大地震の被災動物を救うために : 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録 / 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会編. - 発行:[神戸] : 兵庫県南部地震動物救援本部, 1996.12. 請求記号:震災-7-156,318,319. p31-36

神戸動物救護センター

神戸市動物管理センター

 神戸市動物管理センター(資料編参照)は狂犬病予防法に基づき、所有者不明あるいは放浪動物を管理する神戸市の施設であり、神戸市北区山田町にある。この敷地の一部を無償で使用することになった。

神戸動物救護センター施設略図(震災直後ならびに移転後)


ビニールハウスから始まった

 床面積120平方メートルのビニールハウスに照明を付け、動物を収容するケージを置いた粗末な収容施設が「神戸動物救護センター」であった。救援物資の保管を含め、収容施設を開設する準備は1月23日頃から始まっていた。徹夜の作業をする日もあったという。そして、動物管理センター内に救護施設が完成したのは、1月26日であった。

収容動物

動物救護センターでは、収容された動物に対して、身体状態の評価、ワクチンの接種および各種疾病の治療を行い、そして、獣医師と一般ボランティアが密接に連携し、毎日の規則的な散歩など人との接触を配慮し、怯えの強い動物にはケージの遮蔽を試みるなど、劣悪な設備のなかで最善の飼養管理が施された。
 1月28日から31日までに収容された被災犬および猫は、それぞれ45頭および16頭であり、その他にアヒルが1羽の合計62であった。犬および猫とも、2月に最も多くの被災動物を収容し、5月から徐々に減少していった。こうした背景を受けて、「8月末日をもって、被災動物の受け入れを原則的に中止する」ことを公にした。しかし、受け入れを完全に中止したわけではなく、その後も個々の事情に応じて保護要請を受け入れ、9月以降、神戸動物救護センターで犬69頭、猫20頭の被災動物を収容している。

初期の収容動物と健康状態

 ビニールハウスを収容施設とした神戸動物救護センターは、被災動物にとっで快適な環境であったであろうか。緊急時の施設であり、時間と費用の両面を考えたとき、当時の判断としては最善なものであったかもしれない。しかし、ビニールハウスに収容された動物たちの多くは、その当初から何らかの異常を訴えていた。すなわち、地震による直接的な被害とともに、飼育環境の急激な変化を受け、動物たちは明らかに疲弊していたと思われる。
 震災から5月31日まで(この間、5月13日にはプレハブ・パドック式の新しく完成した施設に移ることになる)に、神戸動物救護センターの保護頭数は犬575頭、猫221頭であり、その数は少ないもののタヌキ、アヒル、モルモット等も保護された。これらの被災動物のうち、何らかの異常を示した被災犬が全体の約半数にのぼった。猫はもっと悪く、全体の6割以上が何らかの異常を示した。
 これらの異常はいつ発症したのであろうか。異常を示すまでの日数を見てみると、犬および猫のほとんどが、収容後10日以内に発症していたことがわかる。すなわち、1)収容される以前に既に病的な状態であった、あるいは2)収容時には明らかな異常は認められなかったものの潜在的に異常を保持し、収容数日後に発症した、などが推察される。残された資料を詳細に分析しても、正確にどちらが多かったのか、わからない。しかし、直接あるいは間接的に地震による影響を受け、動物たちは衰弱した状態であったことは間違いない。さらに、そうした動物たちが、最も寒い時期にビニールハウスの中で、冷たく狭いケージに入れられて生活をしなければならなかった状況を考えると、病気になっても不思議ではなかった。

何らかの異常を示した収容動物


 動物救護センターが開設され、多くの獣医師ならびに一般ボランティアが救護活動を支えたとは云え、地震発生から間のない時期に、正確な臨床データを残しておくのは困難なことであった。そうしたことを考えると、たとえ不十分であっても、残された臨床記録は貴重なものであり、今後の動物救援活動に大いに役立つものとなろう。したがって、「資料」の編で、詳細な記録を残しておきたい。

異常を示すまでの日数(神戸動物救護センター)


 どのような症状がみられたか、簡単にふれておこう。犬・猫とも、下痢、嘔吐、血便など消化器系の疾患が圧倒的に多く、犬で47.5%、猫で46.2%にも至った。次いで、発咳、くしゃみ、鼻水などの呼吸器系の疾患が多く、犬で19.5%、猫で23.2%であった。地震による外傷や骨折などは、犬で40頭(6%)、猫で34頭(7%)と比較的少なく、疾患の大部分は内科的なものであり、地震あるいは環境変化によるストレスと寒さによる病状が目立つことになった。

プレハブ・パドック式犬舎

 1月26日に設置された神戸動物救護センターは緊急的なものであり、ビニールハウスを収容施設にした。寒い時期でも、天気が良ければ温室効果が得られ、雨・雪模様の時でも暖房器具によって、被災動物を保護できる。しかし、春になり気温が上昇するにつれ、ビニールハウスの温室効果は逆に「暑さ」となって、施設の環境は悪くなる。また学生ボランティアが新学期を迎え、ボランティアが減少することが予想された。2月には219頭の被災犬と101頭の被災猫が収容され、3月1日の段階で、犬139頭および猫59頭の合計198頭の被災動物がビニールハウスで生活を続けていた。一方、2月末に、義援金は111,671,486円に達し、また救援物資も全く不足なく寄せられた。こうしたことから、保護動物の飼養管理の効率化ならびに動物保護をより考えた施設の改善を行うことになった。3月25日に着工したプレハブ・パドック式の施設は、5月13日に完成し、同日ただちに、ビニールハウスの収容施設から動物たちは引っ越した。
 新しい施設は旧施設と同様に、神戸市衛生局の敷地内にあり、引き続き神戸市の無償の提供をうけた(31ページ参照)。動物舎はプレハブ2階建でパドック式犬舎が付いたものであり、3棟から成った。また、その後空調も完備された。
 犬100頭、猫60頭が収容可能なこの新しい神戸動物救護センターの専有面積は1400平方メートル、動物舎の総面積は940平方メートルであった。

新しい施設と健康状態

 動物たちは、新しい施設でどのような生活をしたのであろうか。施設内にある診療記録から、動物たちの健康状態を見てみよう。被災犬の診療数を2週間ごとに数えたところ、最も診療数が多かったのは、2月の前半で、これは収容頭数の増加によるものであろう(37ページ参照)。その後、4月から5月にかけて、収容頭数は半分以下に減少したが、5月以後7月までは大きく減少することなく推移した。ところが、診療頭数は、5月前半から5月後半にかけて、145頭から34頭へと4分の1以下に激減した。これは、明らかに、新しいプレハブ・パドック式の犬舎によるものである。ビニールハウスから、環境が変わっても、新しい施設は動物にとって明らかに「やさしい」施設だったのである。しかし、夏の終わり頃から再び診療頭数の増加を示した。たとえ空調設備があるとはいえ、やはり暑い夏は、犬にとって大きなストレスになっていたことがわかる。こうした記録は、動物の管理を考える上でも大いに参考になるものであり、合わせて猫の記録も掲載してある。しかし、猫では、犬ほどはっきりした傾向を示さず、猫にとって新しい施設は、健康面で大きく利点のあるものでなかったかもしれない。

神戸動物救護センターの収容動物


(c) 1996兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会 (デジタル化:神戸大学附属図書館)
目次画面へ戻る