兵庫県南部地震記録紙 1995年1月17日午前5時46分 M7.2−この経験を今後に生かすために−
社団法人兵庫県放射線技師会 平成7年1月 P112〜P121


6.MR検査関係

【MR室の状況について】

6-1.MR室は何階にありますか?
6-2.今回の地震でMR撮影室は使用できましたか?
6-3.MR施設(スキャン室、CPU室等)の被害状況はどの程度ですか?表6-3
6-4.液体ヘリウム、チッソ等の漏れはなかったですか?


【MR装置への影響】

 MR制御器、コンピュータ制御器、操作卓では固定していない施設が平均75%と多い。ガントリの固定は逆に、56%と半数以上の施設で固定を実施していた。
 固定の有無による差は、震度別被害状況で顕著に現れている。固定の少ない制御器、操作卓では、各震度にわたり移動が認められている。ガントリ本体では、震度6では固定の有無にかかわらず移動が認められた。


【撮影装置について(MR制御器)】

6-5.MR制御器の固定の有無と地震による装置の移動について
表6-5 図6-5-1   図6-5-2
6-6.MR制御器の破損状況表6-6 図6-6
6-7.具体的な破損及び故障内容

6-7 具体的な破損及び故障内容
◎本体の移動
◎電源BOXの移動
◎パワーアンプの破損
◎給水管破損による検査室の浸水


【MR制御器への影響】

 制御器はRFアンプ、RFユニット、傾斜磁場電源等で構成されスタンド型のユニット3〜5体で構成される。地震による影響はパワーユニットの移動、給水管損傷による浸水などがあった。冷凍器系の損傷の二次的な影響としてクライオスタット内の温度が上昇し、ヘリウムの蒸発量が増加する。6施設においてヘリウムの減少が確認されている。いずれの施設もクエンチ(超電動から常電動への移行)には至らなかった。


【コンピュータ制御器】

6-8.コンピュータ制御器の固定の有無と地震による装置の移動について
表6-8
 図6-8-1   図6-8-2

6-9.コンピュータ制御器の破損状況表6-9 図6-9
6-10.具体的な破損及び故障内容

6-10 具体的な破損及び故障内容
◎各ジョイントがはずれて使用不能
◎CPUの配線コネクタ部の破損


【コンピュータ制御器への影響】

 コンピュータ制御器は中央処理装置、高速演算装置、磁気ディスク装置、システムコントローラで構成される。地震による影響ではインターフェイスケーブルがはずれたり、ジョイント部およびコネクタの破損による通信エラーがもっとも多かった。


【MR操作卓】

6-11.MR操作卓の固定の有無と地震による装置の移動について表6-11
6-12.MR操作卓の破損状況表6-12 図6-12
6-13.具体的な破損及び故障内容

6-13 具体的な破損及び故障内容
◎コンソールパネルの破損

MRコイルセンタのズレ(神戸市立中央市民病院)


【操作卓への影響】

 操作卓への影響では、移動による操作パネルの破損が多かった。


【寝台及び本体】

6-14.寝台及び本体の固定の有無と地震にる装置の移動について表6-14 図6-14-1 図6-14-2
6-15.寝台及び本体の破損状況表6-15 図6-15
6-16.具体的な破損及び故障内容

6-16 具体的な破損及び故障内容
◎本体5cm移動により磁場が不均一となる
◎静磁場の調整が必要となる
◎静磁場の均一度 元にもどらず
◎マグネットが長軸方向へ 4mm移動
◎Heガス検出キャビネットが転倒
◎マグネットカバーに歪み(2)
◎マグネット移動により壁一部破損
◎寝台の移動(3)


【ヘッド,サーフェイスコイル等の被害状況】

6-17.サーフェイスコイル等の被害の有無について


【ガントリへの影響】

 ガントリの移動による影響は2種類が報告されている。
 1.静磁場コイル、傾斜磁場コイルの損傷によるMR信号の送受信系が壊れ、撮影不能または画質の劣化が発生した。
 2.ガントリの移動により、寝台の変位や壁およびトップカバーの損傷が報告されている。   
 静磁場コイル、傾斜磁場コイルに影響を受けた1施設では、調整では修復せず機器の更新となった。
[震度6] 固定の有無により、移動・破損に顕著な差が生じている。移動したと回答した群の中、70%前後が装置固定がなされていなかった。画像に対し致命的な影響を与える本体の移動・破損は震度6にのみ認められる。固定ありで50%の装置が移動した。固定なしでは100%移動しそのうち40%が破損した。
 固定の有用性が認められ、ユニット、ガントリのいずれにも固定が必要と考えられる。
[震度5以下] MR本体および周辺機器で固定による被害の差が顕著である。固定なしでは移動・転倒が多く、固定ありでは一部において移動が認められる程度となっている。固定は震度5までの地震に対して有用と考えられる。


【画像記録装置関連】

6-18.画像記録関連の固定の有無と地震による装置の移動について
6-19.画像記録装置関連の破損状況
6-20.具体的な破損及び故障内容

6-20 具体的な破損及び故障内容
◎自現機の処理液のオーバーフロー
◎自現機 レーザーイメージャ移動により位置調整と液交換が必要となる
◎自現機脚の破損


【施設,環境関係(空調,冷却器等)】

6-21.破損状況
6-22.具体的な破損及び故障内容

6-22 具体的な破損及び故障内容
◎停電および水の停止
◎MR棟内の配管破断
◎シールドの破損
◎内壁亀裂の点検(設置時と同じ整備点検)
◎空調機のガス漏れ
◎冷却器の水配管の破損(3)


【復旧が遅れた理由】

6-23.MR検査関係で被害を受けた装置が復旧(または復旧見込み)までに要した日数及び復旧が遅れた理由

6-23 具体的な原因
◎メーカ対応の遅れ
◎メーカへ連絡とれず
◎PDUのずれ
◎冷却機の復旧(3)
◎パワーアンプ切れ
◎使用不可能により装置更新


【地震対策について】

6-24.MR検査関係について何らかの地震対策をしていましたか?
6-25.MR検査関係における地震対策を検討する場合どのような対策をお考えになりますか?

6−25 地震対策
◎建物自体でゆれを吸収する構造
◎建物の強化
◎装置固定の強化(10)
◎横転防止
◎本体が12tもあることを考慮
◎緊急排気装置、漏出検出器および冷凍機の非常電源回路への接続
◎停電時クエンチを起こしたときの排気
◎火災時の消火


【検査中に地震が発生したら】

 今回の震災では、MR装置のクエンチという最悪の事態は免れている。しかし地震が検査中に発生していれば技術者が緊急措置として減磁装置を稼働させる可能性は高く、クエンチになる可能性は高いと考えれる。クエンチが発生していれば検査室は瞬時にガスで充満され、それに伴う酸素不足が発生する。続いて停電が起こったならば排気ダクトも作動せず患者さんの危険性は高くなる。急速なクエンチは電気的な抵抗が大きくなり、コイルの破損は避けられない。
 また通電中のユニット、演算中のコンピュータの受ける損傷は膨大であり、被害の規模は、より大きく上回ったであろうことが容易に推測される。未曾有の被害をもたらした震災ではあるが、就業中の時間帯でなかったことは幸いと考えられる。


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