兵庫県南部地震記録紙 1995年1月17日午前5時46分 M7.2−この経験を今後に生かすために−
社団法人兵庫県放射線技師会 平成7年1月 P83〜P98


4.血管撮影関係

【血管撮影室の状況について】

4-1.血管撮影室は何階にありますか?表4-1
4-2.血管撮影室は使用できましたか?表4-2
4-3.被害のあった血管撮影室の程度は?表4-3


【血管撮影室の状況】

 血管撮影室は、62室(71%)が1階に設置され、14室(16%)が2階で、残りがその他の階に設置されていた。震度別の使用状況調査では、震度5以下で使用不可能な撮影室はなく、震度6以上では30室中 7室(23%)使用不可と回答している。
 部屋の被害状況としては、震度5以下で壁のヒビ、震度6以上になると、それに扉の歪みが加わってきている。


【撮影装置について】

[X線発生器]

4-4.X線発生器の固定の有無と地震による装置移動について
表4-4
 図4-4-1  図4-4-2
4-5.破損状況表4-5 図4-5
4-6.具体的な破損及び故障内容

4- 6 具体的な破損及び故障内容
◎コンソール横転
◎高速回転スター夕転倒によりX線発生不可
◎トランスの基盤等に浸水
◎地下のトランスの転倒
◎通電不可能で破損状況不明
◎施設内立入禁止のため詳細不明

4-7.設置方法


【撮影装置への影響】

 X線発生器においては、79台のうち21台(26%)が固定されていた。震度別の影響では、固定ありの震度5以下は全て移動なし、震度6以上で1台(10%)が移動しただけである。固定なしでは震度5で移動 4台(31%)、転倒1台(7.7%)、震度6以上で移動12台(52%)、転倒 4台(17%)であり、固定が有効であったことを顕著に示している。震度4以下では、固定なしでも移動していない。


[X線管]

4-8.破損状況表4-8
4-9.具体的な破損及び故障内容

4-9 具体的な破損及び故障内容
◎振動により破損
◎管球音が高くなった
◎スタンドに衝突し断線
◎ケーブル落下し断線
◎装置全体が破損し管球の破損状況不明
◎施設立入禁止のため詳細不明


[X線管への影響]
 X線管に関しては、震度5以下では被害はなく、震度6以上で損傷があり、修理可能 3本(10%)、修理不可1本(3.4%)であった。回転陽極の音が高くなった等、管球そのものの損傷に加え、ケーブルの断線が生じている。


[支持器]

4-10.破損状況表4-10-A   表4-10-B   表4-10-C
4-11.具体的な破損及び故障内容

4-11.具体的な破損及び故障内容

◎移動し過ぎロック部分を乗り越えた (5)
◎天井走行アームが基準点をずれ動作せず
◎天井走行ブレーキのネジとワッシャがはずれていた
◎シネカメラがUアームにぶつかりタンパ部より折れる
◎スタンドにぶつかりシャッター及び管球保持器が歪んだ
◎立入禁止につき破損状況不明


[支持器への影響]
 支持器に関しても、震度5以下では被害はなく、震度6以上では天井走行方式で4台(40%)、Cアームで3台(13%)が損傷していている。一方、Uアームには損傷がなく構造的にも堅牢な感があるが、設置方向にも影響されるし、サンプル数が少ないので、支持器の種類による評価は結論づけられない。しかし、天井走行・ レール軌道といった走行部分がウィークポイントであったことは十分推測され、今後、ストッパーの形状・オフロック機構であったかどうか等、十分な検証を必要すると思われる。


[ANGlO撮影寝台]

4-12.ANGlO撮影寝台の固定の有無と地震による装置の移動について表4-12
4-13.破損状況表4-13 図4-13
4-14.具体的な破損及び故障内容

4-14 具体的な破損及び故障内容
◎天井走行のCアーム落下により折れる
◎立入禁止につき破損状況不明


[ANGlO撮影寝台への影響]
 撮影寝台は、78台中65台(83%)が固定されていた。震度別の影響では、固定ありでは震度5以下は全て移動・転倒なし、震度6以上で 2台(6%)が移動、1台(3%)が転倒している。固定なしでは震度5で1台(25%)移動しただけであった。
 破損状況に関しては、震度5以下では被害はなく、震度6以上で損傷があり、修理可能3台(8%)、天井走行のCアーム落下により折れてしまい修理不可となった1台(3%)が報告されている。


[モニタ関連]

4-15.モニタは何台ありますか?表4-15
4-16.モニタ関連の固定の有無と地震による装置の移動について
表4-16
 図4-16-1   図4-16-2   図4-16-3   図4-16-4
4-17.破損状況表4-17 図4-17
4-18.具体的な破損及び故障内容

4-18 具体的な破損及び故障内容
◎キャスタ付き架台にのっていたモニタが転倒
◎落下したが意外と強度がある
◎天井吊りモニタ台(4台入り)の支柱が震動により伸びる(モニタには異常なし)
◎破損状況不明


[モニタへの影響]
 モニタは、75台中26台(35%)が固定されていた。破損状況は震度6以上で1台(3%)が修理可能な損傷があったのみであり、意外な結果であった。しかし、モニタは患者・スタッフ等の間近に設置されており、移動・落下により人に危害を与えうるので、材質・固定法の検討が急務である。


[TV映像系関連]

4-19.破損状況表4-19
4-20.具体的な破損及び故障内容

4-20 具体的な破損及び故障内容
◎IIおよび撮像管の故障
◎SIDを広げる場合スムーズに移動しない
◎通電不可で破損状況不明


[TV映像系関連への影響]
 TV映像系への影響は、震度4以下では被害はなかったが、震度5以上では3台(6%)に認められた。


[連続撮影装置系]

4-21.連続撮影装置の固定の有無と地震による装置の移動について
表4-21
 図4-21-1   図4-21-2   図4-21-3   図4-21-4
4-22.破損状況表4-22 図4-22
4-23.具体的な破損及び故障内容

4-23 具体的な破損及び故障内容
◎IC関係の不良
◎アンギオ装置(床移動式)は横転
◎上下動のギアシャフト破損
◎衝突による軸の歪み
◎AOTコントローラ転倒により、パンチ読み取り部破損

4-24.フィルム搬送形式
4-25.設置方式表4-25-A   表4-25-B   表4-25-C


[連続撮影装置関連系への影響]
 連続撮影装置においても、震度5以下では被害はなく、震度6以上で 3台(9%)が修理可能な損傷をうけている。


[レーザ・マルチカメラ関連]

4-26.レーザ・マルチカメラ関連の固定の有無と地震による装置の移動について表4-26
4-27.破損状況表4-27 図4-27
4-28.具体的な破損及び故障内容

4-28 具体的な破損及び故障内容
◎プリンタ・自現機の接合部に歪み もう1台は完全に分離し使用不可
◎自現機直結型で自現機脚が折れて、連結部がはずれた
◎固定用脚の屈曲
◎キャビネットに歪み発生
◎動作不良
◎給水管破損、液漏れ


[レーザーイメージャ・マルチカメラ関連への影響]
 イメージャ関連では、62台中14台(23%)が固定していたとあるが、震度6以上においても固定ありでは転倒していないという以外、結果から有意差をみいだせない。装置の水平アジャスタを固定と解釈したのか、あるいは、重量に対して非常に貧弱な固定であったと推測する。
 破損状況に関しては、震度5以下では被害はなく、震度6以上で 9台(33%)が修理可能なダメ一ジを受けており、内容として自動現像機との連結部の損傷が目立つ。強固な固定或いは、一体化が必要であろう。


[インジェクタ関連]

4-29.インジェクタ関連の固定の有無と地震による装置の移動について表4-29
4-30.破損状況表4-30  図4-30
4-31.具体的な破損及び故障内容

4-31 具体的な破損及び故障内容
◎本体内マザーボード破損
◎スイッチの破損、ボード交換
◎コントロールパネル破損


[インジェクタ関連への影響]
 インジェクタが100cm移動したとの回答があるが、患者さんに挿入されているカテーテルと接続されている時に地震が発生しておれば、患者に及ぼす危害は許し得ないものであったはずである。完璧な固定法を行う必要がある。


[DSA(CPU,OD等)関連]

4-32.DSA関連の固定の有無と地震による装置の移動について表4-32
4-33.破損状況表4-33  図4-33
4-34.具体的な破損及び故障内容

4-34 具体的な破損及び故障内容
◎DSAコンソール、CPU等に浸水
◎DSA装置系において、デジタルディスク操作卓の落下により、画像録画フォーマットエラーが発生(初期化により復旧)
◎マザーボードの接続ケーブルの破損により、ノイズがはいる
◎コントロールボックス内のケーブルのコネクタが抜け、システムが立ち上がらない
◎内部基板破損
◎装置に異常はなかったが、断水のためコンピュータ室の冷却ができなかったため、CPUの使用に時間制限があった


[DSA関連(CPU、OD等)への影響]
 DSA関連機器では、44台中13台(30%)が固定されていたが、震度6以上でも移動・転倒ともに認められておらず、固定法が十分なものであったと思われる。


【復旧が遅れた理由】

4-35.血管撮影関係で被害を受けた装置が復旧(または復旧見込み)までに要した日数及び復旧が遅れた理由

4-35 復旧が遅れた理由
◎停電
◎メーカーの点検待ち
◎交通事情(3)
◎技術者不足(2)
◎部品取り寄せ
◎引き取り修理
◎ノイズの原因不明
◎急を要しなかった(4)


【地震の対策について】

4-36.血管撮影関係について何らかの地震対策をしていましたか?
4-37.地震対策を検討する場合どのような対策をお考えお考えになりますか?

4-37 地震対策
◎機器の固定
◎操作卓バランスを良くする
◎移動式PUCKは安定状態で置く 
◎管球、IIの不使用時の位置検討
◎支柱の強化 
◎天井走行のものは壁面に鎖で固定した
◎装置全体が大きくなるため個々の安全確立を考えたい
◎装置に落下しないように高いところに物を置かない
◎周辺機器の固定(キャスタ付を除く)
◎収納棚は壁、床ともにビス止め
◎当院ではキャビネットは堅固定していたため転倒を免れた
◎天井走行レール及び取付対策としてネグロス工法を施工
◎制御装置及びモニタ置き台は別注の大型コントロール卓に組み込み
◎天井懸垂がオンロック機構であったため破損した。オフロック機構を装備する事。しかし、今回のような大きな地震の時にオフロックしていてそれに耐えれるだけの強度があったか疑問。
◎キャスタ付きであったため装置などに被害が少なかった。
◎PCテーブルはキャスタタイプにした。
◎中途半端な底面積と高さのあるもの(床置きPUCK、CPU等)は強震の時キャスタがついていたほうが転倒を免れ復旧も早いと思う。
◎自現機の液の混濁防止策。

落下した天井走行式Cアーム(神戸市立中央市民病院)


【まとめ】

[検査中に地震が発生したら]
 天井走行方式のCアームが落下し、装置の損傷のみならず撮影寝台まで折った施設がある。検査時間中に地震が発生していれば、患者の生命は失われていたはずである。
 血管撮影では、患者は自由がきかず、血管内こシース・カテーテルを挿入された状態にある。装置の落下がなくとも、床に置かれた周辺機器や麻酔器・遮蔽衝立てが移動してぶつかればどうであろうか。自由に動けるスタッフでも怪我は避けられないであろう。
 また、天井からは、無影灯・CRT・バイタルサインモニタ等、患者の近辺に懸垂されているものが多く、落下・ゆれの慣性力によって危害を与えないよう配慮すべきである。検査材料・薬品等も室内に保管されおり、ゆれによる落下や破損で患者・スタッフへの危害を拡大させないよう、キャビネットの扉・材質等も検討すべきである。
 機器の固定をしない方が被害が少なかったという意見もあるが、近傍に人がいることを考えると、固定が必要とされる。従来の固定は震度4以下では耐えられたと思われるが、今後更に強固な固定にすべきである。固定された時に問題となるのは、装置のゆれによる慣性力がどこに作用するかであり、大型で重量のある装置だけに、一点に集中し装置の破損につながりかねない。装置メーカーに一考願いたい。
 ゆれに続いて停電が起きるのを考慮すると、可動部分のオフロック化も必要であり、患者の緊急避難を考えるとオフロックの機械式解除方式も検討すべきである。更には、避難所となり得るようなリカバリー室を近くに設ける必要もある。
 より安全な医療機関を目指すためには、建物自体あるいは検査室自体を免震構造とし、その上に装置・機器の固定等を考えていくことが、理想であろう。


(c)1996社団法人兵庫県放射線技師会(デジタル化:神戸大学附属図書館)