大地震の被災動物を救うために : 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録 / 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会編. - 発行:[神戸] : 兵庫県南部地震動物救援本部, 1996.12. 請求記号:震災-7-156,318,319

まえがき

 近代都市を襲ったはじめての大地震に際して、人とともに暮らしていた動物たちは、直に被害を受けたばかりでなく、人の動向に大きく左右され、二重に被害を受けた。この記録はこうした動物たちを救うために、どのように行動したかを記したものである。
 この活動は単に被災した動物たちを救ったばかりでなく、動物の救護活動を通じて、人々は自らを救ったことになる。昨年10月22日(日)神戸文化ホールで開催された阪神・淡路大震災シンポジウム「人と動物の大震災 何が起こり、何をすべきか」で神戸市獣医師会長・旗谷昌彦氏は以下のように述べた。『記憶に新しいところで、普賢岳の火山爆発あるいは奥尻鳥の地震においても多くの動物たちが被災し、救護活動が展開されました。しかし、今回ほど動物の救護が話題になったこともなかったし、これほど大規模な救護活動が展開されたことは曾てなかったと思います。そのために全てが初めてのことばかりで、動物救護活動のスタート時点では戸惑いの連続であり、失敗や模索を繰り返しながらも、多くの皆様から寄せられた被災動物を何とか助けて欲しいという期待と願いは非常に強いものがございました。その表れが、全国から兵庫県南部地震動物救援本部に寄せられた2億2千万円(当時)にのぼる義援金であり、また関係諸団体、企業の強力なご支援、そして忘れてはならないのが、「動物を助けなければ」と、一途な気持ちで北は北海道、南は九州から駆け付けて頂いた、のべ1万7千名にのぼるボランティアの皆さんの献身的な努力と支えであります。一方、私達もこれらの活動を通して実に多くのことを学びました。なかでもこの動物たちの救護はただ単に動物の命を救っただけでなく、実は多くの被災市民を救う活動につながっているのだということです。家族を失い、家を失い、生きる希望さえ失った人、あるいは震災により心に大きな傷を負った人々が、動物がいたから生きられたと語る人、動物を生かすために生きる力を得た人、また不安な毎日を送っている多くの人々が、動物と一緒にに暮らすことより、何とか心の安らぎを得ようとした。神戸動物救護センターで保護収容し、里親に引き取られた動物の実に69%が被災地である神戸市を始め兵庫県下で暮らしている事実、地震前まではそれほど気にもかけてなかった犬や猫を急にかわいがりだしたり、新たに動物を飼育し出した人が増えたという事実、さらには動物病院を訪ねる人と動物が増加したという事実は、大震災の中、動物は掛け替えのない家族の一員として、人と共に逃げ惑い、避難し生きていたということです。この大震災は、コンパニオンアニマル、伴侶動物という言葉が盛んに使われる中で、目に見えない精神的な痛手を無意識のうちに動物を愛しむことにより癒そうとした行動、あるいは、無心な動物と接することにより知らず知らずのうらに心の安定を得ようとした行動が浮き彫りにされました。
 この大震災では実に多くの人々が動物により助けられたことを強く心にとどめ、今後はさらに水準の高い動物福祉に向けて我々は一層の努力をしていかなければならないと考えます。
 人が、動物とともに、より豊かな生活を続けるために、この大地震における人と動物のふれあいを詳細に記録し、この大地震が新たなスタートになることを願い、本書を刊行する。
 被災した動物を救う行動がどのような経緯で始まったか。特に、動管法に関わる兵庫県ならびに市町村の担当者は、人の救護活動が何よりも優先される状況のなかで、苦悩からの出発であった。
 この大震災において、動物愛護の精神に基づくさまざまな活動が個人あるいは団体によってなされた。本書では、それらの活動をすべて網羅することは出来ない。巻頭言にも述べられているように、本書は、我が国の動物行政に則った動物愛護活動の一環として、行政の指導を受け、(社)兵庫県獣医師会(社)神戸獣医師会並びに(社)日本動物福祉協会阪神支部を中心にしたボランティア活動を記すものである。
 なお、本文中、敬称を略している箇所があります。ご了承ください。

(c) 1996兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会 (デジタル化:神戸大学附属図書館)
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