新聞記事文庫 外交(154-136)
大阪毎日新聞 1940.9.28(昭和15)


日独伊三国同盟成立

指導地位を互に承認 世界新秩序へ邁進

きのうベルリンで調印


挙国待望の外交転換は二十七日の日独伊三国同盟の結成によってついに断行された、欧州と東亜に「新秩序建設のための戦争」を遂行する日独伊三国はそれぞれの指導者的地位を承認し相携えて世界新秩序建設と世界平和の具現に協力することとなった、この日盟邦の首都ベルリンの総統官邸では午後一時十五分(日本時間午後八時十五分)わが来栖駐独大使、リッベントロップ独外相、チアノ伊外相の間に条約成文に歴史的調印が行われた、終って国際電話を通じ盟邦の三外相は交歓を遂げるなど友好親善の第一歩を踏み出した、しかして同盟結成を機とし帝国が当面する国際重大時局に対する深き恩召から特に優渥なる詔書を渙発あらせられ、これと同時に政府は新同盟条約要旨、近衛首相告諭、松岡外相謹話、河田蔵相相談などを発表して新国際関係の重要性とこれに対処する国民の心構えを要請した
ベルリン本社特電【二十七日発】至急報 日独伊三国条約は二十七日午後一時十五分(日本時間二十七日午後八時十五分)ベルリンの総統官邸引見室で調印された

混合委員会開催 政治、経済、軍事的に協力 条約要旨

外務省発表(二十七日午後九時十五分)
一、日独伊三国間に本二十七日、ベルリンにおいて左記要旨の三国条約締結せられたり
一、日本国、ドイツ国およびイタリー国間三国条約要旨 対日本帝国政府、ドイツ国政府およびイタリー国政府は万邦をして各その所を得しむるをもって恒久平和の先決要件なりと認めたるにより、大東亜および欧州の地域において各その地域における当該民族の共存共栄の実を挙ぐるに足るべき新秩序を建設し、かつこれを維持せんことを根本義となし、右地域においてこの趣旨によれる努力につき相互に提携しかつ協力することに決意せり、しかして三国政府はさらに世界至るところにおいて同様の努力をなさんとする諸国に対し協力を吝まざるものにして、かくして世界平和に対する三国終局の抱負を実現せんことを欲す、よって日本国政府、ドイツ国政府およびイタリー国政府は左の通り協定せり
第一条 日本国はドイツ国およびイタリー国の欧州における新秩序建設に関し指導的地位を認めかつこれを尊重す
第二条 ドイツ国およびイタリー国は日本国の大東亜における新秩序建設に関し指導的地位を認めかつこれを尊重す
第三条 日本国、ドイツ国及びイタリー国は前記の方針に基く努力につき相互に協力すべきことを約す、さらに三締約国中いずれかの一国が現に欧州戦争または日支紛争に参入しおらざる一国によって攻撃せられたる時は三国はあらゆる政治的、経済的および軍事的方法により、相互に援助すべきことを約す
第四条 本条約実施のため日本国政府、ドイツ国政府およびイタリー国政府により任命せらるべき委員より成る混合専門委員会は遅滞なく開催せらるべきものとす
第五条 日本国、ドイツ国およびイタリー国は前記諸条項が三締約国の各とソヴィエト連邦との間に現存する政治的状態に何らの影響をもおよぼさざるものなることを確認す
第六条 本条約は署名と同時に実施せらるべし、実施の日より十年間有効とす
右期間満了前適当なる時期において締約国中の一国の要求に基き締約国は本条約の更新に関し協議すべし

内閣告諭

日独伊三国条約の締結にあたり畏くも大詔を渙発せられ帝国の向うところを明かにし、国民の進むべき途を示させ給えり
聖慮宏遠洵に恐懼感激に堪えざるなり
恭しく惟うに世界の平和を保持し大東亜の安定を確立するはわが肇国の精神に淵源し、正に不動の国是たり、昨秋欧州戦争の発生を見、世界の騒乱ますます拡大し底止するところを知らず、ここにおいてか速かに禍乱を戡定し平和克服の方途を講ずるは現下喫繋の要務たり、適々独伊両国は帝国と志向を同じうするものあり、因りて帝国はこれと相提携しそれぞれ大東亜および欧州の地域において新秩序を建設し進んで世界平和の克復に協力せんことを期し今般三国間に条約の締結を見るに至れり
いまや帝国はいよいよ決意を新にして大東亜の新秩序建設に邁進するの秋なり、しかれども帝国の所信を貫徹するは前途なお遼遠にして幾多の障碍に遭遇することあるべきを覚悟せざるべからず、全国民は謹んで聖旨を奉体し非常時局の克服のため益々国体の観念を明徴にし協心戮力、如何なる難関をも突破しもって聖慮を安んじ奉らんことを期せざるべからず、これ本大臣の全国民に望むところなり
昭和十五年九月二十七日 内閣総理大臣公爵 近衛 文麿


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