大地震の被災動物を救うために : 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録 / 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会編. - 発行:[神戸] : 兵庫県南部地震動物救援本部, 1996.12. 請求記号:震災-7-156,318,319. p23-26

避難所の動物たち

 この震災によって自分の家を失い、避難所の生活を余儀なくされた人々は、今までとは全く違った暮らしのなかで、一時をしのぐしかなかった。こうした人々のなかには、今まで犬や猫と生活をともにしてきた人が少なからず居たはずである。地震発生から、人と動物は避難所という今までとは違った空間でどのように生活していたのか。(社)日本愛玩動物協会によるアンケート調査の結果から、見てみよう。(詳細な結果は資料編に掲載)。
 (社)日本愛玩動物協会の調査の対象は避難所ならびにそこで生活を強いられた人々であるが、被災動物の救済対策や活動等に役立てることを目的としてものであり、したがって主体は「被災動物」である。


●アンケート調査

調査が行われた時:平成7年2月17日から2月23日まで。
調査の対象:
(1)母集団
内訳
調査市区避難所数避難者数
神戸市灘区9121,177
神戸市東灘区11020,094
芦屋市515,353
西宮市15514,815
川西市11364
418カ所61,803人

下記の避難所となった418カ所と、主としてそこでの避難所生活者61,803人
ただし、数値は調査日に入手した保健所の資料による
内訳
調査市区調査避難所数避難者数個人調査数
神戸市灘区2517,44454
神戸市東灘区1811,38163
芦屋市112,82436
西宮市123,38850
川西市21007
68カ所35,137人210人(世帯)

(2)標本数 避難所 68カ所
飼い主 210人(世帯)
(3)抽出法  
 調査市区の抽出については、できるだけ全体を反映するよう意図したが、早期調査の必要性および調査員の交通の便等をも考慮した。
 市区内の避難所は、地域的均等を勘案しつつ、できるだけ規模(避難者数)の大きい避難所から抽出した。
 飼い主への調査は、主として避難所で生活している世帯を探し、意図的選択なしに可能なかぎり行なった。また避難所近くでイヌを連れた散歩中の飼い主も調査対象に含めた。
調査の内容
1. 避難所における被災動物の飼養状況調査(避難所調査)
 1 の避難所調査について
  (1)ペットを連れた避難者の有無と対応について
  (2)ペットに関する苦情やトラブルへの対処について
2. 被災動物の行動および飼い主の対応調査(個人調査)
  (1)はじめから動物と一緒にここに避難したか?
  (2)避難所やその周辺、または自宅等で飼っていて、最も気をつかっていることは何か?
  (3)避難所に動物を連れてきて、何かよいことが生じたか?
  (4)地震で動物とどういう状況になっていたか?
  (5)そのとき、飼っている動物に対し、あなたや家族の方はどうしたか?
  (6)震災のショックによって、動物がどんな反応や行動をとったか?
  (7)いまの動物の様子で、地震の後遺症と思われることが何かあるか?
  (8)動物が落ち着き、普段と同じように対応できるようになったのは、どれくらいたってからか?
  (9)今後の対応について
  (10)いま思い出して、地震の前の予知行動のようなものが思いあたるか?
  (11)行政やボランティア活動で、今回の避難所における動物の救援活動に対し、何か意見があるか?

内訳
避難所生活者157人
避難所を出た人12人
避難所に行かなかった人41人
210人(世帯)

調査の方法 調査員(愛玩動物飼養管理士15人)による面接聴取
回収結果 避難所68カ所(うち1カ所は調査拒否)で210人(世帯)
動物の飼育総数 イヌ230頭(飼い主184人) ネコ87頭(飼い主50人)
(鳥類、小動物は、標本数が少なかったので集計から除いた)

避難所の約8割で動物を飼うことができた

 調査対象68カ所から回答を得た67カ所の避難所のうち、飼育動物を連れた避難者がいるところは、56カ所に及んだ。実に83.6%の避難施設が何らかのかたちで、動物を受け入れていたとになる。結果的に動物が全く居なかった避難所はわずかに11カ所であったが、このうち5カ所は、最初から動物の持ち込みを禁止した避難所であった。残り6カ所の避難所は当初、動物を持ち込んだ避難者がいたが、調査をした時点(地震発生約1カ月後)では既に退去していなかったところであった。

ペットのいる避難所の8割以上で「人と動物」は大きなトラブルもなく共存していた

 ペットのいた56カ所の避難所のなかで、何度か、動物飼養についての苦情が避難所の対策本部に持ち込まれていたのは5カ所であり、さらにトラブルが深刻化していたのは3カ所であった。残りの48カ所は大きなトラブルはなく、人と動物が共存していた。

避難所での人と動物との共存状況件数割合
A 責任者やリーダーが対処し、比較的うまく共存している(いた)712.5%
B 苦情やトラブルがとくに表面化せず、共存している4173.2%
C 苦情やトラブルは当事者同士の話し合いを原則に共存している58.9%
D 苦情やトラブルが表面化し、対応に苦慮している35.4%
56カ所100%

避難所で犬の約4割は飼い主と同居し、猫の約6割は壊れた自宅にいた

 飼い主(避難所生活者のみ)への聞き取り調査の集計から、現在ペットを飼っている場所について、イヌでは「避難所で飼い主と同居」が37.0%を示し、ついで壊れた「自宅」が19.7%であった。
 一方、ネコは壊れた「自宅」が57.5%と圧倒的に多く約2分の1を占め、「避難所で飼い主と同居」は25.5%と4分の1にすぎなかった。

避難所でペットを飼っている人の多くは「迷わず、初めから連れてきた」

 はじめから動物と一緒にここに避難されましたか」という質問に対し、「迷わず、初めから連れてきた」と答えた犬の飼い主は63.5%であった。これに「反対されたので避難所の外で飼っている」と「様子をみて連れてきた」を含めると、避難所にイヌを連れてきた飼い主は全体の7割を超える。一方、ネコの飼い主でも「迷わず、初めから連れてきた」は4割でもっとも多かった。また、比較的多かったネコの「その他」について内訳をみると「行方不明だった」が多かった。
(有効標本数 イヌの飼い主137 ネコの飼い主40)

ペットを連れて避難所に行くことへの対応

避難所と兵庫県南部地震動物救援本部

 この調査は、地震発生から約1カ月後に行われたものであり、この頃には「兵庫県南部地震動物救援本部」は設置され、また神戸動物救護センターも被災動物の救護を行っていた。避難所の動物たちは、この動物救援本部から餌の給付を受けていた。またこの後、動物救援本部は避難所で飼育が困難になった動物の一時預り、避難所で所有者不明の動物の保護、あるいは避難生活が長引くことを危惧して所有権を放棄された動物の里親探しを行うことになる。
(c) 1996兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会 (デジタル化:神戸大学附属図書館)
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