兵庫県南部地震記録紙 1995年1月17日午前5時46分 M7.2−この経験を今後に生かすために−
社団法人兵庫県放射線技師会 平成7年1月 P146〜P151


「阪神大震災」への対応報告(放射線技師の活動)

兵庫県放射線技師会 阪神支部

一番合戦清旨 田崎 勇夫
渋谷 省平
平野 友則
名定 敏也
藤田  欣邦 須多 暢之
前田 義明
大津 英生
五嶋 正行
三歩一 博明
松本 健
三輪 大介
尾松 信也
新谷 明久
清田  忠彦
西村 隼児
伴場 浩二
田所 幸一
細見 和雄
辻本  弘志
堀  哲生
寺西 敏美
金子 弘 田辺不二男
縄田  茂幸 前田 良彦 上田 恵吾    

 あの地震は、阪神支部地域においても、芦屋から西宮にかけた地域や宝塚を中心に未曽有の被害をもたらしました。しかし、多くの人々は被災者であることを越えて、市民としてあるいは職業人として、献身的な活動を行いました。私たちにも医療に携わる者としての同様の活動がありました。
 阪神支部はこの活動体験を記録にとどめ、教訓として生かしていくことが必要と考え、支部内21施設の方々の参加を得て、報告、検討会を開催してきました。そして、被災した困難な状況下での機転に満ちた数々の取り組みと、その体験に基づいた提言を聞くことができました。
 会員諸氏の一考の助けになればと考え、その要旨をまとめましたので、ご一読いただければ幸いです。

1.参加各施設の当日の状況

 交通網が遮断したにもかかわらず、半数以上の者が徒歩あるいは自転車やバイク等により病院に駆けつけ、初動体制確立に努めました。
 しかし、被害の規模が大きかった芦屋から西宮にかけた地域には、特に多数の救急患者が殺到し、スタッフが不足したことや、なにより設備や機器等が破損し、ライフラインが停止したことにより、撮影が不可能な状態となった病院もありました。
 一方、兵庫県全体に散在している県立病院には遠距離通勤者が多く、小規模病院においてはスタッフの絶対数が少なく、放射線業務の初動体制確立に課題を残しました。

(1)当日の出勤状況と患者数および放射線業務の状況

(別表参照)

2.災害救急医療活動への対応

 〜 設備や機器等が破損し、ライフラインが停止した被災下での取り組み〜

 一時期に殺到した多数の患者の対応におわれる一方で、放射線機器の被害状況を調べ、X線撮影復旧へ向けてのさまざまな取り組みがなされました。

(1)患者の要望と言動

 「状態が悪いから早く診てほしい」との要望が多くあり、早急な治療が必要と判断した場合は医師を呼びに走り、その一方で、「寒い」との声に呼応して布団や毛布、タオルケットを確保したり、ストーブと延長コードをかき集め、ブラインドを開けて採光するなどの対応がありました。
 しかし、恐怖感そして不安定な精神状態にある被災者への対処は、私たちの能力をはるかに越えるものでした。

(2)停電、送電停止措置への対応

 X線装置に損傷もあることから、非常用電源によるポータブル装置での対応が多く報告されました。また、多数の移動困難な患者と余震を考慮して、廊下に遮蔽を設けて撮影を実施した病院もありました。

(3)損傷した放射線機器への対応

 放射線機器の被害は多岐にわたっていましたが、自動現像機の処理液の混濁はすべての施設で発生しており、その交換作業が撮影業務の始まりでした。

(4)断水への対応

 断水のため自動現像機が稼働できない施設では、応急的な対応としてモニター診断を実施する一方、水を確保するための様々な努力が払われました。

(5)マヒした病院機能への対応

 出勤できなかった職員が多かったこと、そしてなにより、患者が一時期に殺到したため、カルテへの記載や撮影依頼伝票の発行さえ不可能な状態となっていました。このように大混乱した状況であったためか、指揮・命令系統が機能せず、当事者による独自の判断で対応せざるを得なかったのが実情のようでした。

3.病院の機能修復と、二次災害を考慮した取り組み

 私たちは、日常接することの少なかった委託会社や医療職以外の職員と協力して、病院の機能修復や二次災害を考慮した種々の作業に取り組みました。
 そのなかで、二次災害の防止を目的とした機転に富んだ対応も実現でき、患者のために職種を越えて協力することの大切さを改めて実感しました。

(1)病院機能修復への取り組み

(2)二次災害を考慮した対策と措置

4.職場、職域を越えた活動

 出勤し得た者は救急患者の搬送や介護、遺体の搬送など、災害救急医療を側面から支援する活動に従事し、交通網遮断により出勤不可能な者は、近所の病院の診療や救出作業に従事するなど、一般作業を含む活動がありました。

5.体験を通じて得た教訓と提案

(1)放射線機器に関するもの

 災害医療においては、トリアージとニーズの変化に呼応することが非常に重要であることを学びました。放射線機器の修復についても同様の判断が求められ、修復の必要性と優先順位を考えて行なう必要がありました。

(2)病院施設や設備に関するもの

(3)災害救急医療システムに関するもの

(4)技師会への提案

別表・当日の出勤状況と患者数および放射線業務の状況


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