兵庫県南部地震記録紙 1995年1月17日午前5時46分 M7.2−この経験を今後に生かすために−
社団法人兵庫県放射線技師会 平成7年1月 P99〜P111


5.CT検査関係

【CT検査室の状況について】

5-1.CT撮影室は何階にありますか?
5-2.今回の地震でCT撮影室は使用できましたか?表5-2 図5-2
5-3.CT室(スキャン室、制御室等)の被害状況はどの程度ですか?表5-3


【CT検査室の状況】

 CT検査室自体が使用不可となった施設は、震度6以上に2%あったのみである。一部使用不可となった施設は、震度6以上で22%、震度5で4%、震度4以下では、全施設使用可能であった。
 全体に見ても検査室自体が使用できなくなった施設は非常に少ないが、今後は震度6以上の地震が起こりうることも充分に考慮し、設計基準を見直す必要がある。
 部屋の被害状況としては、壁、床のヒビ割れが大部分である。


【撮影装置について】

5-4.X線発生コントローラの固定の有無と地震による装置の移動について
表5-4
 図5-4-1   図5-4-2   図5-4-3   図5-4-4
5-5.X線発生コントローラの破損状況について表5-5 図5-5
5-6.具体的な破損及び故障内容

5-6 具体的な破損及び故障内容
◎転倒(2)
◎基板のはずれ
◎オイル漏れ(発生器、トランス)(3)
◎コントローラ破損
◎電源投入不可
◎ケーブル断線
◎DAS電源投入不可

5-7.X線発生コントローラの設置方法について


【撮影装置(X線発生装置)への影響】

 発生装置の被害に関しては、震度6以上では、固定していたにもかかわらず移動、転倒した装置が各1台ずつある。 震度5以下では固定していた装置では移動、転倒ともに見られなかった。固定していなかった装置では、震度6以上で50%、震度5では26%、震度4以下でも13%の装置が移動している。また、震度6以上で17%の装置が転倒している。
 しかし、全体に破損の程度は小さく、震度6以上で19%の装置が修理可能な破損を受けたのみで、他は異常なしであった。具体的な破損内容としてはオイル漏れが一番多い。X線発生装置に関しては、固定により地震の被害を軽減することが可能であると考えられる。また、CTに限らず絶縁オイルを満たした部分のオイル漏れ対策をメーカーに再考していただきたい。


【CT操作卓】

5-8.CT操作卓の固定と地震による装置の移動について
表5-8 図5-8-1   図5-8-2
5-9.CT操作卓の破損状況について表5-9 図5-9
5-10.具体的な破損及び故障内容

5-10 具体的な破損及び故障内容
◎基板破損
◎監視モニタ落下、破損
◎CRT落下(2)
◎エラー表示の出現


【CT操作卓への影響】

 CT操作卓は、震度5以下の固定していた装置では、移動、転倒ともになかった。しかしながら、震度6以上で固定していたにもかかわらず移動した装置が1台報告されている。固定していない装置ではほとんどが移動し、震度6以上では2%の装置が転倒している。しかし、全体に破損の程度は軽く、一部に修理可能な損傷があったのみである。具体的な損傷内容としては、監視モニタやCRTの落下による破損が多く報告されている。
 操作卓のみならず、CRT、監視モニタ等の周辺機器を含めた固定が必要であるといえよう。


【寝台及び本体】

5-11.寝台及び本体の固定の有無と地震による装置の移動について
表5-11 図5-11-1 図5-11-2
5-12.寝台及び本体の破損状況表5-12 図5-12
5-13.具体的な破損及び故障内容

5-13 具体的な破損及び故障内容
◎チルトアングルのセンタのズレ(3)
◎検出器破損(2)
◎ライトロカライザのズレ
◎ガントリ角度表示に誤差
◎線状アーチファクト発生
◎リングアーチファクト発生
◎接地部分の金属板のひずみ
◎ガントリの移動(2)
◎ガントリのビスのはずれ
◎アンカボルトのゆるみ


【寝台及び本体への影響】

 CT本体に関しては、固定していたにも関わらず移動した装置があることに驚かされ、地震のゆれの激しさがうかがえる。また、震度6以上の装置に関しては、修理不可能な破損を受けた装置が11%もある。ガントリの固定が必要なことはいうまでもないが、このような重量のある機器は、動き出すとそのエネルギーは大きく、固定しているからと安心はできない。固定方法や、アンカボルトの太さ、長さや材質まで、もう一度見直す必要があるのではないだろうか。


【コンピュータ制御器】

5-14.コンピュータ制御器の固定の有無と地震による装置の移動について表5-14
5-15.コンピュータ制御器の破損状況表5-15 図5-15
5-16.具体的な破損及び故障内容

5-16 具体的な破損及び故障内容
◎コンピュータの転倒
◎コンピュータの移動(ガントリと干渉)
◎動作不良
◎オイル漏れ
◎ケーブル断線(イーサネットケーブル)
◎コンピュータエラー発生(空調不良による)
◎ランプの破損
◎画像の歪み
◎画像のちらつき


【コンピュータへの影響】

 固定していた装置は、ほとんど影響を受けず、移動、転倒ともになかった。固定なしの装置では移動が多く、震度6以上では14%に転倒も見られる。破損は、震度5以下では見られず、修理可能な損傷も10〜20%である。しかし、2%の施設では、修理不可能な損傷が報告されている。


【画像記録装置関係】

5-17.画像記録装置関連の固定の有無と地震による装置の移動について
表5-17
 図5-17-1   図5-17-2
5-18.画像記録装置関連の破損状況表5-18 図5-18
5-19.具体的な破損及び故障内容

5-19 具体的な破損及び故障内容
◎マルカメ転倒、故障
◎レーザーイメージャと自現機接続部の破損(2)
◎ODの読みとりエラー発生
◎OD破損
◎調整不良
◎装置裏蓋、外部パネル、ボディの破損(3)
◎自現機の給水、廃液、排水パイプの破断(3)
◎固定脚の屈曲
◎マルカメのボルト破損
◎オイル漏れ


【画像記録装置関連への影響】
 画像記録系では、震度6以上で固定していた装置でも移動の報告が2件見られる。固定なしの装置では震度4以下でも移動転倒が見られた。
 全体には、震度6以上で2%が修理不可能な損傷を受けている。具体的な破損内容では、イメージング装置と自動現像機の連結部分の破損が非常に多く、これは、固定あるいは一体構造化によって回避することができたと考えられる。


【施設,環境関係(空調,冷却器等)】

5-20.破損状況表5-20 図5-20
5-21.具体的な破損及び故障内容

5-21 具体的な破損及び故障内容
◎ライフラインの破断により空調、冷却不可
◎フィル夕取り付け金具破損
◎空調スイッチ破損
◎空調設備破損、冷却不能
◎空調パイプ破損による水漏れ
◎ボイラ室破損
◎空調室バルブ破損


【施設環境(空調、冷却器)への影響】

 震度5以下では影響はなかった。しかし、震度6以上では、7%が修理可能な破損、9%が修理不可能な損傷を受けている。
 また、アンケート項目にはあがっていないが、たとえ空調機器が破損せずとも、断水により冷却が不可能になった施設も多いと思われる。CT装置では、冷却を必要とする機種が多く、CT関連装置自体に具体的な破損がなくとも、冷却器が稼働しないために撮影できず、悔しい思いをした技師も多かったのではないだろうか。


【復旧が遅れた理由】

5-22.CT検査関係で被害を受けた装置が復旧(または復旧見込み)までに要した日数及び復旧が遅れた理由

5-22 復旧が遅れた理由
◎電話の不通
◎メー力の点検待ち(メーカ対応の遅れ)(6)
◎人手及び機材の遅れ
◎再調整の必要
◎水道の復旧の遅れ
◎交通事情の悪化(2)
◎部品交換の遅れ
◎主電源の不安定
◎室内の補修のため
◎電気の不通
◎給水パイプの断裂
◎ガス供給の不可


【地震対策について】

5-23.CT検査関係について何らかの地震対策をしていましたか?
5-24.CT検査関係における地震対策を検討する場合どのような対策をお考えになりますか?

5-24 地震対策
◎固定、転倒防止措置(ガントリ、コンピュータ、トランス、コントロールボックス、キャビネット、CRT、モニタ、周辺機器、等)
◎アンカボルト、チェーンによる固定
◎コンピュータ室を耐震床にする
◎振動、ノイズ防止用の合成樹脂をガントリの下部に設置する
◎キャスタ付きにする(操作卓、マルカメ)
◎自家発電によるCT、自現機等の稼働
◎モニタ画面の保護
◎故障個所の把握、メーカに対する早急な対応
◎室内にいらない物を置かない
◎現状のまま
◎移動型CT装置(CTバス)の導入


【まとめ】

 CTは、現在の救急医療では、もはや無くてはならない装置となっている。震災直後の救急の現場でCTが稼働しないという事態は絶対に避けなければならない。しかし、CTをはじめ現在の医療機器はその構造が複雑であり、破損した場合メー力のサービスマン無くして復旧は難しい。そのためにも、今後もし地震に遭遇した場合に、少しでも地震の影響を少なくし、破損を最小限にくい止めるよう対策を練ることが、私たちの義務であると思う。そのために今回の地震の教訓を生かしたい。
 今後の地震対策としては、「装置の固定」、と答えた施設が大部分であった。しかし、固定していたにも関わらず被害を受けた装置が少なからずあることから、具体的な固定の方法に関しても充分に考慮して決定する必要があると思われる。
 その構造上、ゆれに対して影響を受けやすい部分に関しては、構造の再考をメーカーにもお願いしたい。

【もし検査中に地震が発生したら】

 検査中の患者に関しては、本体や、寝台の移動によって被害を受けることは少ないと考えられる。それよりも寝台からの転落等が懸念され、大事故につながる可能性がある。撮影中の寝台は高さもあり、特に高齢者などは受傷する危険性が高い。衝撃吸収を考慮した床材なども考える必要がある。また、頭部撮影中であれば、ヘッドホルダーの形状によっては、頭部を固定されたまま体が転落することによってがく頸椎損傷等も予想される。
 部屋のレイアウトによっては、移動、転倒した機器によって負傷する可能性が高く、検査室内には極力ものを置かないようにするべきであり、装置関係はすべて固定を要する。キャスタ付きが装置の破損を少なくしたという報告もあるが、装置がダメージを受けずとも、もし付近に人がいた場合には充分凶器となることを考慮すべきであろう。
 CT操作室はとかく雑然としがちであり、装置関係のみならず、棚や監視モニタ等、落下、転倒によりスタッフが被害を受ける可能性のあるものは、充分な固定を要し、いらない物は置かないよう心がけるべきである。


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