大地震の被災動物を救うために : 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録 / 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会編. - 発行:[神戸] : 兵庫県南部地震動物救援本部, 1996.12. 請求記号:震災-7-156,318,319. p91

ボランティア参加者のことば

初めての経験

 正直な感想は、「たいへんだった」に尽きます。でも、私はあまり何の力にもなっていません。どちらかと言うと、自分自身にとって良い体験ができたと思います。臨床を始めて、最初の本格的な咬傷を右手に残してしまいました。
 2月4日夜、決死の覚悟で車一杯の荷物を積んで神戸に向かいました。すごい渋滞のはずが、教えてもらった道が良かったのか2時間で着いてしまいました。真夜中で救護センターにも入れず、仕方なく被災地の様子を見に行きました。真っ黒に焦げ、傾いた家が軒を並べ、本当に地獄のようで、炎に焼かれた人たちを思うと胸が締めつけられるようでした。
 翌朝センター内に入り、たくさんの人たちが整然と作業している姿を見てただ圧倒され、馬場先生に「いまは遠くからたくさんの人が手伝いに来てくれているが、本当に必要なのは君たちのような近隣の人たちの力なんだよ、先か長いからね」と言われ、なんだか恥ずかしくなりました。
 まだ1カ月も経っていないのに、センター内はきちんとしたマニュアルが出来ており、逃走感染を防ぐ工夫が随所にみられました。そして、なにより感心したのは動物の健康だけでなく心理的な面も十分考え、散歩にできるだけ時間をさいて、里親に適した性格にしていくことまで考えられていた点でした。
 とにかくいろんな人に出会うことが出来たのも、今回の収穫でした。神戸の被災者もたくさん手伝いに来ていました。ボランティアの人たちの食事のために来てくれる方、散歩のため子供たちも来てくれていました。餌や毛布に手紙が添えて毎日全国から届きます。その整理も結構たいへんな仕事でした。たった1日手伝って、帰りは車の運転が困るほどの筋肉痛になってしまいました。
 次の週は子供と他のボランティアの方を連れて、泊まりがけで行きました。わずか1週間で、なかの様子はずいぶん変わっており、動物たちのストレス性下痢なども多く見られました。救護センターの生活は、決して動物たちにとってしあわせではない様に思われました。ボランティアの人々の疲れも、日増しに増しているようでした。
 正直言って、私自身もこの時、犬にかまれて自分の仕事が出来なくなりそうになり、こんな事に首を突っ込まなければ良かったと考えました。
 でも、神戸の人たちは、この現実から逃れられないのだなと思い、ボランティアとは、人の身になってやらなきゃいけない事を本当に実感しました。
 その後も、あまりたびたび行く事はできませんでしたが、今回そのことが分かっただけでまた次にやれそうな自分が出来た気がします。

(獣医師・神戸動物救護センター 平成7年2月4日)
大石 みちの

(c) 1996兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会 (デジタル化:神戸大学附属図書館)
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