新聞記事文庫 銀行(10-025)
中外商業新報 1922.12.17(大正11)


銀行の破綻と根本対策

政府当局に望む


積善銀行、報徳銀行を始め東西に於ける諸銀行が破綻を生じ、十五日には又東京の四谷銀行も突如支払を停止し、関西方面特に神戸等にも不穏の取沙汰があって、人心何となく恐怖に傾きつつあるは、実に遺憾千万である。
歳末に際し斯る形勢を呈し来ったので、金融界は自然と神経過敏に陥りつつあるが、併し幸に報徳銀行の善後策は、政府当局が時局の重大なるに鑑み、勧業銀行をして肩代りを為さしむる方法に依り、救済策を講ずることとなったから、恐らく救済が成立し休業満期迄には開店する運びになろう。報徳銀行の整理が出来、爰に預金者に一大安心を与え、金融界の不安気分の大部分は除き去ることが出来る次第であるから、之を動機に一般に近く平静なる状態に復帰するであろうと想像せらる。小銀行中には平素から営業状態の良くないものもあるから、斯るものが今後尚破綻を見んとも限らぬが、当面の応急策としては政府も日本銀行も又同業者も協力して此人心の不安除却に勗め、次で適切なる整理救済の方途を講ずることが肝要である、余輩は切に之を望む。而も之と同時に我国銀行の刷新を計るべく之が根本策としては、曩に余輩が高調したるが如く或は検査監督方法の大改善、或は全国に亘る過多なる大小銀行の合同、或は銀行頭取の他業兼務の禁止等近来に於ける実験に鑑み種々なる対策をも此際十分考究し、速かに之が方策を樹立し其実行に努めねばならぬ。而も今日に及んで銀行界に不良分子の醜悪を暴露するに至ったと云うことは、其源を尋ぬれば、矢張り人心の弛緩、道徳の廃頽から起って居るのである。余輩は今日政府当局者並に銀行家諸氏が応急策を講ずると共に此根本的原因に向って最も深く思いを致し、之が刷振改善に一大努力を尽されんことを切望する。銀行界の不祥事は、当面の救済に依り無論平穏に帰せしむることは出来るが、根源から良くならぬと、又々過ちを出さんとも限らぬ、斯う云う時機に大いに顧み、根本改善を策することが何よりも必要である。


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