『事業主の方へ 被災に伴うパートタイム労働者雇用Q&A』 神戸商工会議所 平成7年3月 P1〜P33


はじめに

 「阪神・淡路大震災」により被害を受けられた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。震災後2か月余りが経過した現在、皆様におかれましては、事業の継続、一日も早い経営再建に向けて、懸命の努力を続けられていることと存じます。しかしながら、今回の震災は企業経営を根底から揺るがすほどの甚大な被害をもたらしており、事業活動の縮小や閉鎖に伴って雇用への重大な影響が懸念されています。このため、労働省は、従業員の雇用維持を図る事業主に対する雇用調整助成金の特例措置や被災により離職・休業を余儀なくされた場合の雇用保険失業給付制度の特例措置をはじめとする種々の緊急雇用対策を打ち出しております。神戸商工会議所におきましては、労働省が平成6年度から開始した短時間労働者雇用管理改善等助成金を受けて、パートタイム労働者の雇用管理の改善に資するよう事業主の方に対する情報提供をはじめとする事業を実施しているところでございます。当冊子は、この事業の一環として作成したもので、主としてパートタイム労働者の震災に伴う雇用対策として労働省の緊急雇用対策の特例措置等をQ&A形式で解説するとともに、巻末資料として事業主が構ずるべきパートタイム労働者に対する措置や事業主に対する助成制度を紹介しています。なお、Q&Aの解説はご多忙の中を、神戸商工会議所専門相談員でもある社会保険労務士の岡西英二郎氏、富岡忠彦氏、中川秀和氏の労を煩わせました。紙面をかりてお礼申し上げます。この小冊子が、被災を受けられた事業所におけるパートタイム労働者雇用対策並びに雇用管理の改善の一助になれば幸いです。

平成7年3月

神戸商工会議所

Q1

 当社は、このたびの阪神・淡路大震災による被害が大きいため休業せざるを得ません。この間パートタイム労働者を含め従業員に支払った休業手当に対して、国からの助成金が出ると聞きましたが、具体的にはどのような内容ですか?

A

 事業主の方々に対して、次の内容の阪神・淡路大震災による「雇用調整助成金」の特例措置が設けられています。雇用調整助成金とは、景気の変動などで事業活動の縮小をせまられた事業主が休業などを行った場合従業員に支払う休業手当などの一部を国が助成するもので、失業の予防を目的とする国の制度です。

1.対象事業主は

 雇用保険に加入していて、事業活動の縮小を余儀なくされ休業等を行いながら従業員の雇用維持を図った兵庫県神戸市、尼崎市、明石市、西宮市、洲本市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、三木市、川西市、三田市、川辺郡、美嚢郡、津名郡、三原郡、大阪府大阪市、豊中市、池田市、吹田市、箕面市、豊能郡の区域内に所在する事業所の事業主の方が対象になります。

2.休業の要件は

イ.指定期間内(平成7年1月23日から平成8年1月22日までの1年間)に行われるものであること。

ロ.所定労働日の全一日にわたるもの又は所定労働時間内に当該事業所における対象被保険者全員について一斉に1時間以上おこなわれるものであること。

ハ.労使間の協定によるものであること。

ニ.休業手当の支払が、労働基準法第26条(平均賃金の60/100以上支払うこと)の規定に違反していないものであること。

3.受給できる額は

(1) 従業員に支払う休業手当(賃金の60/100以上支給することが必要)の1/2が大企業に対して、また中小企業に対しては2/3が助成されます。ただし、暫定措置により平成7年3月31日(平成7年6月末日まで延長される見込み)までの間は大企業2/3、中小企業3/4(教育訓練については大企業3/4、中小企業4/5となっています。

(※)中小企業事業主とは、

小 売 業 ・ サ ー ビ ス 業 資本金 1,000万円以下又は従業員 50人以下
卸      売     業 資本金 3,000万円以下又は従業員 100人以下
そ の 他 の  業  種 資本金    1億円以下又は従業員 300人以下
をいい、大企業事業主とは、中小企業事業主に該当しないものをいいます(以下同じ)。

(2) 受給期間は対象被保険者×200日が限度となっています。

4.申請手続きは

(1) 休業等の実施にあたっては、事前に管轄の公共職業安定所長に届けておくことが必要で、1従来の生産状況の概要と被災による生産の落ち込み具合を示す書類、2休業期間と対象人員を記した実施計画書、3労使の休業協定書などの所定の様式による提出が必要です。具体的な提出書類は次のものですが、社屋の倒壊などで資料がそろわない場合などは公共職業安定所にご相談下さい。

イ.雇用調整実施事業所の事業活動及び雇用の状況

ロ.疎明書(休業の理由書)

ハ.休業の実施に関する協定書(写)

ニ.労働組合のない場合………委任状

ホ.日毎の労働者別休業計画状況

へ.年間休日カレンダー

ト.登記簿謄本

チ.就業規則等

リ.事業所組織図

ヌ.労働者名簿(対象被保険者)の写

(2) その後、判定基礎期間の末日の翌日から1か月以内に雇用調整助成金支給申請書を提出することになります。

 

申請の手続き等のご不明な点については、最寄りの公共職業安定所(ハローワーク)にご相談下さい。

Q2

 その他に事業主に対し講じられた雇用調整助成金の特例措置は?

A

 通常、雇用調整助成金は、採用直後の労働者については休業等を行っても支給対象とはなりませんが、新卒者の内定取消しの防止や、採用後間もない中途採用者の雇用の安定を図るため、被災地域に所在する事業所については採用直後から雇用調整助成金の対象とする次の特例措置がとられました。

(1) 対象となる労働者

 この制度の対象となる労働者は、新卒者を含む雇用保険被保険者として継続して雇用された期間が6か月未満の方です。

(2) 支給額と支給期間

 支給額は、休業の場合1人当り大企業日額2,900円、中小企業は日額3,200円となっています。また支給期間は被保険者として雇用され、6か月間雇用されるに至った日の前日までとなっています。

(3) 適用期間

 この特例措置の適用期間は平成7年3月1日から平成8年1月22日までとなっています。

Q3

 雇用保険を支払っていない企業は、今回の雇用調整助成金の特例措置の対象とならないのでしょうか?

A

 本来雇用保険に加入している企業しか対象になりませんが、雇用保険に加入していない企業でも、2年間遡及して加入していただければ助成の対象になりますので、管轄の公共職業安定所へご相談下さい。

Q4

 当社では、昨年10月より本年9月までの1年を雇用期間と定めパートタイム労働者を雇用しておりましたが、今度の震災により事業所が倒壊などによって事業の継続が不可能となり、当分は再建のめどがたたないのでパートタイム労働者を解雇したいと労使で話し合っています。このような場合でも労働基準法上の解雇予告手当を支払わなければならないのでしょうか。

A

1.解雇の手続きは

(1) 労働基準法第20条但書「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」には解雇するにあたっては解雇予告することなく、また解雇予告手当を支払う必要はないとの例外規定を設けています。ただし、これについては「行政官庁の認定を受けなければならない」ので、解雇予告除外認定申請書を所轄の労働基準監督署へ提出し、天災事変によることと、事業の継続が不可能であることの認定を受けて下さい。

(2) また、この度の地震により事業の全部または大部分の継続が不可能となり休業をせざるを得ない場合で、パートタイム労働者との話し合いで休業あるいは退職について同意が得られた場合には解雇予告またはそれに代わる予告手当の支払いは法律上要しません。

(3) 以上の方法をとらないで解雇する場合には、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、予告をしない場合には30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

(4) ただし、退職金規定などがある場合には、就業規則などに定めた支払期日までに退職金を支払う必要がありますが、金融面で困難な場合は労使で話し合って分割払いなど最善の方法を決めるようにして下さい。

2.ご相談は

 各事業所において種々のケースがありますので、解雇、賃金、労災などのご相談はフリーダイヤルで次までお問い合わせ下さい。

神戸東労働基準監督署 0120 ・ 504700

神戸西労働基準監督署 0120 ・ 554700

Q5

 当社は、今回の震災により休業せざるを得ませんが、パートタイム労働者を含む従業員に対し休業手当の支給が出来ませんので、雇用調整助成金の申請は行っていません。この場合、一時的にでも従業員を離職させざるを得ませんが、従業員が受ける雇用保険の失業給付の特例措置はありますか?

A

 従業員の方々に対しては、通常の失業給付と同じく雇用保険の基本手当の支給が受けられる次の特例措置が講じられています。

(1) 神戸市をはじめとする災害救助法の適用地域にある事業所が被災により休止・廃止され、一時的に離職を余儀なくされた雇用保険の被保険者の方は、その離職前の事業所に再雇用されることが予定されていても、一定要件の下、雇用保険の基本手当の受給ができます。

(2) 神戸市をはじめとする激甚災害地域にある事業所が被災により休止・廃止され、休業を余儀なくされた雇用保険の被保険者の方は、平成7年1月17日から平成8年1月16日までの間、離職していなくとも一定要件の下、雇用保険の基本手当の受給ができます。

(3) 神戸市をはじめとする激甚災害地域に住所を有する受給資格者は、所定給付日数分の支給終了日までに就職できる見込みがないときは、従来の失業給付日数が60日間を限度として延長されます。

Q6

 当社は、今回の地震により大きな打撃を受け、人事担当者が退職してしまいました。労働保険の事務手続きをすべて任せていましたので、未知なことが多く困っております。労働保険とはどのようなものでしょうか?また特にパートタイム労働者は、労働保険に加入させなけれぱならないのでしょうか?

A

1.労働保険とは

 労働保険という一つの保険はありませんが、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険をあわせて、通常労働保険といっています。この保険を運営している保険者は政府で、労働省が管轄しています。

2.雇用保険とは

(1) 目的と適用事業所

1 目的

 雇用保険は、失業した労働者に必要な給付を行って生活の安定を図るとともに、失業者の求職活動を容易にする等、その就職を促進し、あわせて労働者の職業の安定に役立てるため、失業の予防、雇用機会の増大、雇用構造の改善、労働者の能力の開発および向上、その他労働者の福祉の増進を図ることを目的としています。

2 適用事業所

 雇用保険の適用事業所は、労働者が1人以上雇用されている場合には、強制適用となります。しかし、パートタイム労働者(短時間労働者)の中には、臨時内職的にしか就労しない者、就労日数が少ないために受給資格を満たす可能性が少ない等、雇用保険の被保険者として取り扱うことが必ずしも適当でない方がいます。

(2) 適用されるパートタイム労働者

 パートタイム労働者については、一定の基準を設け、この基準を満たした場合に被保険者としています。 まず、労働時間、賃金その他の労働条件が就業規則(就業規則がない事業所では、それに準じる規定など)又は雇用契約書、雇入通知書等で明確に定められていると認められる場合で次のいずれにも該当するときには、被保険者として取り扱われます。

1. 1週間の労働時間が20時間以上であり30時間未満であること。

2. 1年以上引続き雇用されることが見込まれること。
  雇用期間の定めのない契約の場合や1年未満の契約であっても、契約を1年以上にわたって反復更新することが見込まれる場合は、この要件に該当します。

3. 年収が90万円以上あると見込まれること。
 このように、短時間労働者に対する雇用保険の適用については、1週間の所定労働時間の算出が重要な意味を持っており、資格取得届、資格喪失届等を提出する際にはその者の1週間の所定労働時間を算出し、届書に記載しなければなりません。 1週間の所定労働時間とは、就業規則、雇用契約書等によって、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間であり、国民の休日、会社創立の休日等の特別休日を含まない週をいいます。 なお、1週間の所定労働時間の変更により、短時間労働被保険者以外の被保険者となった場合には、事業主は区分変更届を管轄する職業安定所に提出しなければなりません。 パートタイム労働者に雇用保険が適用されるかどうかについては、管轄の公共職業安定所に相談し、的確な手続きをとって下さい。

(3) 失業給付受給資格

 短時間労働被保険者の求職者給付は、被保険者が離職した日から遡って、被保険者であった期間を1か月ごとに区切っていき、この区切られた1か月の期間に給付の支払いの基礎日数が11日以上あるときを被保険者期間2分の1か月として計算し、11日以上の月が12か月以上あることが必要です。10日以下の月は被保険者期間に含めません。

(4) 失業給付の内容

 短時間労働被保険者の場合はその就業時間が一般に比べ短いことから算出される賃金日額も低くなるので最低額を2,970円とし、さらに3,960円未満の賃金日額までについては最高の100分の80を乗じて基本手当の日額を定めています。 パートタイム労働者の所定給付日数については、離職の日の年齢、被保険者であった期間等に応じて90日から210日の範囲となっています。 下の表は、被保険者に対する失業給付です。

●一般求職者給付の給付日数( )内は短時間労働被保険者(パートタイム)

※神戸市をはじめとする激甚災害地域に住所を有する受給資格者の方は、今回の震災に伴う特例措置として、所定給付日数分の支給終了日にまでに就職できる見込みがないときは、更に60日を限度として給付日数が延長されます。

被保険者期間
1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
退職時の年齢
30歳未満
90日(90日)
90日(90日)
180日(180日)
180日(180日)
30歳以上45歳未満
90日(90日)
180日(180日)
210日(180日)
210日(210日)
45歳以上60歳未満
180日(90日)
210日(180日)
240日(180日)
300日(210日)
60歳以上65歳未満
240日(210日)
300日(210日)
300日(210日)
300日(210日)
被保険者であった期間が1年未満である場合は一律90日です。

3.労災保険とは

(1) 目的と適用事業所

1 目的

 労災保険は、業務上または通勤途上の災害により労働者が負傷、病気、障害、死亡した場合に迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、傷病にかかった労働者の社会復帰の促進やその労働者及び死亡した労働者の遺族の生活安定を援助し、労働者の福祉の増進に努めることを目的としています。

2 適用事業所

 労働者(パートタイム労働者、アルバイト、臨時雇い等を含む)を1人でも使用している場合は強制適用事業所となります。従って、パートタイム労働者であっても、その雇用形態のいかんを問わず、労災保険の対象となり、保険給付が受けられることになります。

(2) 保険給付内容

 保険給付の内容としては、業務災害については、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年余の6つがあり、通勤災害についてもほぼ同じ給付が行われます。 労災保険では、パートタイム労働者も通常の労働者と全く同じように取り扱われるので、パートタイム労働者を雇用している事業主は、毎年4月1日から5月15日までの間に提出する労災保険料の確定・概算申告書の中の労災保険料算出の基礎額に、パートタイム労働者の賃金を算入することが必要です。 なお、詳しくは管轄労働基準監督署へお問い合わせ下さい。

Q7

 当社は、雇用保険に未加入です。一般社員やパート社員から失業給付の手続きを依頼されました。どのようにすればよろしいでしょうか。また今回の震災で賃金台帳も出勤簿もなくなってしまった場合はどうでしょうか?

A

(1) 雇用保険被保険者の種類

 雇用保険は前述の通り、1人でも他人を雇うことになれば、強制適用ですので加入していただくこととなります。週30時間以上勤務する一般被保険者と週20時間以上30時間未満勤務する短時間被保険者の2種類があります。 前者は6か月以上継続勤務すれば雇用保険の基本手当が受給でき、後者は1年以上勤務すれば同じく受給できます。

(2) 雇用保険加入等の手続

 会社として早急に雇用保険の加入手続きをすることが必要です。時効の関係で2年以上遡及できませんが、今なら平成5年4月1日もしくは平成6年4月1日にさかのぼり保険料を収めることによって、各社員の資格取得に基づき受給資格ができます。雇い入れ日と社員の住所等を記入した労働者名簿を作成し、過去からの賃金台帳を整えて、管轄の労働基準監督署にて保険関係成立届と労働保険申告書を提出し、その後所轄の公共職業安定所で事業所設置届と被保険者資格取得居を提出してください。

(3) 従業員への離職票作成

 事業廃止・休止等で事業の継続ができなくなった場合や事業の縮小が余儀なくなり社員を解雇した場合等、雇用保険を受給する権利が当然社員にはありますので、退職の日にさかのぼって社員それぞれに離職票を作成し、所轄の公共職業安定所へ届出をし、発行された離職票を各社員に手渡してあげてください。

(4) 地震で賃金台帳等がない場合

 地震で賃金台帳も出勤簿もなくなってしまい、正確な賃金支払額が不明の時は、社会保険の標準報酬月額か、もしくは源泉徴収の給与支払報告書を持参して、公共職業安定所の窓口で相談してください。以上の証明する書面もなく何もない場合でも、事業主として社員の今後を考え、急ぎ手続きを行えるよう公共職業安定所で相談をしてください。

Q8

 今回の震災におけるパートタイム労働者を含む従業員に対する災害の労災認定の適用はどうなるのでしょうか?全般的なことも含めて教えて下さい。

A

1.適用の考え方は

 本来、天災地変による負傷は業務外で、労災の適用はありませんが、天災地変による災害の労災認定の考え方について、従来から被災労働者が、作業方法、作業環境、事業場施設の状況等からみて危険環境下にあることにより被災したと認められる場合には、業務上の災害として取り扱ってきている状況です。この考え方に基づき、個々の事例について業務上外の考え方をもって、今回の地震による災害についても、労災適用の判断を行うことになっています。尚、通勤途上の災害についても、業務災害と同様、通勤に通常伴う危険が現実化したものと認められれば、通勤災害としても労災の適用をすることとなります。詳しくは、管轄労働基準監督へご相談下さい。

2.災害で労災として認められた例は

例えば、今まで労災として認められた災害としては、次のような場合です。

1 作業現場でブロック塀が倒れたための災害

 ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の欠陥等の問題が認められたため。

2 作業場が倒壊したための災害

 作業場において、建物が倒壊したことにより被災した場合は、当該建物の構造上の弱さから来るものであったため。

3 事務所が土砂崩壊により埋没したための災害

4 バス運転手の落石による災害

5 工場または倉庫から屋外に避難する際の災害や避難の途中、車庫内のバイクに衝突した災害

 業務中に事業場施設に危険な事態が生じたため避難したものであり、当該行為は業務に付随する行為として、業務災害と認められる。

6 通勤途上において列車利用中、列車が脱線したことによる災害等

Q9

 勤めていた会社が今回の震災によって事業活動が停止しており、賃金の支払いを受けられない場合、パートタイム労働者も含む従業員に対する「未払い賃金の立て替え払い制度」があると聞いたのですが、どのような内容のものでしょうか?

A

1.制度の内容は

 未払い賃金の立て替え払い制度とは、会社が倒産したため、賃金が支払われないままに退職した労働者に対して、その未払い賃金のうち8割相当額を国が事業主に替わって立て替え払いをする制度です。

2.受けるための要件は

 立て替え払いを受けることができる方は、次の2つの要件を備えている方です。

1 労災保険の適用事業として1年以上事業活動を行ってきて倒産した会社(個人商店も含む)に勤めていたこと。法律上の倒産手続きがとられている場合および阪神・淡路大震災の直接的な被害により事実上倒産状態にあると労働基準監督署長が認定した中小企業の場合も含みます。

2 倒産について裁判所や労働基準監督署に申し立てた日から起算して6か月前の日以後2年間の期間内に退職していて、その退職日の6か月前の日からの定期給与または退職手当(賞与は含まれません)に未払があること。

3.具体的手続は

 今回の震災の影響により立て替え払いを請求するについて、写真付きの身分証明書、印鑑、会社の罹災証明書、労災保険番号がわかる書面、賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、直近の決算報告書等労務、財務関係資料が必要になります。極力認定申請にあたって、事業主や労務担当者が従業員とともに管轄労働基準監督署に行ってください。尚、倒産の認定を受けた後に、労働基準監督署長に「確認申請書」を提出し、未払賃金の確認を受けて下さい。その時に必要になる資料として、本人名義の預金通帳、給与明細書、就業規則、解雇辞令等の資料持参が必要です。詳しくは管轄労働基準監督署でご相談下さい。

4.利用できないのは

 立て替え払いのできない企業として、雇用調整助成金の特例的な適用を受けている場合、休業者が失業給付の特例支給を受けている場合や災害復旧貸付制度等を利用している場合です。ご注意下さい。

Q10

 この度の震災で、被災地域の事業主には労働保険料の申告・納付期限が延長されるとのことですが、具体的にはどのようになるのでしょうか?

A

1.労働保険の負担者は

 事業主が納付している労働保険料は、労災に係る部分と、雇用保険に係る部分とで成り立っています。 労災保険制度は、事業主の災害補償責任を代位しているところから、全額、事業主が負担することとされています。 しかし、雇用保険事業の運営費用は、事業主と従業員が負担し、さらに国庫負担金も充てられています。

2.労働保険の納付の仕方は

 適用事業所での労災保険料、雇用保険料の納付事務は、毎年1回、保険年度(4月1日から翌年3月31日)の当初に、その年度の概算の保険料を申告・納付しておきます。 そして、翌保険年度が終了した時点で、実際に支払った賃金総額(基本給、時間外手当、家族手当、通勤手当、役職手当、精皆勤手当、賞与等)に基づいて計算した確定保険料と、すでに納付した概算保険料とを清算する仕組みを毎年繰り返し行います。 この手続きを、労働保険の年度更新事務といいます。

3.保険料率は

 労災保険における保険料率は、事業の種類(内容)によって災害の起こる発生率が異なるため、その災害発生率に応じて、現在、53業種に区分して、最低6/1000から最高149/1000と事業の種類よって分かれています。 本年申告の概算保険料率では、33種について下げられる見込みです。 雇用保険における保険料率は、一般の事業については11.5/1000ですが、このうち被保険者が4/1000を負担し、残りの7.5/1000を事業主が負担します。 その他、農林水産業や清酒製造業の保険料及び住設業の保険料については、被保険者、事業主負担分とも一般の事業よりも1/1000から2/1000程度増えます。

4.保険料の延納は

 保険料の延納ですが概算保険料は原則として1年分を一括前払いすることになっていますが、3回に分割して納付することもできます。これを延納といいます。

1 継続事業(一般の事業)の場合延納できるのは労働保険事務組合に事務を委託するか、または概算保険料の額が18万円以上(労災保険または雇用保険のどちらか一方の場合には9万円以上)のときです。

2 有期事業(建設の事業等)の場合延納できるのは事業の全期間が6か月を超える場合であって、労働保険事務組合に事務を委託するか、または概算保険料の額が30万円以上のときです。 継続事業の延納期限は、その概算保険料を4月1日から7月31日までを第1期分として5月15日までに納付する。8月1日から11月30日までを第2期分として、8月31日までに納付する。また、12月1日から翌年3月31日までを第3期分として、11月30日までに納入することとなります。

5.被災地事業所への措置は

 この度の地震による被災地の事業所の労働保険料の申告・納付期限の延長については、労働大臣が災害の復旧状況をみて、あらためて告示する日まで延長することが決められましたが、現在の時点では告示がでていません。 労働保険料申告・納付手続きの説明会が本年も4月に行われますので、各事業所では、3月分の賃金を従業員に支払ったところで、前年4月分から本年3月までの総支払賃金(基本給、時間外手当、家族手当、通勤手当、役職手当、精皆勤手当、賞与等)を集計して、申告・納付の準備をしておいて下さい。 なお、雇用保険の被保険者のうち、毎保険年度の初日(4月1日)現在で、満64歳以上の一般被保険者または短時間労働被保険者の雇用保険料は事業主負担分も含めて全額免除となります。

お問い合わせ先

兵庫県労働部雇用保険課徴収係 TEL078−362−3388

兵庫労働基準局労災業務課 TEL078−332−7040

詳しいお問い合わせ先

関係公共職業安定機関

兵庫県労働部職業安定課 神戸市中央区下山手通5−10−1 (078−362−3379〜80)

神戸公共職業安定所 神戸市中央区中山手通3−7−1 (078−393−1070〜78)

灘公共職業安定所 神戸市中央区脇浜町2−5−21 (078−291−8609)

尼崎公共職業安定所 尼崎市名神町3−12−2 (06−428−0001)

西宮公共職業安定所 西宮市青木町2−11 (0798−71−3721〜5)

伊丹公共職業安定所 伊丹市昆陽1−1−6 (0727−82−3414〜5)

明石公共職業安定所 明石市大明石町2−3−37 (078−912−2277〜80)

洲本公共職業安定所 洲本市塩屋2−4−5 (0799−22−0620,0737)

西神公共職業安定所 神戸市西区糀台5−3−8 (078−991−1100)

労働基準監督署

兵庫労働基準局 神戸市中央区波止場町1−1 神戸第2地方合同庁舎 (フリーダイヤル 0120−601700) (フリーダイヤル 0120−674700)

神戸東労働基準監督署 神戸市中央区波止場町1−1 神戸第2地方合同庁舎 (フリーダイヤル 0120−504700)

神戸西労働基準監督署 神戸市兵庫区水木通10−1−5 (フリーダイヤル 0120−554700)

〈資料〉1.「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」

「事業主が構ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針]

事業主のみなさんヘ

パートタイム労働法及び指針の概要

 短時間労働者について、その適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善に関する措置、職業能力の開発及び向上に関する措置などを講ずることによって、短時間労働者がその能力を有効に発揮できるようにし、短時間労働者の福祉の増進を図るために「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「法」という。)が、平成5年6月11日に成立し、同年12月1日に施行されました(ただし、短時間労働援助センターに関する部分は平成6年4月1日施行)。また、この法律に基づき「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」(以下「指針」という。)が定められました。ここでは、法及び指針により事業主が講ずべきとされる措置についてまとめていますので、事業主の方は、ここに書かれた事項について十分理解し、適切な措置を講ずるように努めてください。

◆詳しいお問い合せは…

 兵庫婦人少年室 神戸市中央区波止場町1−1 神戸第2地方合同庁舎 (TEL 078−332−7045)

短時間労働者とは◆(法第2条)

 法及び指針の対象となる短時間労働者は、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者です。

事業主の責務◆(法第3条)

 事業主は、その雇用する短時間労働者について、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して、適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善(以下「雇用管理の改善等」という。)を図るために必要な措置を講じ、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めてください。

短時間雇用管理者の選任◆(法第9条)

 通常10人以上の短時間労働者を雇用する事業所ごとに、指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理させるため、短時間雇用管理者を選任するように努めてください。

事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針

 労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働者保護法令は原則として短時間労働者にも通常の労働者と同様に適用されますので、遵守しなければなりません。また、労働条件は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるべきですが、特に、次の点については適切な措置を講じることが必要です。

短時間労働者の適正な労働条件の確保

●雇入通知書の交付

 短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件に関する事項を明らかにした文書(雇入通知書)を交付するように努めてください。ただし、労働条件が労働契約の締結を書面で行うことや就業規則を交付することによって明らかにされている場合は、この限りではありません。

就業規則の整備

 短時間労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する場合は、労働基準法の定めるところにより、短時間労働者に適用される就業規則の作成が必要です。また、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めてください。

労働時間

 短時間労働者の労働時間及び労働日を定め、又は変更するに当たっては、当該短時間労働者の事情を十分考慮するように努めてください。また、できるだけ所定労働時間外や所定労働日以外の日に労働させないように努めてください。 所定労働時間外や所定労働日以外の日に例外的に労働させることがある場合には、雇入れの際、所定労働時間外や所定労働日以外の日に労働させることがある旨及びその程度を明示するように努めてください。

年次有給休暇

 短時間労働者に対しても労働基準法の定めるところにより、所定の日数の年次有給休暇を与えることが必要です。

期間の定めのある労働契約

 期間の定めのある労働契約を更新して1年を超えて引き続き使用することとなった短時間労働者について労働契約の期間を定める場合は、その期間をできるだけ長く(労働基準法により1年を超えることはできません。)するように努めるとともに、労働契約を更新しないときは、少なくとも30日前にその旨を予告するように努めてください。

賃金、賞与及び退職金

 短時間労働者の賃金、賞与及び退職金については、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めてください。

健康診断

 常時使用する短時間労働者については、労働安全衛生法の定めるところにより、健康診断を実施することが必要です。

短時間労働者の教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善

教育訓練の実施

 短時間労働者の就業の実態に応じ、その職業能力の開発及び向上等を図るための教育訓練を実施するように努めてください。

福利厚生施設

 給食、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等の施設の利用については、短時間労働者に対して通常の労働者と同様の取扱いをするように努めてください。

育児休業に関する制度等

 事業主は、短時間労働者について、育児休業等に関する法律の定めるところにより、育児休業に関する制度その他の必要な措置を講ずるようにしてください。

雇用保険の適用

 雇用保険の被保険者に該当する短時間労働者については、雇用保険法の定めるところにより必要な適用手続をとることが必要です。

高年齢者の短時間労働の促進

 短時間労働を希望する高年齢者に適当な雇用の場を提供するように努めてください。

通常の労働者への応募機会の付与

 通常の労働者を募集しようとするときは、現に雇用する同種の業務に従事する短時間労働者であって通常の労働者として雇用されることを希望するものに対し、これに応募する機会を優先的に与えるように努めてください。

所定労働時間が通常の労働者と殆ど同じ労働者の取扱い

 所定労働時間が通常の労働者とは殆ど同じ短時間労働者のうち通常の労働者と同様の就業の実態にあるにもかかわらず、処遇又は労働条件等について通常の労働者と区別して取り扱われているものについては、通常の労働者としてふさわしい処遇をするように努めてください。

〈資料〉2.パートタイム労働者の雇用管理の改善等に関する助成金の内容と活用例

◆新しく助成金ができましたのでお役立てください◆

中小企業短時間労働者雇用管理改善等助成金

(パートタイム助成金)

 中小企業事業主が、通常の労働者との均衡等を考慮して、短時間労働者についても一定の福利厚生制度(雇入時健康診断、定期健康診断、人間ドック、成人病検診、慶弔見舞金(結婚手当金、出産手当金、弔尉金)、講習、保険・共済、通勤に関する便宜供与)を適用する場合に一定額を助成します。

〜パートタイム助成金の内容について〜

Q 助成金が支払われるのは、どのような事業主に対してですか?

A 助成金の支給対象となるのは、次のすべてに該当する事業主です。

1 労災保険及び雇用保険の適用事業主であること。

2 中小企業事業主であること。

3 パートタイム労働者に新しく適用される制度を設け、費用を負担した事業主であること。(労働協約又は就業規則により定められていることが必要です。)

4 最初に当該措置を実施してから、3年を経過していない事業主であること。(各措置ごとに、3年間助成することを意味します。)

Q 中小企業とは具体的に、どの範囲まで含みますか?

A 中小企業主の範囲は業種により次の図のとおり異なります。

一 般 業 種
(建設業・製造業等)
卸 売 業
小売・サービス業
従業員300人以下
又は
資本金・出資金
1億円以下
従業員100人以下
又は
資本金・出資金
3千万円以下
従業員50人以下
又は
資本金・出資金
1千万円以下

Q 助成金はどのような措置にいくら支払われるのですか?

A 次の措置が講じられたパートタイム労働者の人数分が助成金として事業主に支払われます。(事業主の経費負担額が助成金額に満たない場合は、負担した額になります。)

パートタイム助成金支給額一覧(1人当たりの金額)
雇い入れ時または定期健康診断 1,300円

基礎的な知識習得のための講習の実施

1,400円
人間ドック 3,500円 団体生命料、傷害等保険・共済の保険料、掛金の負担 4,000円
成人病検診 1,300円 通勤バスの運行等通勤対策 8,600円
慶弔見舞金 結婚祝金
出産祝金
弔尉金
8,000円
3,000円
7,000円
   

※措置を受けたパートタイム労働者の2分の1以上が雇用保険の被保険者であることが必要です。

〜助成金はこのように活用されています〜

○ 定期健康診断の実施(従業員89人、うちパートタイム労働者21人)

 香川県で電気機械器具製造業を営むY社では、パートタイム労働者に対して新たに定期健康診断を実施し、その実施費用の一部について、助成金の支給を受けました。

○ 傷害保険の保険料の負担(従業員24人、うちパートタイム労働者18人)

 京都府で衣服、身の回り品製造業を営むA社では、死亡・後遺傷害と入院、通院等に支払われる普通傷害保険料を事業主が負担したことにより助成金の支給を受けました。

助成金の申請手続きなどの詳細については…

(財)21世紀職業財団兵庫事務所(TEL078−272−3055)

 


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