兵庫県南部地震記録紙 1995年1月17日午前5時46分 M7.2−この経験を今後に生かすために−
社団法人兵庫県放射線技師会 平成7年1月 P122〜P133


7.RI検査関係

【RI検査室の被害状況について】

7-1.RI検査室の被害の程度は?表7-1 図7-1
7-2.RI検査室の被害状況はどの程度ですか?表7-2


【RI検査室への影響】

 RI検査は、法的に規制を受けており、たとえ検査機器に異常がなくとも検査室が損傷を受けた場合には、稼働できない。この点については、他の検査と大きく異なる。例えばX線検査室の壁面にヒビが入っても、X線の漏洩が無ければ問題はなく、検査することができる。よってこの違いを十分認識すべきであり、RI検査を行う部屋として使用可能かどうかが重要である。
 検査室の被害状況のデータを見ると、検査室の損傷を受けた施設が多々あるにもかかわらず、使用不可及び一部使用不可の回答があったのは47施設中 9施設(19%)と少ない。RI検査室として使用可能かどうかは、設問にはなかったので残念ながら伺い知ることはできなかった。
 検査室の破損状況を震度別に見ると、震度4以下では、ほとんど影響がないことが判る。


【インビボ装置について】

[寝台及び本体]

7-3.装置自体の固定の有無と地震による移動があったかどうか?
表7-3
 図7-3-1   図7-3-2   図7-3-3   図7-3-4
7-4.破損状況表7-4 図7-4
7-5.具体的な破損及び故障内容

7-5 具体的な破損例及び故障内容
◎カメラ本体の倒壊
◎カメラ本体の転倒(2)
◎カメラ本体の脱線(2)
◎カメラ本体レール上移動
◎検出器の破損
◎アーム部の破損
◎回転リングの破損
◎可動チェーンの破損(2)
◎位置付け用モニタの破損
◎コリメータの破損(3)
◎コリメータ移動装置の破損
◎マイクロスイッチの破損
◎レールの破損
◎移動用ベッドの脱線


【インビボ装置への影響】

 インビボ装置の固定の有無はほぼ半々であったが、装置の移動や転倒への影響は如実に現れており、装置の固定の有用性がうかがわれる。
 震度別の移動や転倒の数をみると、影響の差が顕著に表れている。震度4以下では固定の有無にかかわらず移動や転倒はなく、震度5でも極少数(0〜1台)であった。しかし、震度6以上では、転倒3台(固定有:0、固定無:3)、移動13台(固定有:4、固定無:9)と一気に増えている。


[画像記録関連]

7-6.装置自体の固定の有無と地震による移動があったかどうか?表7-6
7-7.破損状況表7-7 図7-7
7-8.具体的な破損及び故障内容

7-8 具体的な破損例及び故障内容
◎ドットイメージャ転倒により内部CRT破損
◎マルチイメージャ落下により内部基板破損
◎ポラロイドガンカメラ落下物により破損
◎コンピュータハードディスクの破損
◎電源差込み部の破損


[画像記録装置関連]
 画像記録装置については、1施設を除きほとんどが固定はしていない。震度別ではやはり震度6以上では転倒があり、移動した装置も多く移動距離も大きい。しかし、損傷を受けた装置は少なく、キャスタ付や据え置きの装置が殆どなので、地震のエネルギーをまともに吸収せず、また移動による衝突も少なかったのであろう。


[施設,環境関係(空調,冷却器等)]

7- 9.破損状況表7-9  図7-9
7-10.具体的な破損及び故障内容

7-10 具体的な破損例及び故障内容[インビボ]
◎扉が外れた
◎間仕切り用パーテーションの破損
◎壁面の亀裂
◎床面のリノリウム損傷
◎給水設備破損のため、ボイラ停止
◎水道、ガスが使用不可

【インビトロ装置について】

7-11.装置自体の固定の有無と地震による移動があったかどうか?表7-11
7-12.シンチレーションカウン夕、遠心器の破損状況表7-12 図7-12
7-13.具体的な破損及び故障内容

7-13 具体的な破損例及び故障内容
◎遠心機のレベル低下
◎カウンタのチューブの送り部破損

[施設,排水,排気関係(空調,貯留槽等)]

7-14.破損状況表7-14 図7-14
7-15.具体的な破損及び故障内容

7-15 具体的な破損例及び故障内容[インビトロ]
◎配水管の破損(5)
◎配線の破損
◎空調関連停止
◎排水設備で内モータと検出器の破損
◎貯水槽の水があふれた
◎貯留槽の移動
◎浄化槽の破損
◎排気ファン、フィル夕の異常(2)
◎排気ダクトのねじれ、つなぎ目が外れる(2)
◎排気モニタ検出部の転倒、破損(2)


【インビトロ装置への影響】

 回答数が少ないが、全て固定していない。やはり、震度6以上では移動、転倒が生じているが、損傷を受けたのは1施設のみであった。

【設備、環境関連への影響】

 重大な損傷は受けていないが、震度6以上では修理可能な損傷を受けた施設が多く、10施設(インビボ:3、インビトロ:7)もあった。特にインビトロ関連は16施設中の 7施設と損傷を受けた施設の割合が多い。


【管理部門(管理モニタ,各種サーベイメータ)について】

7-16.破損状況表7-16 図7-16
7-17.具体的な破損及び故障内容

7-17 具体的な破損例及び故障内容
◎RI監視モニタのランプ切れ
◎管理モニタの誤作動
◎ガスモニタ検出器の鉛蓋のズレ
◎RI貯留槽の水位計脱落
◎サーベイメータのツマミ破損
◎屋上排気設備転倒(2)
◎排気用フィルタ故障
◎排水用モータ故障


【管理部門への影響】

 震度5以下では、損傷は受けていないが、震度6以上では 6施設が損傷を受けている。


【その他コンピュータ関連機器】

7-18.装置自体の固定の有無と地震による移動があったかどうか?表7-18
7-19.破損状況表7-19
7-20.具体的な破損及び故障内容


【コンピュータ関連装置への影響】

 固定した装置が3台、固定していない装置が18台であった。転倒はなく、移動が少々あった(5台)が、全て異常なしで損傷を受けていなかった。


【復旧が遅れた理由】

7-21.RI検査関係で被害を受けた装置が復旧(または復旧見込み)までに要した日数及び復旧が遅れた理由

7-21 RI検査関係の復旧が遅れた原因
◎メー力に在庫部品なし
◎コリメータ納入の遅れ
◎壁面、床面、パーテーションの補修が震災後の混乱で遅れたため
◎大規模工事のため日数がかかる
◎浸水は4〜5日で除去可
◎物品、棚等の転倒

倒れたガンマカメラ(神戸大学医学部附属病院)


【復旧の遅れた原因】

 RI検査関連の復旧が遅れた原因としては、地域、被害の大小など各施設の事情によりさまざまであった。


【地震対策について】

7-22.RI検査関係について何らかの地震対策をしていましたか?


【震度別被害状況】

[震度6以上]
 インビボ装置の移動、転倒においては固定の有無による差は顕著にでている。
 移動したと回答した群の中、69%が固定されていなかった。転倒に関しては全てが固定されていなかった。
 また、コンピュータや画像記録装置等他の装置では、固定されていないものがほとんどであった。移動や転倒も多いが、大きな損傷は受けていない。
 これは、恐らく固定した装置には地震のエネルギーのほとんどが伝わるため、影響が大きかったのではないかと考えるが、キャスタ付の装置等は、転がることにより地震のエネルギーを分散させ、装置自身に伝わる地震のエネルギーは減少するので影響が少ないのではないかと思われる。
[震度5]
 インビボ装置では、固定した群では移動、転倒とも16%、固定していな群では移動が33%であった。
 コンピュータや画像記録装置等他の装置では、すべて固定されていないが、コンピュータと画像記録装置に1台ずつ移動があったに過ぎず、破損例はなかった。
 本調査では震度5の地域のRI関連の回答数が少ないため、はっきりした傾向はつかめないが、おおむね震度5では大きな被害を受けることは少ないのではないかと考える。
[震度4以下]
 全ての装置や空調等に何の影響もなく、移動もなかった。
 震度4以下の地震では、設備や装置に損傷を与えることは希で、もし損傷を受けたとしても軽い損傷で、修理可能なものである。

【まとめ】

 インビボ装置以外はほとんど固定されていないが、キャスタ等比較的簡単に移動できる状態のものが多く、また軽量なので、ゆれに応じ移動はしたが、本体に何の損傷も与えていないようである。これは、超音波装置やCR装置のようなキャスタ付の装置に甚大な被害が無かったことと同じであろう。これは今回の地震にみられた特徴の一つである。
 インビボ装置は、重量もかなりあり(特にガンマカメラ)、固定の有無に関わらず、損傷を受けているが、やはり固定している方が移動や転倒した例が少ない。
 震度4以下は、装置に何の影響も与えていないが、震度5以上では装置の固定が有用である。
 しかし、インビボ装置(ガンマカメラ)のようなかなり重量のある装置の固定は、従前の方法でなく、さらに強固な固定を考慮する必要があろう。
 さらには、強固な固定ほど地震のエネルギーが装置へ多く伝わると考えると、検査室あるいは病院の建物そのものを免震構造にする事が重要になろう。

【検査中に地震が発生したら】

 今回のような大地震が検査中に起こった場合、インビボ装置(主としてガンマカメラ)のそばには患者はもちろん従事者もいる。そこで移動や転倒がおこれば、装置への破損はない場合でも、人間に対する影響は容易に想像がつく。それを避けるためには震度6以上の直下型地震に耐えうる固定でもって、装置を固定し、少なくとも、人間に被害が及ばぬようにすべきである。
 また、インビボ装置以外は、ほとんど固定されていないのが現状で、やはり移動や転倒は多かったが、装置への損傷は軽微であった。しかし、それらの装置のそばに人間がいる場合のことを想定すると、かなりの被害が予想される。やはりしっかりと固定すべきであろう。
 なお、できるならば、検査室あるいは建物全体を免震構造にすべきである。


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