アマチュア無線運用とHAMボランティアの活動 : 阪神・淡路大震災 : 実状記録と反省そして更なる無線運用の構築に向けて. - 発行:阪神・淡路大震災で活動したアマチュア無線家有志, [1995.11]. 請求記号:震災-14-145.

阪神.淡路大震災を体験して、今後の地震についての考察

平成7年5月23日作成 1/3

 今後の考察に参考とするために、専門家、地震学者の発言.意見を抜粋し下記に列挙した。   谷 通好

阪神.淡路大震災の発生日時 1995年平成7年1月17日午前5時46分
阪神.淡路大震災のデーター
神戸海洋気象台 南北方向NS818ガル東西方向EW617ガル上下方向332ガル。バンプねじれ揺れ現象と約30秒間続いて揺れたうち、大きな揺れは初期の2回。水平、上下の動きが重なった揺れが、すべてを決めた。 マグニチュード7.2 本邦初の震度7。
神戸大学工学部 東西方向で55.1cm 南北方向で31cm(40cm以上は激震 震度7)。

(1)大阪湾の海底に、海底下数十米の地層から計8ケ所で巨大な海底断層が確認された。
大阪湾断層は基盤の落差が千米にも達する大逆断層で、千年に一度の地震の度に西側は隆起し、東側は沈下。このため六甲山は高くなり、大阪湾東部は淀川などから大量の土砂が流れ込んでも、浅くならない。

(海上保安庁測量船海洋550トン、大阪市大名誉教授 藤田和夫氏)

(2)近畿地方では、約500年前の摂津地震から、五つの大地震が大阪周辺で時計回りの円を描くように順番に連鎖発生が起きている。
1 1,510年(室町時代)生駒山地の西が動いた摂津地震
2 1,596年(安土桃山時代)有馬.高槻構造線などが動き、京都に大被害が出た伏見地震
3 1,662年(江戸時代)琵琶湖西岸活断層系が動いた寛文2年の地震
4 1,819年        同上         彦根地震
5 1,854年        同上         伊賀上野地震
今後は岡山、広島、和歌山の北の断層、京都の有馬.高槻構造線が動き、地震を起こす可能性がある
(通産省地質調査所地震化学課長 佃 栄吉氏)

(3)活断層を一つ一つ見るより、巨視的にとらえる必要がある。有史以来、記録に残るマグニチュードM6.4以上の大規模地震の震央を地図に重ねると、隠れたラインが浮かび上がった。花折.金剛活断層、敦賀湾.伊勢湾構造線から東へ糸井川.静岡構造線まで数本の断層帯がほぼ並行に走っている。長い静穏期のあと活動期に入ったとみられる十六世紀以降、敦賀湾.伊勢湾構造線で地震が起きると、ほぼ30年以内に花折.金剛断層線が後を追い、さらに10〜45年後に紀伊半島沖の海底を走る南海トラフ(海溝)で地震を発生させている。律義なまでのサイクル性だ。敦賀湾.伊勢湾構造線上で始まる地震活動は、1,586年以来4組、12回を記録。現在、5巡目に入っており、1,963年、越前沖地震が起こったため、続く花折.金剛断層線上が心配される。予測は1993年ごろ京都〜大阪間でM6.5だった。結果は2年遅れ、震源もやや西にずれたもののほぼ的中。地震空白地域の活断層が動くことも、過去千年記録がなかった六甲断層帯で起こったことで証明される。

  敦賀湾.伊勢湾構造線  花折.金剛断層線  南海トラフ
1  1,510年 10年 1,520年
2  1,566年 30年 1,596年 9年 1,605年
3  1,666年 4年 1,662年 45年 1,707年
4  1,802年 28年 1,830年 24年 1,854年1月
          24年 1,854年11月
5  1,906年 30年        
   1,909年 27年 1,936年 8年 1,944年
     10年 1,946年
6  1,963年 30年 1,993年 8年 ※2,001年予想
  ※2,038年予想

 敦賀湾.伊勢湾構造線に沿う活断層が動いて発生した地震が、西の花折.金剛断層線へと乗り移り、最後は紀伊半島南方海底の南海トラフで起こって締めくくるサイクル。 敦賀湾.伊勢湾構造線と花折断層線に挟まれる近畿南部と中央構造線以南の四国.九州南部を、独立したマイクロ(微小)プレートとみなす。西南日本北部が乗るアムールプレートと東北日本が乗る北アメリカプレートに挟まれ、常に東西からの圧力を受け続ける。やがてエネルギーがたまり、飽和状態になると敦賀湾.伊勢湾構造線と花折金剛の二つの断層群で相次いで地震を発生させる。大阪マイクロプレートは南にせり出し、北へ圧力を掛けているフイリピン海プレートとぶつかり合う。こうして南海トラフで地震を発生させると想定する。阪神大震災を引き起こした六甲断層帯が花折.金剛断層線の延長とすれば、 ※今度は南海地震の番である。次の発生は2,003年〜2,040年の間となる。
(岐阜大学地震学教授 金折裕司氏)

(4)重力の変化は、地殻構造の不均一性を示す。重力がプラス異常なら周囲より多くの資量があり、マイナス異常だと質量不足を表す。つまり、地下にも圧力を受けて詰まった部分と、逆にまばらになった部分があるのだ。完成した重力異常図に、淡路島.洲本市沖から神戸市和田岬の先端をかすめながら北東方向へ走る帯が見受けられ、まさに大阪マイクロプレートの境界ではないか
(名古屋大学火山地震予知センター助教授 志知龍一氏)

(5)昨年、平成6年相次いだ小地震は、まず1月末から春にかけ、京都府美山町でM3〜2の地震が発生。次いで.京北町でも3月頃から小地震が続き、6月にはM4.6の地震が起きた。 10月には亀岡市でM4.3、大阪府能勢町でも地震活動があった。11月には兵庫県猪名川町で群発地震が発生。同時期、神戸市須磨区でも小地震が起きた。活動地域は南西方向に並んでおり、地殻のストレスが徐々に南下したのかもしれない。阪神大震災の前触れの可能性がある。阪神大震災自体の前震活動は地震前日の16日午後6時半項ごろからスタート。震源地の明石海峡付近で午後11時50分頃までに、M3からM1.5の地震が計4回発生している。
(京都大学防災研究所教授 田中寅夫氏)

 昨年11月から12月にかけて、兵庫県川辺郡猪名川町周辺で起きた群発地震以降、六甲山の地下岩盤にかかる東西方向の圧縮力が弱くなっていた。圧縮力が緩むと活断層がずれやすくなるため、猪名川町の群発地震による圧縮エネルギーの部分的解放が、阪神大震災を引き起こすきっかけになった可能性もあるという。
六甲山の地下岩盤には常に東西方向の圧縮力がかかり、1,993年9月ごろからその力が強まっていた。猪名川で群発地震が起こる11月始めから、圧縮力が弱まり、坑道内の湧水量も増加、地震にかかる圧縮力が低下したことで、地下水水路が広がったことが考えられる。今回動いた淡路から北東方向に延びる活断層群が、神戸.阪神間北部を東西に走る有馬.高槻構造線と交差するポイントに猪名川町があることを重視、猪名川町の群発地震で周辺の圧縮力が弱まり、淡路から阪神間にかけての北東方向の活断層群がずれやすくなったのでないか、と分析している。
(京都大学理学部教授 藤森邦夫氏、元教授 田中豊氏)

(6)今回の阪神淡路大震災は西日本が地震の活動期に入った兆しと見る。西日本の地震に大きな周期性があることは、古文書などの地震の記録から分かってきている。プレートのぶっかり合いで南海トラフにはエネルギーがたまり、8クラスの巨大地震が100年から150年の周期で起きる。これが南海地震で、最近では1,946年と1,854年(安政南海地震)に発生した。南海地震が起きる前後数十年間、西日本の内陸部に直下型地震の活動期がやってくることがわかってきた。トラフにたまったエネルギーの影響と見られ、前回の南海地震では、北丹後や北但馬,鳥取,福井で大地震があった。その前の安政の活動期には1,854年の伊賀上野地震M7.3や1,830年の京郡地震M6.5などが知られている。次の活動期が既に始まり、阪神大地震が起きた。本来なら次の南海地震は2,050年ごろで、活動期に入るのが少し早過ぎる。が、南海地震の津波は、安政の地震の津波より、かなり小さかった。南海トラフにたまったエネルギーを全部吐き出さなかったためらしい。その分、次の地震が早く起きる可能性が高い。これに伴い、西日本の活動期も早まったらしい。 一方、東日本は既に地震の活動期に入っているらしい。釧路沖のあと、北海道南西沖、北海道東方沖、三陸はるか沖と、わずか2年に4回も大地震が起きた。釧路沖地震が引き金となって、連鎖反応を起こした可能性がある。
今後仙台沖などさらに南部に波及するかも知れない
(京都大学理学部教授 尾池和夫氏、京都大学防災研究所教授 安藤雅孝氏)

(7)科学技術庁は5月25日までに、兵庫県加東郡社町の平木鉱山で、県南部の地下深部に、どれくらいの地震エネルギーがたまっているかを探る応力ストレス測定を始めた。平木鉱山では、1,978年から応力が増加。
それに比例して,すべり破壊(地震)の危険性を示す摩擦係数も上昇、当初は0.2だった係数が、最後に測定した1,993年には0.5前後まで増加していた。0.6になると地震が起こるとされ、兵庫県南部に東西圧縮による歪みエネルギーが蓄積し、地震が起きたことが数値の上でも証明された。通常は、大きな地震が起きると、その周辺地域では応力が下がるため、 ※平木鉱山の応力も低下していることが予想されるが、もし応力値が下がっていないときは、まだその地域の歪みエネルギーが解放されていないことになり、山崎断層などの動きが注目される
(科学技術庁)

(8)近畿では、地震の原因となる地盤にかかる力が、北東向きと北西向きの二通りがあり、4年ごとに交代、阪神大震災は北東に力が加わった典型で、今後2〜3年は、京都花折.金剛断層線や大阪生駒断層などの方向の活断層の動きが活発化する危険性があることが、明らかになった。1,938年以来、東からの力は一定しているが、南からの力は4年ごとに強弱を繰り返し、その度に北東か北西に力の向きが変わっていた。北東向きのときは過去に動いた北東方向の活断層が、再びずれて地震を起こしやすい。最近の観測結果では、1,993年から北東むきの力が加わり、今回この方向に活断層が集中している淡路から神戸.阪神間にかけての断層がずれ、市街地の直下とあって大きな被害を及ぼした。
 ※ 今は花折.金剛断層や大阪湾断層など北東の断層で地震の危険がある。1,998年から続く4年間は、(平成10年から14年 3〜7年先)は、山崎断層など北西方向の断層が心配だ
(元京都大学教授 田中豊氏)

(9)阪神大地震で活動した六甲断層群が、山崎断層と明石海峡でX字形に交わり、相互に強く影響し合う共役関係にあり、1,948年の山崎地震が千年以上にわたって保たれた二つの断層間のバランスを崩して今回の地震の引き金となった。「再び山崎断層側が動く可能性もある」と.山崎断層周辺での観測強化を訴えている。
今回の地震の活断層は、まず淡路の野島断層が動き、明石海峡で淡路東岸から延びる仮屋断層と合流、神戸側の須磨断層に、さらに、会下山断層を経て五助橋断層系に乗り移り、有馬.高槻構造線でストップしたとする。個々の活断層ではなく、こうした断層群として巨視的にとらえ、淡路から北東方向に延びる六甲断層群と、姫路北方も兵庫県中央部を北西一南東方向に延びる山崎断層とが共役関係にあるとの結論に達した。
山崎断層は1,968年に同教授が発見した左横ずれ断層で、確認部分だけでも長さ60kmにわたる大きな活断層。「明石海峡を中心に、山崎断層と六甲断層群が交差し、この地域には、東西から強い圧縮力がかかり、千年以上何とか均衡を保ってきた、しかし、M5.6の先の山崎地震で均衡が破れた」と分析。
さらに、約50万年前から顕著になった六甲周辺の断層運動は、初期に六甲山地を隆起させた後、横ずれ変異に転じた、と指摘し、阪神大地震は「まさにこのやうな転換を示している」という。
 ※ 今後の断層活動については「前回の山崎地震の規模は断層の大きさに比べて小さすぎるとの意見もある。その動きは今後十分に監視する必要がある」と警告している。
(大阪市大名誉教授 藤田和夫氏)

(10)私の考察(行政からの地震予知情報は、現在のところ全く期待できない)(JA3WGL 谷 通好)
1地震再発の可能性 (地震が起きないことを祈念しつつ...備えあれば憂いなく、被害を最少に)
   地震の周期性と、阪神大震災以降、全国各地で地震が多発している(1月以降、カレンダーに地震の記録をメモしているが、殆ど連日各地で地震が起きている)地震の活動期に入った模様で、阪神間でどれだけ揺れるか? いつ.どこで起きるか? 起きて見ないと分からないが、地震の再来はあると推測判断する。
2地震の予想地域 (悪戯にデマを飛ばさないでください。むしろ、オオカミ少年である方が良い)
  1. 神戸は、歪みのエネルギーはある程度放出されたと想定され、阪神大震災の震度7クラスの激震はないと予想する。周辺に地震が発生しても、震度5程度までくらいか?
    北神戸は、有馬、高槻構造線の動きにより、周辺は要警戒か?
  2. 大阪は、地震学的に神戸よりも先に地震予想が取沙汰されていたが、上町台地から千里山に延びる上町断層(直下型地震)、これに伴う汐見橋橈曲、大和川橈曲、生駒断層、念仏寺山断層など要警戒か?
  3. 大阪南部は、次期の南海トラフ地震と中央構造線の因果関係がどれほど作用するか、要警戒か?
  4. 京都は、琵琶湖西岸を走る花折.金剛断層と有馬.高槻構造線の合流点に近く、敦賀湾.伊勢湾構造線の動きにも関連するかも、要警戒か?本年中に比叡山に京都市内偵察用震災カメラ3〜4台設置決定。
  5. 姫路.西播磨は、山崎断層の歪みの発生程度と阪神大震災とのバランス相互作用の相関性。
    時計回りに連鎖発生、北西方向の断層など、西の岡山県などとの周辺は要警戒か?
3地震の対応策と心構え (そなえよつねに)
地震の恐怖に慄き、慌てるだけでは、明日に何かって生きてゆくことはできない。
国.県.市町村及び行政関係は、阪神大震災の経験と反省に立った対策を十二分にしなければならない。
また、地震予知技術の向上と観測網の強化、そして市民に対して予告と正確な情報を提供すること。
個人の対策としては、阪神大震災の被災経験を生かした生活態度で、地震再発生時に対処する。

1. 衣

最少の衣料の持ち出し準備。冬季は防寒用毛布、防寒コートを手近に置く。
屋内で陶磁器、ガラスなどが破壊飛散するので履き物を手近に置く。

2. 

せめて一週間分の、加熱調理をしなくても食べれる食料と飲料水を確保し保存する。
ガス供給が長期不可、電気は早く回復する。ガスコンロ、電気釜、電熱器、電気ジャーは有効。
食器はプラスチック製品が破損しないで良い。貴重品.写真.VTRテープなど持ち出し準備。
3.  二階建ての住宅では、一階居住者に家屋倒壊の下敷き被害が多く、二階居住の方が安全。
地震で出入口の扉が開閉困難となるので、軍手.鉄棒.バールなど扉.窓破壊用具を手近に置く。
避難所が満員で入れないことがあるので、出来ればテントの用意が欲しい。
4. 情報 地震発生と同時に停電するので、携帯ラジオ.懐中電灯(予備の乾電池と共に)を手近に置く。電話も不通になるので、通常から親戚、知人の連絡網を準備する。(阪神大震災の際、芦屋、大阪、神戸市内は不通、仙台東京よりの遠距離電話は受信可能で、仙台から近距離へ中継して貰った)
5. 自家用車 幅員6米以下の道路では、家屋倒懐のため走行不能になる。もし、余裕があれば、余震、火災に備えて、大通りへ疎開移動し、避難用に駐車しておく。出来れば、食料、毛布、衣料、救急薬品.飲料水を搭載する。
6. 無線局 車載通信機は電源、アンテナ常備で最高に有効。但し、常時燃料満タンクにしておくこと。
固定局は発動発電機と十分な燃料(火災予防上困難)が必要。携帯無線機(予備乾電池付き)有効


1995年平成7年4月22日現在

関連地震の記録(阪神.淡路大震災発生の前触れ地震と警告について)

データーの出所 神戸新聞掲載記事より引用、作図はJA3WGL 谷が作成しました。



神戸海洋気象台観測データー
 南北方向NS818ガル、東西方向EW617ガル、上下方向UD332ガル。一回の揺れで北西NWから南東SE方向に35〜40cmも動いた。 上下の揺れは、約10cm、30秒間続いた揺れのうち、大きな揺れは初期の2回。 水平.上下の動きが重なった激しい揺れが、大被害を発生した。

直下型地震の記録と警告(行政と市民の無関心:対策と地震の啓蒙がされていなかった)

(1) 淡路島北淡町の野島断層は、「約1,100年前の仁和3年(887年)7月に野島が大地震の為、海没した」と、江戸期の郷土誌「淡路味知草みちくさ」(幕末の安政4年1857年に小西友直.錦江親子著)に記載されている。[887年京都、摂津で被害大、官舎民家多数倒壊。大阪湾津波発生]
(2)

大阪市大名誉教授 池辺展生氏(82才)神戸市の委託を受けて1972〜3年調査、1974年研究報告。 21年前、神戸で、直下型地震の発生を警告!

(3)元神大理学部教授 三東哲夫氏(75才)過去千年の間に兵庫県内で起こった震度5以上の地震が計19回あり、うち神戸市周辺が最も頻度が高く10回。過去400年間は特に頻繁ではぼ50年に一回、計8回も記録。しかも大正5年を最後に、その後は神戸市周辺に被害のある地震はなかった。
昭和54年,兵庫県に対し「兵庫県震災対策調査報告書一地震被害の潜在危険度」と題して提出された。「震度5の地震で、神戸.芦屋.西宮は大きな被害を生じる弱点がある」と警告した
(4) 昨年、1994年7月断層研究資料センター理事長 藤田和夫氏 「関西の活断層特集」で警告発表。「大阪湾断層の活動は津波の発生につながる可能性が大きい。この場合の湾内の挙動も、特異なものになるであろう。大阪湾にM6以上の地震が発生したとき、はたしてどこが地震警報をだしてくれるのか?

(c) 1995阪神・淡路大震災で活動したアマチュア無線家有志 (デジタル化:神戸大学附属図書館)
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