命を支える食生活を守るために 兵庫県栄養士会 平成9年5月 p143-155


2 ネットワークづくり

(1)ネットワークの必要性

 非常時における栄養対策はこれまでの報告にみられるように被災後の環境を時系列に分析したうえで対応策を練らなくてはならない。
 被災直後2〜3日の緊急食料は被災者の生命維持のためであり、原則として自助努力のもとに確保し、個人および行政が主として行う。
 その後は生きる意欲を高めるために栄養面や味覚上の問題が生じてくる。さらに、中長期的段階には健康管理面のための栄養管理が重要になってくる。ここで、ネットワークの必要性がでてくる。
 緊急時において食材と調理能力に制限がある給食施設ではバラエティーに富んだメニューは不可能である。可能な限り、豊かな給食を作るために、給食施設間での食材提供や人的援助は欠かせないであろう。これを実現するには、日常のネットワークを組織しておかなくてはならない。実際、このたびの震災においても系列施設からの速やかな援助に助けられたところは少なくない。
 さらには、一般者の栄養管理の問題である。行政配給食の栄養面での問題(食数・衛生管理・費用等の制約と個人への対応困難)により “炊き出し”活動が必要となる。 “炊き出し”の実施にあたっては調理設備と食材、そして、マンパワーが不可欠である。調理設備と食材については、避難所の水と熱源の自給システムを確立したうえで、対策本部による食糧供給が行われるものと想定し、調理者としてのマンパワーを組織するネットワークを考える。

(2)ネットワークづくりのポイント

 各協議会別にネットワークを編成し、各々の必要な救援内容と力量によってマニュアルを作成する。
 非常時においてネットワークが円滑に作動するためには、平常時からネットワークの活用を考え、トレーニングしておくことが必要である。また、そのことが栄養士の社会活動の発展をもたらし、栄養士の社会的位置づけを高めることになると考える。
 現在、行政や施設で検討されている防災対策における“食” の位置付けを確認し、その核となる栄養士の職務を確認する。そして、食糧対策の基幹組織となる行政との連携をとり合理的な救援ができるようなネットワークを編成する。

(3)ネットワーク編成の事例報告

1. 保健所管内を1つの地域とした場合

 非常時に有効なネットワークを考えたとき、保健所が所管する地域でのネットワークづくりが最も検討しやすく、また、実際に運営するうえでも最も有効である。
 現在は、どの地域も連絡網はあっても非常時に具体的に動かすことのできるネットワークはないのが現状である。
 次に紹介するのは、県下で最も早く、ネットワークづくりに取り組んでいる例である。
 これを受けて、兵庫県議会議員でもある岡やすえ議員が県会においてネットワークづくりに取り組む必要性について質問したところである。これは、今後栄養士会としても力強いことであり、行政を巻き込んでのネットワーグづくりがスムーズに実施できることを期待したい。


氷上郡栄養士会会員所属施設による緊急協力体制の検討内容

実施日 平成8年8月16日(金)
参加者 緊急協力施設参加の氷上郡栄養士会会員

1 目的

 我々給食担当者の責務である、「喫食者への安全且つ適切な食事の提供」の困難さを痛感したのは、2年前の阪神淡路大震災、及び昨年度のO157食中毒発生時である。
 震災時、災害発生施設栄養士の寝食を忘れた毎日の大奮闘の姿や、O157食中毒発生施設の栄養士が困惑しながらも、必死に対処している姿を想像すれば、我々は、どんな境遇におかれても、「毎日の食事の確保」という重要な責務を果たさなくてはならない。これを自施設のみで、又、一人の栄養士で対処することは大変難しいことである。
 この責務を果たすためには、まず第一に災害時における自施設での対応を検討しておく こと、第二に、同じ栄養士仲間や、各地域における強力な相互支援を得ることができるシステムを作成すること。この二つのことにより、早期に、食生活の平常化を図ることが重要である。

2 参加施設

 氷上郡栄養士会会員所属の病院及び社会福祉施設における協力希望施設
 (希望以外の施設に於いても、発生時に緊急の依頼があれば協力する)

3 実施要綱

 自施設で食中毒が発生し自施設の調理スタッフが動けないとき(原因が原材料として明確にされた以外)

  1.  各施設の支援必要給食数、支援に必要な調理スタッフ人数、支援できる調理人数、各施設の協力施設等は下記の表4の通りである。
  2.  病院又は社会福祉施設の協力施設は担当制にする。(担当内容は表の通り)
  3.  協力施設は出来る限り近隣施設が協力する。(協力施設は表の通りであるが、その他の施設にも協力要請があればすみやかに協力する)
  4.  支援調理スタッフは各施設とも1〜2人とする。
  5.  発生した施設の栄養士は、すみやかに氷上郡栄養士会地域委員に依頼をする。
     依頼を受けた地域委員は、発生施設の特色を考慮し、発生施設栄養士と相談し表4の順に従って責任を持って柔軟に対処する。
     (平成8、9年度地域委員は日本赤十字病院森田千香子であるが、県立柏原病院足立いさ子、及び特別養護老人ホーム松寿園梅垣佳津枝がその職に協力する)
  6.  緊急時のメニューについて
    緊急時の給食支援は病院に於いては、食数が多くなるために各施設の設備状況を考慮し、きめ細かい対応を必要な特別食のみとする。(主食などは施設の設備状況において、その時に検討する)
     尚普通食は、病院に関係する業者に依頼する。(業者が給食提供できなくなった時は表4の施設が支援する)。そして緊急時特別食メニューは特殊性を配慮し、各病院独自で作成する。
     又福祉施設は、普通食を含み支援する。そして緊急時メニューは事前に検討し統一のものを作成する。作成メニューはいずれも3日間とする。そして、病院及び福祉施設が作成したメニュー内容は、一覧表にし協力依頼施設及び氷上郡栄養士会地域委員へ送付しておく。(社会福祉施設は8月22日午後2時から緊急時メニュー案を持ち寄り検討し作成する)
  7.  使用食器について
     食器は使い捨て食器を使用する。尚食器の準備は各施設が準備する。(協力要請があれば、受け入れ側施設も協力する)
  8.  給食搬送方法について
     給食搬送のための配送車を緊急に確保する。
     方法は次回の会合(8月22日3時より)までに検討しておく。(レンタカーの検討など)特に夏場は冷凍車を確保する。
  9.  支援スタッフの労力扱いについて
     支援スタッフの労力扱いについては、各施設の長とよく相談の上、8月22日に持ち寄り検討する。
     案…「支援スタッフは専免扱いにする」など

4 緊急協力体制を進めるにあたり発生した問題の検討

 緊急協力体制を検討していく中で、2つの大きな問題が生じ、この緊急協力体制作成にあたり大きく支障をきたしている。そのためにこれらの問題点を早急に検討しなくてはならない。

問題点

(1)県立病院施設の目的外使用の困難さ

 病院施設を民間施設と福祉施設の給食を作る目的での使用は緊急時とはいえ、許可が認められるかどうか問題である(近隣に公的病院はなく、その他の県立病院の支援は地理的条件からも不可能に近い)

(2)県の職員が民間及び福祉施設支援のための専免扱いが認められるかどうか

※ 以上イ、ロの内容は支援する立場での問題点ではあるが、支援を受ける立場を考えれば、病院という特殊事情を検討すれば、現実に困ることは明白である。このことからも県は病原性大腸菌 O‐157食中毒発生時の緊急時の協力体制においての柔軟な対応の検討をお願いしたい。

5 協力施設の担当制及び支援必要状況並びに支援を依頼する施設名などに関する一覧表

(各施設の設備を考慮し病院は普通食は各病院関係の業者に依頼し、特別食のみとする)

特別養護老人ホーム松寿園 管理栄養士 梅垣佳津枝


2. 教育養成協議会の場合

 教育養成は学生動員によってマンパワーを提供することができると考え、次のようなボランティア編成を検討している。現在、協議会にて立案し、各校の連絡調整を行っているところである。

 案:各校の所在地近辺を担当地区とする。
   指揮系統について、その地区の行政機関と連携をとる。
   各校で年度はじめに学生に対してボランティア登録を呼びかける。
   毎年、登録更新し、緊急時の栄養管理体制の必要性を学生に理解させる機会とする。
   実働力を維持するために訓練日を設ける。
  ex.研修と野外活動
平常時のネットワーク活用を考え、学生の社会活動の場とする。
  ex.仮設住宅住民対象の活動
    給食サービス活動に取り組む連携プレーができる団体と交流し、活動の活性化を図る。
  ex.行政協議会
    公衆栄養協議会
    学校協議会または全国学校栄養士協議会兵庫県支部婦人連合会各種ボランティア団体
規約(案)と機構(案),募集用パンフレット(案)を次に紹介する。


兵庫県栄養士養成施設学生ボランティア活動推進プラン(案)

1.目的

 阪神・淡路大震災 (1995年1月17日)では甚大な被害を被りましたが、豊かな私たちのの日常生活を省みるという意味においては、貴重な体験となりました。
 私たちは、飽食の時代にあって忘れつつあった「食は命の糧」であるということを体験し、過剰栄養の現状から「食の原点」にたちかえる良い機会となりました。
 そして、このような緊急時における栄養管理、健康管理は平常時から備えておく必要があるということを再認議しました。
 栄養士を志す学生が、普段からボランティア活動(「食」に関する支援活動)に取り組むことは意義深いことと考えます。
 兵庫県栄養士会教育養成協議会は、学生ボランティア活動の推進を図ることを目的に活動推進プランを実施します。

2.実施主体

兵庫県栄養士会教育養成協議会

3.協 力

甲子園大学、園田学園女子大学短期大学部、兵庫栄養専門学校、武庫川女子大学、武庫川女子大学短期大学部、夙川学院短期大学、後難女子大学短期大学、松蔭女子学院短期大学、神戸女子大学、神戸女子短期大学、神戸学院大学、神戸学院女子短期大学、兵庫女子短期大学、賢明女子学院短期大学、湊川女子短期大学、兵庫県栄養士会

4.事業内容

 1)兵庫県栄養士養成施設学生ボランティア活動を推進するため、団体に助成する。
 2)学生へボランティア情報を提供する。
 3)ボランティア研修会・シンポジウムを開催する。
 4)ボランティアグループのネットワークに関する事業を行なう。
 5)ボランティアグループのレクリエーションに関する事業を行なう。
 6)その他目的達成のために必要な事業を行う。

兵庫県栄養士養成施設学生ボランティアネットワーク機構


兵庫県栄養士養成施設学生ボランティアネットワーク規約(案)

1.趣 旨

 阪神・淡路大震災(1995年1月17日)では甚大な被害を被りましたが、豊かな私たちの日常生活を省みるという意味においては、貴重な体験となりました。
 私たちは、飽食の時代にあって忘れつつあった「食は命の糧」であるということを体験し、過剰栄養の現状から「食の原点」にたちかえる良い機会となりました。
 そして、このような緊急時における栄養管理、健康管理は平常時から備えておく必要があるということを再認識しました。
 栄養士を志す私たちが、普段からボランティア活動(「食」に関する支援活動)に取り組むことは意義深いことと考えます。
 兵庫県栄養士養成施設の学生ボランティアグループのネットワークを図ることを目的として、この規約を制定します。

 (名 称)
第1条 本会は兵庫県栄養士養成施設学生ボランティアネットワークと称する。
(所 在)
第2条 本会は、リーダーの在籍校に事務局を置く。
 (目 的)
第3条 本会は、「食」に関する支援活動を行う兵庫県栄養士養成施設在学生または業生ボランティアのネットワークを図ることを目的とする。
 (活 動)
第4条 本会は、次の活動を行う。
 1)「食」に関する支援活動を行う兵庫県栄養士養成施設在学生または卒業生ボランティアのネットワークを図る活動。
 2)高齢者給食サービスなどのボランティア活動の振興。
 3)研修会・シンポジウムの開催。
 4)緊急時における「食」に関する支援活動(配給・炊き出し業務等)。
 5)機関紙発行などの情報交換活動。
 6)会員相互の親睦を図る活動。
 (会 員)
第5条 兵庫県栄養士養成施設在学生または卒業生、その他、本趣旨に賛同する学生および教員をもって構成する。
 (機 関)
第6条 本会に次の機関を置く
  1)総 会   2)リーダー会   3)その他
 (総 会)
第7条 総会は本会の最高決議機関とし会員で構成し、年1回開催する
  但し、リーダー会が必要と認めた時は臨時開催できるものとする。
第8条 総会は次のことを行う。
  1)規約改正
  2)活動計画の審議及び承認
  3)予算の審議及び承認、決算
  4)リーダー、サブリーダーの選出及び解任
  5)その他必要な事項
 (役 員)
第9条 本会は、次の委員を置き任期は2年とする。
  1)リーダー     1名
  2)サブリーダー    1名
  3)委 員       若干名
  4)監事     1名
 (リーダー会)
第10条 リーダー会は本会の執行機関であり、委員で構成し、召集はリーダーが行う。
第11条 リーダー会は次のことを行う。 
  1)総会で承認された事項の執行
  2)その他
 (会 計)
第12条 経費はバザー、イベント活動等により資金作りを行うとともに、兵庫県栄養士会教育養成協議会より助成を受け運営する。
 (監 査)
第13条 監事は会計年度ごとに決算の監査を行い、総会にて報告する。
 (付 則)
第14条 本会への参加は各自の自主参加とし、毎年、6月1日に更新する。(付則)
第15条 会員はボランティア保険に加入する。
 (付 則)
第16条 本規則は1997年6月1日より施行する。


3. 公立病院間での場合

 この震災の中心地である神戸市の4病院間で、震災を機に緊急時相互協力体制が取り決められたので紹介する。今後は、病院間のみならず集団給食を実施している施設の分野ごとにもネットワークづくりをすすめていきたい。


神戸市保健福祉局病院栄養部門緊急時相互協力について

 緊急事態が発生した直後に、被災病院で十分な病院給食の実施ができない場合、病院給食の重要性に鑑み保健福祉局病院間で、相互扶助精神に基づき、速やかに応援協力することを目的として、下記のとおり決定する。

1.相互協力システムについて

2.情報集約病院について

 災害発生時、情報集約病院は被災病院の情報集約をする。第一次〜第三次の情報集約病院は、災害による通信手段の遮断、混乱により被災した病院からの要請がない場合でも、被災病院の情報集約に努める。

3.総合調整病院について

 情報集約病院は、第一次の総合調整病院の中央市民病院に連絡する。中央市民病院が被災した時は西神戸医療センター、神戸リハビリテーション病院、西市民病院の順に総合調整病院とする。

4.応援要請の手続き

 応援を要請する病院は、口頭、電話、FAX等により応援内容を把握できるものについて明らかにし情報集約病院あるいは、総合調整病院へ応援を要請するものとする。災害による通信手段の遮断により、被災した病院からの要請がなくても、応援が必要と判断される場合、情報集約病院は応援実施システムの手段により、総合調整病院へ応援を要請できるものとする。

5.応援内容について

  1. 被災の状況把握と対応
  2. 必要な人員、食品、水、燃料などの数量及び内容の調整
  3. 応援の期間の調整
  4. その他

 この取り決めは平成8年11月1日より適用する。

           平成8年11月1日

               神戸市立中央市民病院     栄養科長   谷郷 悦子
               神戸市立西市民病院      栄養係長   大西 恵子
               西神戸医療センター      栄養管理室長 岡田 桂子
               神戸リハビリテーション病院  栄養科主幹  郷  光男


(4)給食施設の相互支援方策

 栄養士会主催の震災1周年記念シンポジウムで災害時のネットワークづくりの構築を申し合わせ、兵庫県に要望した。また、H8年10月岡やすえ(栄養士)県会議員により、県議会本会議において「災害時の食対応(O157なども含めた災害時)の支援体制」について提案され認められた。
 県では、日9年、10年の2年間で支援の組織づくりに取り組まれることとなった。今後、栄養士会として協力するとともに、自主的に努力していきたい。

1. 給食施設のネットワークの構築

 (災害時食生活改善活動ガイドラインより)
 災害は広域に発生する場合が多く、その災害の中でも生命をつなぐ食事を供給するといった、非常に重要な役割を担う給食施設は喫食者への食事の提供を1日1食たりとも欠かすことはできない。
 また、災害により正確な情報が伝わりにくく、交通網が寸断され、食材の流通が悪い中でこれら給食施設の機能を発揮するためには平常時よりそれぞれの万全の備えと、各給食間のネットワークの構築が急務と考えられる。
 そのため、類似または近隣の給食施設間の支援体制により、緊急時あるいは長期にわたる食の確保を図り、災害時でも普段の献立で栄養の偏りのない給食の実施が可能となりうる。

図 災害時の給食施設ネットワーク

2.集団給食施設ネットワーク構築事業

1.目 的

 集団給食施設は、病院、福祉施設、学校、事業所等多数人に対して継続して食事を提供する施設である。O‐157による食中毒発生時や災害等緊急時において、集団給食施設は喫食者への食事提供を継続する必要があり、相互支援のためのネットワークの構築は必要不可欠である。
 このため、集団給食施設協議会を結成し、協議会を通じた働きかけにより、現在は各施設対応となっている緊急時における相互支援ネットワークを構築する。

2.内 容
 (1)集団給食施設状況調査の実施

 全施設を対象とした集団給食施設状況調査を実施し、1.集団給食施設協議会の結成にかかる参画希望状況2.給食施設の食中毒発生時及び災害時の相互支援に対する考え方3.相互ネットワークへの参画意思、について把握し協議会の結成及びネットワークの構築のための基礎資料とする。

 (2)集団指導の実施

 (1)の結果を参考とし、協議会及びネットワークの意義への理解を深めるための地域別、業種別の集団指導を行い、参画への気運を醸成する。

 (3)個別巡回指導の実施

 ネットワークへの加入の必要性の認識の薄い施設や、ネットワークを成立させるために加入を求める必要のある施設に対し、個別巡回指導を行う。

 (4)集団給食施設協議会(仮称)の設置による相互支援ネットワークの構築

 集団給食施設協議会(仮称)を保健所ごとに設置し、緊急時等における相互支援体制として給食施設ネットワークを構築する。


(c)1997兵庫県栄養士会(デジタル化:神戸大学附属図書館)