大地震の被災動物を救うために : 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録 / 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会編. - 発行:[神戸] : 兵庫県南部地震動物救援本部, 1996.12. 請求記号:震災-7-156,318,319. p50-58

一時預りと里親探し

 被災動物の救護活動のうち、飼育が困難な動物の一時預りと所有権を放棄された動物の里親探しは、大きな仕事であった。神戸ならびに三田動物救護センターで保護収容した被災動物1,548頭にのぼり、このうち1,045頭は、新たな飼い主のもとで生活を始め、356頭は再び元の飼い主との暮らしを取り戻した。

一時預りの動物たち

 神戸動物救護センター:神戸動物救護センターが収容した1,088頭の被災動物のうち、犬171頭、猫43頭およびその他2頭が、再び飼い主との生活を取り戻した。地震で大きな被害を受け飼育が困難となり、一時的に救護センターに預けられた被災犬の約4分3は、地震後5カ月以内に元の「家」に帰ることができた。しかし、同じ割合(約4分の3)の猫が「家」に帰るには、さらに長く8ヶ月を要した。
 三田動物救護センター:収容総数460頭のうち、犬97頭、猫13頭が一時預りの動物たちであった。神戸動物救護センターに比べ、収容総数に対して一時預りの動物の割合が多いことがわかる(神戸、19.9%:三田、30.4%)。そして、一時預かりの動物全体の約4分の1が、救護センターの閉鎖直前に引き取られていった。すなわち、三田動物救護センターでは、「一時預り」の比重が高かったことになる。

「家」に帰った動物たちは?

 数日から、長い動物では、一年近くの間、今までとは全く異なった環境の中で暮らした動物たちは、「家」に帰った後、どうしたのであろうか。ここに兵庫県南部地震動物救援本部が実施したアンケート調査(詳細は「資料編」参照)の結果がある。約85%の動物たちは、地震前と同じように元気に暮らしているという。しかし、回答のあった141サンプルのうち、14家族では動物がいなくなって、行方が知れないと答えている。
 動物救護センターで暮らしていた期間が長い動物ほど、行方が知れないというわけではない。彼等にとって、救護センターの暮らしのほうが良かったのかもしれない。

里親

 総数1556頭の被災動物のうち1045頭が、以前の飼い主とは別の飼い主のもとで、生活を始めることになった。動物を新たに飼い始めるときは、多くの場合、仔犬であり、子猫である。動物が家族に慣れることが最も重要なことであり、「飼いやすい」ことを考えると、当然小さいときのほうがよい。しかし、被災動物はほとんどが成熟した動物であり、推定で1才未満の被災動物は15%程度であった。
 ここに二つの組織が行ったアンケート調査の結果がある。一つは「兵庫県南部地震動物救援本部」が行った調査であり、もう一つは「(社)日本愛玩動物協会」のアンケート調査である。それぞれの調査目的に本質的な違いはなく、1)このような成犬ならびに成猫が、「全く新しい生活環境に慣れて、元気に暮らしているであろうか?」、里親にとって、「引き取った動物は負担になっていないかどうか?」を知ることであった。また 2)「神戸および三田動物救援センターの存在をどのようにして知り、どのような動機で里親になったのか?」を知ることであった。
 このような非常な災害時に限らず、さまざまな形で「動物の譲渡」はありうる。これらの調査はこうした「動物の譲渡」を考える上で大いに役立つものとなろう。

(社)日本愛玩動物協会(愛玩協)の行ったアンケート調査
実施期間平成8年2月20日から3月31日まで
調査の対象「資料編」(社)日本愛玩動物協会の調査資料「譲渡動物の行動と里親の対応」)参照
調査の方法メールオーダーの後、訪問面接法(ただし、一部は郵送+電話調査法)


兵庫県南部地震動物救援本部の行ったアンケート調査
実施期間平成8年7月1日から7月31日まで
調査の対象譲渡された犬とその里親703、譲渡された猫とその里親337
調査の方法里親調査票(「資料編」参照)による郵送調査法
救援本部調査の回答数は合わせて547(52.6%)であった。
この調査の結果を犬と猫に分け、述べる。調査の詳細は資料編にある。

被災犬は里親になれたか? −愛玩協の調査から−

 新しい環境に来たときの動物の反応や様子を聞いたところ、「すぐになれ、とくに問題はなかった」が58.0%と目立って高い。問題があった中では、「食餌を出しても、すぐには食べなかった」18.9%、「(すみっこで)ふるえていた」14.3%、「よくないていた」10.7%の順であった。

 西宮保健所(西宮市獣医師会)が実施した斡旋譲渡では「すぐになれ、とくに問題はなかった」が80.0%と際立って高率であった。



 現在(調査時、以下同じ)、動物はどうなっているかの問に対し、現在も「飼っている」人は90.9%であった。現在は飼っていない人についてみると、「人に譲渡した」1.6%、「逃げてしまった」2.9%、「死亡した」4.6%であった。
 現在も飼われているイヌのなつき具合を時間を追って聞いたところ、譲渡後“3カ月”ですでに「よくなついている」は83.5%だったが、“現在”ではそれが98.6%と極めて多くの動物がなついていることがわかる。


 引き取った動物を飼う上で困ったことがあったかどうか聞いたところ、「困ったと思ったことはない」が43.0%であったのに対し、「困ったことかある」は57.0%と6割近くを占めた。
 「困ったことがある」について、解決できたかどうかをみると、「最初はあったが、1カ月以内には解決できた」は全体の20.9%、「最初はあったが、その解決に1カ月以上かかった」は全体の13.3%であった。これに対し、「今も解決できず、困っている」は全体の22.8%を占めている。
 困ったことがあったと答えた人にその内容を聞いたところ、「動物の性格や以前どのように飼われていたか、わからなかった」が31.6%で最も高率を占めた。次いで「最初のころ、トイレのしつけがうまくいかなかった」22.7%、「よく世話をしても、なかなかなついてくれない」17.7%、「緊張したり警戒したりしている動物の扱いがよくわからなかった」16.6%などであった。

被災犬は里親に慣れたか?−救援本部の調査から−

 救援本部の調査結果は、愛玩協のそれとは若干異なる。「引き取られた動物は良くなれましたか?」に対して、「はい」と答えたのが93.7%にのぼっている。また、「飼う上で何か問題はありましたか?」に対して、「特になかった」64.1%であり、「あった」が35.2%になっている。回答数の約3分の1にもおよぶ例において、被災犬を引き取ったことによって、何らかの困難を感じたことになる。では、被災猫を引き取った里親はどうであろうか?

被災猫は里親に慣れたか?−愛玩協の調査から−

 新しい環境に来たときの譲渡ネコの反応や様子を周いたところ、「すぐになれ、とくに問題はなかった」が49.4%と半数を占めた。他方、「食餌を出しても、すぐには食べなかった」27.5%、「(すみっこで)ふるえていた」17.3%、「よくないていた」11.5%などの様子が指摘された。

 現在、動物はどうなっているかの問に対し、現在も「飼っている」は91.3%であった。現在は飼っていない人についてみると、「人に譲渡した」1.5%、「逃げてしまった」4.3%、「死亡した」2.9%であった。

 現在も飼われている動物のなつき具合を時間を追って聞いたところ、譲渡後“3カ月”の時点ですでに「よくなついている」と答えた人は81.6%で、“現在”(7カ月以上経過)ではそれが95.2%と高くなった。一方、「ほとんどなついていない」、「まだ十分になついてはいない」と答えた人は、“3カ月”の時点ではそれぞれ9.2%ずついたが、“現在”では「ほとんどなついていない」と答えた人はいなくなった。
 ネコが里親やその家族に対し、しっぽを上げて頭部をこすりつけたり甘えたような声を出して近寄ってきたりして積極的に友好的な行動を示すようになったのはいつごろからか聞いたところ、「その日のうち」が24.6%、これを含め1週間後までが46.4%、1カ月後までが72.4%であった。他方、“現在”でもまだそういう行動をとらないネコが7.2%いた。

 引き取ったネコを飼う上で困ったことがあったかどうか聞いたところ、「困ったと思ったことはない」が44.9%であったのに対し、「困ったことがある」は55.1%であった。
 「困ったことがある」の中で、解決できたかどうかをみると、「今も解決できず、困っている」24.6%、と高率を示した。またその内容を聞いてみると、「動物の性格や以前どのように飼われていたか、わからなかったこと」が28.9%で最も高く、犬の場合と同様であった。

被災猫は里親に憤れたか?−救援本部の調査から−

 これに対して、救援本部の調査では、「引き取られた動物は良くなれましたか?」に対して、「はい」と答えたのが90.9%にものぼっている。また「飼う上で何か問題は有りましたか?」に対して「特になかった」62.0%であり、「あった」が27.0%になっている。
 被災犬と同様に、約3分の1にもおよぶ回答例において、被災動物を引き取った事によって何らかの困難を感じている。このことは、動物の譲渡において、安易な気持ちで動物を引き取ると大きな負担になり、飼い主だけでなく、動物たちにもさらに苦痛を与えることになることを示唆している。

動物救護センターを何で知ったか?−愛玩協の調査から−

 兵庫県南部地震動物救援本部、神戸および三田動物救援センターを「何でお知りになりましたか」の問いに、新聞、テレビなどマスコミによるものが最も多く、6割近くを占めた。「その他」のなかでは、各獣医師会と実際に救護センターで活動したボランティアの紹介と答えたものが目立った。
 ここでも、マスメディアの影響を強く受けていたことになる。

被災動物を引き取ろうとした動機は?

 動物救援本部の調査では「動物が好きだから」が30.1%で最も多く、次いで「かわいそうだから」が20.0%であった。また「何とかしなくては」の回答が21.3%あり、大震災の被災動物を救おうとの強い思いが、里親を希望した大きな理由になっていることは間違いない。

 同様な回答は愛玩協の調査からも得られており、被災犬の里親になった動機を聞いたところ、「かわいそうだと思ったから」43.3%、「ちょうど動物を飼いたいと思っていたから」42.0%、「何か自分のできることで役立ちたいと思ったから」40.4%で、西宮保健所〔西宮獣医師会〕による斡旋譲渡では「何か自分のできることで役立ちたいと思ったから」という答えが77.5%、つづいて「かわいそうだと思ったから」55.0%と「何とか救おうとする」強い気持ちが印象に残った。里親になってよかったと思うことがあるかどうか聞いたところ、「ある」と答えた人の割合が92.2%と圧倒的に高かった。「ある」と答えた人にその内容を聞いたところ、「家族が明るくなった」が61.1%で1位を占め、次いで「一つの生命を救うことができ、よかったと思う」50.2%ほどの順であった。
 被災猫の里親になった動機(57ページ参照)について、「何か自分のできることで役立ちたいと思ったから」47.8%、「かわいそうだと思ったから」39.1%、「ちょうど動物を飼いたいと思っていたから」30.4%も。里親になってよかったと思うことがあるかどうか聞いたところ、「ある」と答えた人が95.7%と圧倒的に多かった。

 これら二つの調査結果をみてみると。同じ目的で調査し、母集団に大きな違いはないものの、「引き取った動物はよくなれたか?」の回答などに調査による違いが見られた。また、「被災動物を引き取って困ったことがあったか?」の回答においても、愛玩協の得た結果の方が「より困っている」状況であった。両者の違いの中で、特に留意しなければならないのは、調査の方法である。愛玩協の調査は訪問による「聞き取り」が主体であり、救援本部の調査は郵送によるものであった。どちらが、より事実に近いのかここで判断を下すのは避けるとして、微妙な回答を期待するときには大いに気をつける必要があろう。
 「大地震の被災動物」という特殊な状況でなければ、恐らく成り立たなかったであろう「里親」が多くあったことは間違いない。しかしながら、動機はどうであれ、全く新しい生活環境の中で、大多数の動物たちが慣れて元気に暮らしており、なお且つ、9割以上のケースで「里親になって良かった」と答えている。
(c) 1996兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会 (デジタル化:神戸大学附属図書館)
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