新聞記事文庫 通商条約(0a-152)
東京朝日新聞 1938.7.6(昭和13)


日満伊通商協定の正式調印を終る

懸案の満伊条約も成立


日満伊三国通商協定は五日午後三時半外相官邸で宇垣外相、阮満州国大使並に伊太利側代表エトレ・コンチ経済団長との間に正式調印を終了茲に三国間の新通商協定が成立するに至った、右につき五日午後四時半外務省よりコンミュニケが発表されるが協定内容の発表は御批准の関係により遅れるようである
 尚満伊修好通商航海条約はこれに先だち五日午前十一時満州国大使館において阮大使とコンチ団長との間に正式調印が行われた

外務省発表

日満伊三国の通商協定に関し外務省は五日左の如く発表した
 日満伊三国間貿易協定に関する外務省情報部発表
 五月初旬伊国経済使節国来朝以来日満伊三国代表者間に鋭意交渉を重ねたる結果宇垣外務大臣阮満州国大使及びコンチ団長は本日外務省において「イタリー国を一方とし日本国及び満州国を他方とする貿易及び之より生ずる支払を規律するイタリー国政府、日本国政府及び満州国政府間協定」に調印を了したり本協定の目的とする処は一方に於て日満両国と他方に於てイタリー国との間の貿易を一対一の求償の基礎に於て増進し且均衡を計るに在り、伊国経済使節団は極東に於ける短期滞在の期間を割き満州国を往訪したる為東京に於て行われたる本件交渉は一行東京帰還迄一時持越されたるも交渉当事者の熱意と三国間に存する友好関係に対する相互の深き認識とは終始協調と互譲の精神となりて現われ遂に妥結を見るに至れり今後本協定の実施に依り相互の経済関係は愈々緊密となり三国親善関係亦益敦厚を加うるべきを信ず

共同コンミユニケ

満伊修好通商航海条約正式調印に関し満州国大使館では五日左の如き満伊共同コンミュニケを発表した
 イタリー経済使節団到来以来新京及び東京において行われ来りたる満伊両国代表間の交渉は満足すべき結果に到達したるを以て両国全権委員たる駐日満州国特命全権大使阮振鐸閣下とイタリー経済使節団長エトレ・コンチ閣下は本日在京満州国大使館において「満州国及びイタリー国間修好通商航海条約」に署名調印を了せり、本条約は両国間の友好親善関係をより鞏固ならしめ、且相互間の通商関係を益々発展せしめんことを目的とする基本条約なり、昨年末伊太利国が欧米の諸列強に率先して満州国の正式承認をなしてより以来満伊両国間に存在したる緊密にして最も友諠的関係が本条約により一層明白に且つ鞏固にせられたることは満伊両国のため寔に慶賀に堪えざるところなり

外相官邸で晩餐会 宇垣外相満悦

此の日宇垣外相は就任以来最初の外交協定に自分の手でサインをするというので非常な御機嫌だ
 早くから外相官邸の奥の一室で堀内次官、三谷条約、松島通商、井上欧亜各局長とニコニコ談笑しながら待つ程なく三時二十分、満州国側代表の阮駐日大使原及び葉両参事官とイタリー側代表コンチ経済使節団長、マットーリ事務総長、アンジェローネ商務参事官以下各使節がアウリチ駐日大使及びスカマッカ参事官付添いで来着
何れも喜色満面この待望の日・満・伊経済枢軸の確立を祝って感激の握手を交す、正三時半晴れの調印式場は官邸階下右側の美しい緑の芝生に臨んだ広間、中央緑色のラシヤで掩われた長方形の大テーブルには正面に宇垣外相、向って右側に阮満州国大使、左側にコンチ団長とアウリチ伊国大使が居並び真新しいお揃いのインクスタンドからペンを取上げそれぞれ協定文書にサインを終えた
 次いで階上広間で一同日満伊三国の親善のためシャンパンの乾盃をした、この歴史的光栄は本社その他のトーキーに撮影されて広く世界に紹介されるが同夜七時半宇垣外相は協定成立を祝って外相官邸に満、伊両国代表一問を招待して晩餐会を開き輝かしき日、満、伊三国の前途を祝福した

ム首相へ打電 感激のコンチ氏

訪日イタリー経済使節団長エトレ・コンチ氏は五日ローマのムソリニ宰相に宛
 本日日・満・伊通商協定が正式調印される事になりました、此の喜びを遥か東京よりローマに送り敬意を表します
感激の報告を打電した、尚コンチ団長は次の如く語った
 去る五月来朝以来日本の朝野の心をこめた歓迎に深く感激しています、入京以来直ちに日満両当局者と通商協定の交渉協議を開始しましたが、本日茲に目出度く日・満・伊三国最善の経済提携の磁石が打立てられる事になりました、この協定こそ三国の経済的特長を実際的に結合し輝しき三国の繁栄を齎すものです
一行は六日夜離京帰国する


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