新聞記事文庫 移民および植民(23-062)
中外商業新報 1936.7.8(昭和11)


南進国策の一機関

南洋拓殖株式会社創立


南進国策の一機関として設立される半官半民の南洋拓殖株式会社創立に関する勅令たる南洋拓殖株式会社令要綱並に同会社に対する政府の現物出資のためにする南洋群島官有財産評価委員会官制要綱は七日の閣議に於て決定したがその内容左の如し、なお同会社は直ちに会社創立準備に着手し明年一月一日業務開始の予定である

南洋拓殖株式会社令要綱

(一)総則

一、南洋拓殖株式会社は拓殖事業の経営及び拓殖資金の供給を目的とする株式会社としその本店を南洋群島に置く
一、南洋拓殖株式会社の資本は二千万円とす、但し拓務大臣の認可を受け之を増加することを得
一、政府は南洋庁長官の管理に属する金銭以外の財産を以て南洋拓殖株式会社に対する出資の目的と為すことを得

政府前項の規定に依り出資を為さんとするときは出資の目的たる財産の価格につき南洋群島官有財産評価委員会に諮問すべし南洋群島官有財産評価委員会に関する規定は別に之を定む

一、南洋拓殖株式会社は株金全額払込前と雖もその資本を増加することを得

(二)役員

一、南洋拓殖株式会社に社長一人、理事三人以上及び監事二人以上を置く
一、社長は南洋拓殖株式会社を代表しその業務を総理す

社長事故あるときは定款の定むる所に従い理事中一人その職務を代理し社長欠員のときはその職務を行う
理事は社長を輔佐し定款の定むる所に従い南洋拓殖株式会社の業務を分掌し又は之に参与す
監事は南洋拓殖株式会社の業務を監査す

一、社長は拓務大臣の奏請に依り内閣において之を命じその任期を五年とす

理事は株主総会において選挙したる二倍の候補者中より拓務大臣之を命じその任期を四年とす監事は株主総会において之を選任しその任期を二年とす

(三)営業

一、南洋拓殖株式会社は左の事業を営むものとす
1、拓殖の為め必要なる農業、水産業、鉱業及び海運業
2、拓殖の為め必要なる移民事業
3、拓殖の為め必要なる土地(借地権其の他の土地に関する権利を含む)の取得、経営及処分
4、委託に依る土地の経営及び管理
5、農業者、漁業者若くは移民に対し拓殖上必要なる物品の供給又は其の生産品の買取加工若くは販売
6、拓殖の為め必要なる資金の供給
7、前各号の事業に附帯する業務
8、前各号の外拓殖のため必要なる事業
一、南洋拓殖株式会社は定款の定むる所に従い定期預り金を為すこりを得
一、南洋拓殖株式会社は拓務大臣の認可を受け銀行の業務を代理することを得

(四)南洋拓殖債券

一、南洋拓殖株式会社は払込みたる株金額の三倍を限り南洋拓殖債券を発行することを得
南洋拓の殖債券を発行する場合に於ては南洋群島裁判事務取扱令に於て依ることを定めたる商法第二百九条に定むる決議に依ることを要せる
一、南洋拓殖債券の所有者は南洋拓殖株式会社の財産につき他の債権者に先だちて自己の債権の弁済を受くる権利を有す

(五)利益金の処分

一、南洋拓殖株式会社は毎営業年度に準備金として資本の欠損を補う為め利益金額の百分の八以上を積立て且利益配当の平均を得しむる為め利益金額の百分の二以上を積立つべし
一、南洋拓殖株式会社は毎営業年度における配当し得べき利益金額が政府以外の者の所有する株式の払込たる株金額に対し年六分の割合に達する迄政府の所有する株式に対し利益の配当を為すことを要せす

(六)政府の監督

一、拓務大臣は南洋拓殖株式会社の業務を監督す
一、拓務大臣は南洋拓殖株式会社監理官を置き南洋拓殖株式会社の業務を監視せしむ
一、拓務大臣は本令中その職務に属する事項の一部を南洋庁長官に委任することを得
一、政府は設立委員を命じ南洋拓殖株式会社の設立に関する一切の事務を処理せしむ
一、設立委員は定款を作成し拓務大臣の認可を受くべし
一、前条の認可ありたるときは設立委員は株式総数より政府に割当つべき株式を控除したる残余の株式につき株主を募集すべし
一、設立委員は株主の募集を終りたるときは株式申込証を拓務大臣に提出し其検査を受くべし設立委員は前項の検査を受けたる後遅滞なく各株式につき第一回の払込を為されめその払込ありたるときは遅滞なく創立総会を招集すべし
一、創立総会終結したるときは設立委員はその事務を南洋拓殖株式会社長に引渡すべし

南洋群島官有財産評価委員会官制要綱

一、南洋群島官有財産評価委員会は拓務大臣の監督に属し南洋拓殖株式会社令第三条の規定に依り其の権限に属せしめたる事項を調査審議す
一、委員会は会長一人及委員二十人以内を以て之を組織す
一、会長は拓務大臣を以て之に充て会務を総理するものとす
委員は拓務大臣の奏請に依り内閣に於て之を命す
一、委員会に幹事及び書記を置く


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