新聞記事文庫 銀行(11-194)
中外商業新報 1923.1.23(大正12)


四谷銀行の整理如何

預金者の態度は頗る強硬


目下休業整理中の四谷銀行が百円以下の預金者に対してのみ全額の払戻をなし百円以上の預金者に対する払戻を延期したので多数預金者(百円以上)の激昂を買い同行重役対預金者間に紛擾を醸して居ることは既報の如くであるが、同行では之れが善後策を講ずる為め十九日臨時株主総会を開き専務取締役今津源右衛門氏より銀行休業の顛末及資産の内容を説明し重役一同引責辞職を申出でたが、後任重役に就任者がないので重任と決し今後の整理方法に就て協議を進めた処結局銀行の貸付金が固定して全部の払戻に応ずる訳に行かないから

(一)未払戻預金に相当するだけの増資をなし該預金を新株の払込に振替える事
(二)急速に貸付金の回収を行い之を以って預金の一部を払戻し残余は向う三年乃至五年の据置として除々に全額の払戻をなす事

等の二案を得たが(一)は預金者全部の承諾を得られそうもないから差当り(二)の方法に依る外はないが之れとても半額以上の払戻しは不可能であるし左ればと云って半額以下の払戻しでは是又預金者の同意を得られそうもないから最後の手段として預金者側、株主側及四谷区の有力者中より各三名宛の整理委員を選び重役側と協力して整理の衝に当る事に決議して散会した、一方預金者側の意嚮は同行の貸付総額約百九十万円の内五十万円は全然回収不能であり四十万円は急速に回収する訳に行かないから残り百万円に対する担保物件を提供して他の有力な銀行に肩代りを依頼し預金一口当り七割以上に相当する現金を得て払戻を行えば残り三割は据置きにするけれども左もなければ破産申請の手続に及び飽までも預金の保護に努める積りであると意気込んで居る、因に同行の休業最終日は本月二十六日限りで二十七日から営業する予定だが事情右の如くであるから迚も期日通りに開業は出来ないであろうと見られて居る


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