兵庫県南部地震記録紙 1995年1月17日午前5時46分 M7.2−この経験を今後に生かすために−
社団法人兵庫県放射線技師会 平成7年1月 P69〜P82


3.X線TV関係

【撮影室の状況について】

3-1.X線TV撮影室は何階ですか?
3-2.X線TV撮影室は使えましたか?表3-2 図3-2
3-3.X線TV撮影室の被害程度は?表3-3


【X線TV撮影室の状況】

 アンケートによると、X線TV撮影室の設置場所は、1階が77%とその多くを占めた。
 このような状況下において、今回の震災による影響は、修理不可能な施設が震度6以上で23%、震度5で4%、震度4以下は1%と震度別にみると6以上で多大な被害が発生した。
 また、その被害内容は、壁のヒビ割れが過半数を占め最も多く、その他扉の歪・床のヒビ割れ・浸水・天井の一部落下・壁が崩れる等で、漏電に伴う火災やX線の漏洩等が危倶される。
 以下、X線TV撮影装置を構成するX線発生器・X線管・操作卓・撮影台・モニタ関連・TV映像系・フィルム搬送系の個々について検討した。


【撮影装置について】

[X線発生器]

3-4.X線発生器の固定の有無と地震による装置移動について
表3-4 図3-4-1   図3-4-2   図3-4-3   図3-4-4
3-5.X線発生器破損状況表3-5 図3-5
3-6.設置方法
3-7.具体的な破損及び故障内容

3-7 具体的な破損及び故障内容
◎ジョイントボックス転倒による一部破損
◎移動による一部断線及び、マイクロスイッチ等の破損(2)
◎転倒によるフレームの変形、スタータの故障(使用不可能)
◎転倒による故障


【撮影装置への影響】

[X線発生器への影響]
 X線発生器の設置方法は、床置き方式が最も多く(97%)他には台置き・天井吊り・壁掛け方式であった。
 発生器の固定は、全体の27%と予想を下まわる結果となり、発生器の移動転倒は、固定の有無に限らず震度6以上、震度5、震度4以下の全てにおいて生じたが、転倒に関し固定なしは、少ない傾向を示した。
 これは、固定しないことで負荷が一点に集中することなく分散し、転倒が少ない結果になったと想像する。
 破損状況は、震度5以下においてほとんど影響なく、震度6以上では被害も大きく発生した。


[X線管]

3-8.破損状況表3-8 図3-8
3-9.具体的な破損及び故障内容


[X線管への影響]
 X線管の破損は、震度5以上で3%とわずかに生じたが全体的には少数であった。
 X線管は、ほとんどの装置で撮影台と一体となっているため、転倒や落下がないかぎり影響は、少ないと考える。

[TV操作卓]

3-10.TV操作卓の固定の有無と地震による装置の移動について表3-10
3-11.破損状況表3-11 図3-11
3-12.具体的な破損及び故障内容

3-12 具体的破損及び故障内容
◎移動による断線(2)
◎操作レバーの破損
◎物品の落下によるスイッチの破損
◎建物崩壊による破損


[操作卓への影響]
 操作卓の固定は、全体の20%を占める結果となった。
 固定されていたにもかかわらず、全ての震度において移動転倒が認められ、さらに固定なしでは、ありと比較すると、移動の発生が増したが、転倒は震度6以上でわずかに生じたのみであった。
 これも、X線発生器同様固定しないことにより負荷が一点に集中しなかったため、転倒が少ない結果になったと想像する。
 全体的な破損状況は、震度4以下では影響なく震度5以上でわずかで震度6以上では致命的な破損も生じた。

[TV撮影台]

3-13.TV撮影台の固定の有無と地震による装置の移動について
表3-13
 図3-13-1   図3-13-2   図3-13-3   図3-13-4
3-14.破損状況表3-14 図3-14
3-15.具体的な破損及び故障内容

3-15 具体的破損及び故障内容
◎移動による断線(2)
◎移動による破損
◎物品の落下によるカバーの破損(2)
◎天板、起倒台駆動部の故障(4)
◎フレームの破損
◎アンカーボルトが抜けた


[撮影台への影響]
 撮影台は、全体の74%が固定されX線TV撮影装置の中で、ほとんどの施設で固定されていた。         
 撮影台の移動転倒は、全ての震度において固定の有用性が認められ、震度4以下において移動転倒が共に生じなかった。
 また、全体的な破損状況は、震度5以下では比較的影響が少なく、震度6以上では致命的破損がないものの頻度が増した。
 これは、震災発生時における撮影台の起倒角度が影響すると考えられ、未使用時には床と水平に保持することで破損の減少に有効だと考える。


[モニタ関連]

3-16.モニタ関連の固定の有無と地震による装置の移動について
表3-16 図3-16-1   図3-16-2   図3-16-3   図3-16-4
3-17.破損状況表3-17 図3-17
3-18.具体的な破損及び故障内容

3−18 具体的破損及び故障内容
◎天井吊りの1台がバランスを崩した
◎転倒による回路の一部破損
◎遮光板の破損
◎影像が映らない(3)


[モニタ関連への影響]
 モニタ関連は、全体の15%が固定され、想像を下まわった。
 モニタ関連の移動は、固定の有無に関わらず震度4以下を除き、ほぼ同様な発生頻度となった。これは、現状の固定方法に問題があると考える。
 固定なしの転倒は、震度4以下でわずかながら生じたが、震度5以上の発生頻度は少ない。
 これも、X線発生器等同様固定しないことにより負荷が一点に集中しなかったため、転倒が少ない結果になったと想像できる。
 破損は、全ての震度において致命傷はないものの震度5以上において生じた。
 モニタの設置場所は、視界が良くなお且つ術者の近辺に設置されるケースが多い。
 これは、患者および術者にとって、凶器になりかねないため、危倶するところである。


[TV映像系関連]

3-19.破損状況表3-19 図3-19
3-20.具体的な破損及び故障内容

3-20 具体的破損及び故障内容
◎光軸ズレ(5)                
◎ジョイントボックス転倒による撮像管の破損
◎破損による断線
◎カバーの破損


[TV映像系関連への影響]
 映像系の破損は、震度5以下ではほとんど認められないが、震度6以上ではその頻度も増し、致命的なものも生じた。
 これは、衝撃や接触による映像系の歪等によるものと考える。


[フィルム搬送系]

3-21.破損状況表3-21  図3-21
3-22.具体的な破損及び故障内容

3-22 具体的破損及び故障内容
◎カセッテトレーの破損            
◎フィルム停止位置のマイクロスイッチ不良   
◎増感紙の破損
◎ケーブルの断線
◎基板破損のため搬送エラー


[フィルム搬送系への影響]
 フィルム搬送系の破損は、震度5では影響なく、震度4以下および震度6以上で生じた。
 これは、震度の大きさよりも、透視台の転倒や他の機器との接触による、二次的損傷を受けたものと想像する。

【復旧が遅れた理由】

3-23.X線TV関係で被害を受けた装置が復旧(または復旧見込み)までに要した日数及び復旧が遅れた理由

3-23 復旧の遅れた理由
◎光軸ズレの原因の追求            
◎部品の取り寄せ(3)             
◎交通網の寸断(業者来院できない)(4)     
◎他機代替で対応のため
◎予算の制限
◎送電待ち(3)
◎診療再開に合わせたため


【X線TV撮影装置の地震対策】

3-24.X線TV関係について何らかの地震対策をしていましたか?
3-25.X線TV装置関係における地震対策を検討する場合どのような対策をお考えになりますか?

3−25 地震対策
◎撮影台のアンカによる固定(5)
◎トランス、モニタの固定(8)          
◎固定する(14)                 
◎電源部の固定                
◎重心の高い装置はボルト、チェーン等で固定(2)                    
◎従来にない新しい固定(2)          
◎装置類の固定はしない            
 コード類は余裕を持って長めにする      
 固定をする場合は、アンカボルトを通常の倍の太さと100cmの長さが必要
◎装置類の固定はしない ある程度可動することが必要 壁面固定は壁の状況により必ずしとも良いとは限らない
◎移動機器の未使用時の転倒を防ぐ処理
◎操作卓は固定しない
◎天井走行はオフロックにする
◎撮影台は業務終了後水平にて保管(4)
◎固定について検討中
◎キャスタ付きモニタは接触しない工夫が必要
◎この震災では対応不能


【まとめ】

 この大地震は、透視および撮影が可能な汎用性の高いX線TV撮影装置に影響をもたらし、本来震災時により必要とされる救急医療に支障をきたした。
 今回のアンケートより、装置の固定の有無は施設間で様々であり、現状の固定方法の有効性は、必ずしもあるとはいえない結果となった。
 これは、固定ありの施設においてアンカーボルトが抜けた等回答があり、現状の固定方法で破損が生じたケースも見受けられた。
 固定なしの機器は、移動することにより衝撃が緩和され破損が減少したケースが見受けられ機器の破損は少ないが、移動による患者や術者への二次的な傷害は、回避できない。
 X線TV撮影室には、周辺機器が多く置かれるため、機器設置場所の検討や、充分なスペースの確保も必要だと思う。
 また今後は、耐震性の向上を図ると共に免震できうる施設の建築や衝撃の緩和構造を有する固定方法の検討が課題になると考える。

【検査中に地震が発生したら】

 X線TV撮影室において、患者は臥位又は立位の姿勢で検査を受けている。
 この間に地震が発生したと仮定すれば、天板からの転落転倒等による負傷を受ける可能性があるため、日頃より患者用固定具補助具の利用また、転落することを想定し、天板周辺の床にクッション材を敷き詰めること等により危険をある程度避けることができる。
 また、X線TV撮影室は撮影台・発生器・モニタ・超音波装置・内視鏡等多くの機器が設置されている。
 このため、これら機器の移動、転倒、落下等による二次的な傷害も想像できる。
 よって、我々は、この様な事態を回避するため、機器の設置場所を考慮すると共に、震災を想定した術者の対応を日頃から身につけておく必要があると考える。


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