兵庫県南部地震記録紙 1995年1月17日午前5時46分 M7.2−この経験を今後に生かすために−
社団法人兵庫県放射線技師会 平成7年1月 P51〜P68


2.一般撮影関係

【一般撮影室の状況について】

2-1.一般撮影は何階にありますか?表2-1
2-2.今回の地震で一般撮影は使用できましたか?表2-2 図2-2
2-3.被害のあった撮影室の被害状況はどの程度ですか?表2-3


【一般撮影室の状況】

 一般撮影室の設置階数は 212施設(81%)が1階に設置され、30施設(11%)が2階で残りがその他の階に設置されている。今回の使用状況調査では、震度4以下には使用が不可能な施設はなく震度が増すに従って多くなっている。しかし全体的に見ると撮影施設の使用は87%が使用可能という結果で、概ね撮影室としては使用できた施設が多いといえる。使用不可能・一部使用可能・その他を何らかの支障が生じた施設と考え合わせると、震度4以下では 0%、震度5では 4%、震度6以上では24%が支障があった。
 被害状況は壁のヒビ割れが最も多く、震度4以下でも7施設に発生している。扉の歪・その他・床のヒビ割れ・浸水あり・壁が崩れた・天井の一部落下の順で被害の多さが報告されている。
 またその他では施設全体の倒壊も報告されており、地震の大きさを表している。発生頻度の比率は震度増に伴い倍以上に膨れ上がっている。


【撮影装置について】

[X線発生装置について]

2-4.X線発生装置の設置方法と地震による装置の移動の有無について
表2-4-A
  表2-4-B   表2-4-C   表2-4-D
図2-4-A-1   図2-4-A-2   図2-4-A-3   図2-4-A-4
2-5.X線発生装置の設置場所は?表2-5
2-6.X線発生装置関係についての被害状況はどうでしたか?表2-6 図2-6
2-7.被害にあった装置について具体的な破損及び故障内容を教えてください

2-7 具体的な破損状況及び故障内容       
◎トランスの移動による接続ケーブル断線(4)  
◎トランス内コイルの断線           
◎トランスより絶縁オイル漏れ(5)
◎断層撮影装置のオイル漏れ(2)
◎撮影台動作不良

2-8.X線制御装置の設置方法と地震による装置の移動の有無について
表2-8-A
  表2-8-B   表2-8-C   表2-8-D
図2-8-A-1   図2-8-A-2   図2-8-A-3   図2-8-A-4
2-9.X線制御装置についての被害状況
2-10.被害にあった装置について具体的な破損及び故障内容を教えてください

2-10 具体的な破損状況及び故障内容
◎配線、ケーブルの断線(3)
◎タイマ制御の異常(2)
◎基板や操作レバー、スイッチの破損や歪(4)
◎建物崩壊のため不明

2-11.一般撮影におけるX線管支持器の種類別のX線管の数を教えてください
2-12.X線管の被害状況について
2-13.被害のあったX線管について具体的な破損及び故障内容を教えて下さい

2-13 具体的な破損状況及び故障内容
◎管球のセンターズレ(2)
◎管球やカバーの破損(2)
◎可動絞り破損(2)
◎陽極回転音が大きく、不連続。回転停止後の滑走時間が短縮

2-14.X線管の支持器の被害状況表2-14 図2-14
2-15.具体的な破損及び故障内容

2-15 具体的な破損状況及び故障内容
◎レール型装置の破損:レール型支柱よりの滑落(3) 支柱の歪、曲がり(6)
◎アームの曲がり(2)
◎天井レール等のストッパ異常(2)
◎断層装置の裁断面センター固定具の破損
◎X線管懸垂部ワイヤ用内部リール破損
◎安全装置が働き上下動しなくなる
◎立位ブッキーとX線管との同期が合わなくなる


撮影装置への影響】

[X線発生装置への影響]
 X線発生装置の固定ありと固定なしは1:1.5の比率で固定なしが多い。設置方法と移動・転倒については震度の増大に伴い移動・転倒の比率が上る。発生装置の移動では、固定あり102台中18台(18%)、固定なし169台中53台(31%)が移動をしている。固定ありの装置が移動の比率は少ない。設置の方法は床置き型が大多数を占め、他の設置方法との母数の差が大きいために単純な比率比較は難しい。移動した発生装置を移動台数/設置数で表すと、床置き型固定ありは16/55(29%)、固定なし48/137(35%)。台置き型固定ありは1/6(17%)、固定なし2/8(25%)。壁掛け型固定あり0/5(0%)、固定なし0/3(0%)。天井吊り型固定あり1/35(3%)、固定なし3/21(14%)。
 同様に転倒についても転倒台数/設置台数と表すと、固定あり6/102(6%)、固定なし13/169(9%)で、固定の有無による差は僅かであった。設置の方法を置き型と掛け・吊り型をまとめて考えると、結果では掛け・吊り型が移動・転倒が少ない。
 移動距離については床置き型は震度4以下でも固定がないと最大20cmの移動が報告されている。震度6以上になると固定あり・固定なしともに最大100cmの移動がみられる。
 被害状況は、震度6以上で修理不可が 3台、それ以下の震度では修理可能で復旧したものと思われる。被害状況全体として、異常なしの比率は88%である。オイル漏れと修理可能を含めると99%が再開できたと予測され、発生装置は今災害に比較的損傷が少ないといえる。
 具体的な破損状況は転倒・移動の報告とそれによる絶縁オイル漏れと接続ケーブルの断線が多い。またトランス内のコイルの断線によるトランスの交換が報告されていて、修理不可の例である。断層撮影装置の破損の報告も3例含まれている。

[X線制御装置への影響]
 X線制御装置の設置方法と被害状況についても発生装置と同様の傾向である。固定ありと固定なしの設置比率は1:3で固定なしの装置の方が多い。制御装置の移動について固定あり57台中18台(32%)、固定なし176台中71台(40%)が移動している。僅かな差ではあるが、固定がある方が移動は少ない。移動した制御装置を設置台数の比で表すと、床置き型固定あり16/44(36%)固定なし62/157(39%)、台置き型固定あり1/3(33%)固定なし6/10(60%)、壁掛け型固定あり0/5(0%)固定なし1/5(20%)、天井吊り固定あり1/5(20%)固定なし2/4(50%)となる。これより設置方法を評価することは困難である。
 移動距離は震度6以上で最大100cmの報告がある。震度5でも100cmの移動距離、震度4以下でも10cm移動している。床置き型が他の設置方法より移動距離が長い。震度別移動距離それぞれの最大は固定されていない制御装置の報告である。
 被害状況は震度4以下でも4%に修理可能な破損および、修理不可能な破損が生じている。震度6以上では15%が破損を生じている。全体よりとらえると異常なしの比率は91%で比較的少ない破損傾向となる。
 X線管球の被害状況は震度6以上で報告がなされている。被害状況は修理不可能、修理可能を合わせても15台(5%)であり、比較的少ない。
 X線支持器の被害状況は震度5以上で被害の報告があり、37台(12%)が破損して修理不可が15台にみられた。機構的に震動には負荷が一番かかる場所であるためと予測できる。


[ブッキーテーブルについて]

2-16.ブッキーテーブルの固定の有無と地震による装置の移動について表2-16
2-17.ブッキーテーブルの破損状況表2-17 図2-17
2-18.具体的な破損及び故障内容

2-18 具体的な破損状況及び故障内容       
◎木板に裂傷認める               
◎パネル固定ネジや移動リスの脱落       
◎上下動、シャフトのきしみ音
◎配線の断線(2)
◎外枠の変形、ズレ、歪(2)


[ブッキーテーブルへの影響]
 ブッキーテーブルの機構と移動については、オフロック機構は震度4以下 2台震度5で 2台、震度6以上になると8台あり転倒も1台、どの震度でも移動している。オフロック機構以外では震度6以上で移動 2台あり、他の震度では移動・転倒ともに報告されていない。移動距離は震度6以上で 100cmとなり、それ以下の震度より飛躍的に長くなる傾向にあった。
 破損状況は震度5以下にはないが、震度6以上において 5台(7%)で比較的軽微である。


[リーダー撮影台について]

2-19.リーダー台の固定の有無と地震による装置の移動について
表2-19
 図2-19-1   図2-19-2   図2-19-3   図2-19-4
2-20.リーダー台の破損状況表2-20 図2-20
2-21.具体的な破損及び故障内容

2-21具体的な破損状況及び故障内容
◎リーダー破損(2)
◎カセッテトレイ変形及び破損(3)
◎固定ボルトの緩みや外れ(2)


[リーダー台への影響]
 リーダー台の固定ありと固定なしは約同数である。固定なしの方が固定ありの約 3倍以上の台数に移動がある。転倒については固定ありと固定なしとも同様の比率で、移動とは差が大きい、震度別傾向は震度が上がるに従い台数が増している。
 破損状況は修理可能・修理不可を合わせても12台(5%)で、比較的軽微である。


[移動型X線撮影装置について]

2-22.移動型X線撮影装置は全部で何台ありますか
2-23.移動型X線撮影装置の破損状況表2-23 図2-23
2-24.具体的な破損及び故障内容

2-24 具体的な破損状況及び故障内容       
◎横転、管球よりオイル漏れ           
◎落下物により走行スイッチ破損        
◎電源 BOX部止めネジ脱落のため落下
◎充電メータの針正常値表示しない
◎焼失

2-25.移動型X線撮影装置の設置場所


[移動型X線撮影装置への影響]
 今震災時、充電型の撮影装置として停電の中でも使用でき、活躍したと報告されている。機器自体の被害は少ないが、転倒や落下物により破損した報告がある。被害状況は 6台のみで影響は少ない。


[フィルムチェンジャ関係(自現機との接続部を含む)]

2-26.フィルムチェンジャの固定の有無と地震による装置の移動について表2-26
2-27.フィルムチェンジャの破損状況表2-27 図2-27
2-28.具体的な破損及び故障内容

2-28 具体的な破損状況及び故障内容       
◎アジャスタ部の破損(2)
◎マガジン脱落、使用不能(2)
◎フィルムがカブル(2)

2-29.設置方法


[フィルムチェンジャ関係への影響]
 フィルムチェンジャの固定ありと固定なし設置比率は1:1.1でほぼ同等である。移動については固定なしが固定あるものより多いが、転倒については固定ありの移動した全てが転倒している。震度別には6以上で修理可能 5台(8%)のみ破損が報告されている。


[ホトタイマ関係]

2-30.破損状況
2-31.具体的な破損及び故障内容

[CR関連装置]

2-32.CR関連装置の破損状況表2-32
2-33.破損状況表2-33 図2-33
2-34.具体的な破損及び故障内容

2-34 具体的な破損状況及び故障内容
◎自動現像部との分離やズレ(4)
◎モニタ外部、パネル破損(2)
◎CR読み取り機全壊
◎読み取りエラー


「CR関連装置への影響]
 CR関連装置の固定あり、固定なしは1:3で固定なしが多い。移動ありはどの震度でも発生している。固定あり 3台(60%)、固定なし12台(75%)が移動をしている。転倒は震度5以上で起きて固定あり2台(40%)、固定なし 4台(25%)で、転倒と移動が他の装置と逆転している。移動距離の最大値はすべて固定されてない装置。破損状況は震度6以上で、修理可能な破損と修理不可な破損を合わせて 4台(20%)の被害が出た。


曲がった管球懸垂器(神戸市立中央市民病院)

【復旧が遅れた理由】

2-35.一般撮影装置で被害を受けた装置が復旧(または復旧見込み)までに要した日数及び復旧が遅れた理由

2-35 具体的な復旧の遅れた原因
◎メー力対応の遅れ(6)
◎メーカへ連絡とれず(5)
◎部品調達が遅れる(5)
◎交通事情が悪い(3)
◎停電・電気不通(4)
◎予算の関係(2)
◎不良状態が続かない
◎仕事どころではなかった
◎再調整


【復旧が遅れた理由】

 被害を受けた装置が復旧に要した日数の最小は1日から最大は予算の関係で4月現在も復旧していない。その他の復旧が遅れた理由は、メーカとの連絡が取れないと述べられているのが多い。また交通事情が悪く、部品や人の手配が困難であったため対応の遅れを訴えるケースも多い。広域的で同一時の被害が多数発生しているため、昼夜を通して対応にあたったとしても、遅れのでることは仕方がないことと考えられる。


【地震対策について】

2-36.一般撮影関係について何らかの地震対策をしていましたか?
2-37.一般撮影関係における地震対策を検討する場合どのような対策をお考えになりますか?


【まとめ・地震対策】

 震度5までは一般撮影装置の被害も比較的少ない。震度6以上になると被害状況は大きくなる。X線発生装置の移動距離では、固定の有無は関係なく 100cm動いてこの震災の凄さがでている。各震度別の移動距離の最大値はすべて固定なしの装置によるものである。装置の形状や重量にも関係するが、固定してない装置の方が移動距離も長いため、周辺の装置設備にも被害が及ぶと考えれる。装置全体でも固定ない方の比率が高いため、今後の対策として装置の固定を記述している施設が多い。
 破損状況と固定の有無については、震度6以上では建物の損傷が撮影装置や施設に影響したと考えられる。天井走行やレール軌道が歪んだり変形した報告も、アンカや固定具が緩んだり、外れたりの報告も、装置の置かれている環境による。装置の固定をする場合、固定具とともに建物強度についても考慮すべきだろう。震度6以上でも固定が有効となるには、装置の形状や設置場所について規定が必要であろう。またメーカには設置場所が装置の固定に耐えられるか、設置可能かを考える場合に、今後地震のことも念頭に入れて対策を行っていけば被害も少なくできるのでは?
 その他停電でも検査できるための非常用電源の確保と、水回りのチェックをして非常時に稼動できる体制を備えておくこと。検査室内に不必要な道具や物品は置かない、転倒しそうな装置には転倒防止のチェーンを架設する等である。
 トランスが100cm移動したり天井走行の支柱が落下する報告があるので、被害を回避できる場所の確保。また検査室内にトランスを設置している施設は、できれば室外に置くことで患者の安全性は高くなる。

【検査中に地震が発生したら】

 今回のような大震災が起きた場合、一般撮影室において、検査や撮影部位は多種にわたり、その時の患者体位や検査手技とX線管や管球支持器の方向により、被害が異なってくるであろう。 
 例えば患者が立位で検査を受けているとしたら、ゆれにより立っていることは不可能で、ゆれが治まるまでは、腰を屈め何かに捕まって体を保持しようとすることが考えられる。まずは身近な立位リーダに捕まるケースが多いだろう。しかしリーダが転倒すると、患者は体の保持が困難になり、共に倒れたり、下敷になったりして被害がでるだろう。
 また、ブッキーテーブルの上で臥位になって検査を受けているとしたら、テーブルが可動状態であると、ゆれにより患者がテーブルより投げ出され、打ちどころによれば重篤な状態になるであろう。また患者の上方に管球があるため、停電が起きた時、オフロック機構以外ではその重量によって落下は避けられない。撮影室の照明も切れるため、被害を一層大きくする。
 管球位置や管球支持体の形状により、被害も変わるだろう。懸架されている処の強度が、管球及び支持体のゆれによるモーメントより弱いと、破損して落下や転倒が起きると予想される。患者が動ける状態であっても、体を避難する空間があれば良いが、瞬時に判断することは困難であり被害は避けられないだろう。
 撮影室には種々の撮影補助具が置いてある。それらの移動・転倒により患者に危害が加わる可能性があり、できれば固定されたケースに保管を勧める。またX線発生装置の設置場所が撮影室内にあると、重量もさることながら移動距離が 100cmも報告されていて、移動の状態にもよるが患者にとって驚異となる。この大震災を経験して、全く被害がでないことは想定しにくい。患者に被害を及ばないように、設備や装置の設置を見直し、固定や転倒防止の施策を講じねばならない。撮影室内には、不必要な物を置かないこと。必要な撮影補助具を置くとするならば転倒や移動しないよう固定するか、固定の効いたケースに収納をする等、被害を最小にする努力をしなければなるまい。
 また患者の身の安全を確保するために、装置からの影響を受けずに逃げ込めるスペースを確保することにより、装置や管球支持器から直接の接触を回避させることが必要だろう。ゆえに撮影室全体のレイアウトも被害を未然に防ぐためには、今回の教訓を生かし今後考えていくことが肝要だろう。


(c)1996社団法人兵庫県放射線技師会(デジタル化:神戸大学附属図書館)