船積を為し又は陸送するを得ざりしを以て今回の改良工事は先ず此不備を除却し殊に大貨物の運搬を便せん為め三個の貨物専用駅を新設する事となれ即ち

(一)中央貨物駅 曩に横浜市より買収せる新埋立地表高島町(現在の横浜神奈川両駅中間北方)に一大貨物専用駅を設け此に上屋を建築し岸壁に鉄道を敷設しクレーンを設置し海陸の連絡に遺憾なからん事を期し横浜市に於ける中央貨物停車場たらしめんとす此の工事は目下埋立中にて未だ建物等の設備に及ばず
(二)現横浜貨物駅 現在の横浜停車場は之を電車停車場と貨物停車場とに区分し内田町より長住町に亘る一帯を以て貨物駅となし内田町一丁目(大岡川岸)に海陸連絡設備を為し一面港内に対し一面本部横浜に対する貨物集散駅と為さんとす之が為め此の将来の貨物駅の中央を横ぎれる道路及び市内電車線路(横浜より神奈川方面に通ずる)は廃され現在の横浜停車場西側桜川に沿える道路拡張さるる筈なるが今日は現在の横浜停車場構内に散在せる民家の取毀整理中なり而して築港所謂新港に於て積卸せらるる貨物は凡て此の新貨物停車場を経由するものとす
(三)神奈川砲台跡貨物駅 神奈川町先旧砲台跡に一新貨物駅を建設し是亦海陸連絡設備を施し以て神奈川方面に於ける貨物専用駅たらしめんとす

貨物専用線新設

右の如く貨物専用駅新設の結果之を連絡する新線を要する事となり東海道幹線は神奈川橘樹郡生見尾村地内より貨物線を分岐し横浜市内子安町地先海岸通より神奈川地先千若町二三丁目を通過砲台跡貨物駅を経て表高島町貨物駅に達せしめ此所より二線に分岐し幹線は高架となりて国道を横り高島町一丁目二丁目の間を西戸部町七丁目石□川右岸に至りて現横浜駅より程ケ谷駅に至る現在の線路に連絡し支線は高島町一丁目より南下し内田町なる現横浜貨物駅に達し茲に新税関線に連絡す而して旧砲台跡貨物駅は貨物専用線によりて東神奈川駅に連絡し此に八王子線(横浜鉄道)に接続す(在横浜一記者)

(下) 現横浜駅は電車停車場 国道及市内電車線改廃

幹線変更

三貨物駅新設の結果は従来の東海道幹線に変更を生ぜしむる事となれり即ち現在の神奈川駅より少しく左折し高島町裏海岸埋立地を過ぎ高島町二丁目及び裏高島町一丁目を横断し戸部町七丁目に至り現横浜駅より程ケ谷駅に至り現在支線を其の儘利用して西走程ケ谷駅に達せしめ而して高島町二丁目及裏高島町一帯に亘り(現在の横浜神奈川間国道を取入る)新停車場を設けて東海道幹線に於ける横浜旅客駅となす為め現在の神奈川駅より平沼駅を経て程ケ谷に至る東海道線并に神奈川駅より高島町一丁目に至る線路は当然廃止せらるる可きものなれども此の二線は将来同方面に於ける工業の発達に備うる為め其の儘存置する筈なりと聞けり

電車終点

以上の諸改良工事完成の暁には京浜間の旅客運送は電車を以てし現横浜駅は其の終点となり現在の規模を縮小して設備を改良す可し而して此の電車専用線は東京中央停車場を起点とし東海道幹線に併行して高島町新旅客駅に達し新に敷設せらる可き貨物専用高架線の下を過ぎ高島町一丁目より高架線となりて現横浜駅に至り鉄道院の既定計画に係る横浜市横断大船駅に通ずる線路敷設の準備となすものなり尚お神奈川駅は表高島町貨物駅新設の結果貨物取扱を廃止し同駅は単に旅客専用駅となる可し

道路河流の変更

斯る改良工事の結果国道は従来神奈川停車場東側に於て東海道より分岐し高島町及内田町を経て現横浜停車場前大江橋に至りたれど新に神奈川月見橋より高島町海岸新埋め立地に導き(既に開通せり)高島町新停留場より一直線に大江市橋に通ずる如く変更し其幅員は月見橋高島町新停車場間は十間同停車場大江橋間十間とし現在国道中高島町三丁目乃至八丁目は里道に内田町一丁目乃至五丁目は廃道となり鉄道院用地に編入せらる可く次に石崎橋附近は鉄道敷地となりたるを以て同橋梁は既に西方約四十間の地に換架せられ甲州街道は新橋を迂回し更に高島町新停車場新設及び右道路変更の結果は石崎川及桜川は新に運河を掘鑿して水路を変更するの止むなきに至れり

市内電車線路

偖道路変更の結果又当然横浜電気鉄道線路は変更せざるを得ず即ち神奈川終点より横浜本部に至る幹線中従来第一号国道上に敷設せられし部分は新国道上に変更せられ月見橋高島町一丁目間は既に開通運転しつつあり高島町新停車場大江橋間は同上道路変更拡張工事成り次第同道路上に敷設せらる可く次に戸部線は現在戸部七丁目を以て終点となし幹線との連絡なきも高島町停車場大江橋間直通道路竣工後は戸部七丁目より延長して新に掘鑿せらる可き桜川を横断して高島町新停車場に於て第一号国道に出で南走して桜木町七丁目に至り鉄道院電車線路東側に添いて南下し内田町七丁目にて院線電車高架線路を横り桜木七丁目にて再び新国道に出で神奈川に接続す可し

大江橋改築

高島町新停車場大江橋間の直通道路開通の為め横浜市に於ては現在の大江橋を架替うる計画にて目下其設計準備なりという今其の大要を聞くに現横浜停車場敷地中西側桜川添いの道路拡張せられ高島町新停車場に直通するを以て大江橋亦此の新拡張道路に適応する如く架設せらるるものにて位置は少しく西方に動き現在のものよりは幅員を増加し材料は鉄材を用いアーチ型なりという而して該新大江橋は電車線路を通じ従って現在の電車専用橋は取除かるるものとす

工事竣工期

以上の諸工事は昨今極力工を急ぎ日に進捗しつつあり前記の如く神奈川高島町一丁目は国道電車線路共に竣成開通し表高島町貨物線に於ては既に貨物の取扱を開始し高島町停車場は本年十一月迄に開始の予定京浜電車全部の開通は大正四年度に入る可きも工事成り次第高島町停車場迄通ぜしむる計画にて同停車場は年内開通を見ん予定なれども海陸連絡并に陸上改良工事全部の竣成は今日の所確たる見当つかずという而して大江橋架替工事は予算約十六万円二年継続事業とし市会の協賛次第直に工を起す予定なれば或は大正三年度より着手するを得んかという(在横浜一記者)



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