兵庫県南部地震記録紙 1995年1月17日午前5時46分 M7.2−この経験を今後に生かすために−
社団法人兵庫県放射線技師会 平成7年1月 P197
神戸東支部支部長 久保 博
あの日、新聞配達のバイクの音でいつもより早く目が覚めました。もう半時間は眠れると思いつつ、何を考えるでもなく暗闇の中で時を過ごしていました。突然激しい上下動を感じ、反射的に起きあがろうとしましたが、すぐに体は左右に大きく揺られ、為すすべもありませんでした。その時間の長さに、家が倒れるのではという不安感が心臓の鼓動を高めました。
それから約半月が過ぎ、神戸東支部の中に解雇された技師がいることが明らかになりました。すぐに情報を集め、病院の全壊及び半壊による放射線技師の解雇者数は、神戸東支部において、3病院10名に達することがわかりました。この時初めて地震の影響の重大さを強く感じました。また、災害による解雇は正当であると労働基準法に記載されているのを知って、ショックを受けました。
幸いにも3名の技師が知人等を通じて早期に再就職し、1名は元の職場で再雇用という形になりました。
しかし、この4名の技師にも問題が生じています。解雇された時点で退職金が支払われているので、新たに一からの出発という事になります。また、再雇用された1名も以前の給料の8割程度しか収入がないということです。それでも再就職が決まっただけでもよかったと言わざるを得ないのが現状です。
兵庫県放射線技師会では、特別委員会を設置し、約4ヶ月間雇用問題に取り組みました。全国の技師会にも応援をしていただき、多くの求人票を送ってもらいました。しかし、9月15日現在、未だ3名の技師の就職先が見つかっていません。
その理由として、
等があります。
この中で特に年齢制限の厳しさに驚かされます。大部分の求人は26〜27才を上限としています。この制限では地震による解雇者を救済することは不可能です。
今まで忙しい日常業務の中で技術を磨いてきたベテラン技師を雇用する事業所がないというのは、どのように考えればよいのでしょうか。
放射線技師の職業の存在自体にも疑問を感じます。この要因は病院の経営者が大部分医師であり、放射線技師が関与していないことにあると思います。
私はこの時、放射線技師会の経営する病院がぜひ必要であると考えました。このような事態に我々放射線技師の力で、たとえ一人でも救済できると思うからです。
これを機に、放射線技師一人一人がこの問題を議論して欲しいと思います。
そして、一日も早く、全員が再就職できることを願います。
(c)1996社団法人兵庫県放射線技師会(デジタル化:神戸大学附属図書館)