大地震の被災動物を救うために : 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録 / 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会編. - 発行:[神戸] : 兵庫県南部地震動物救援本部, 1996.12. 請求記号:震災-7-156,318,319. p96-97

ボランティアの育成

 1月21日兵庫県南部地震動物救援本部の発足と共に、運営に必要なボランティアの確保が目前の課題となりました。(社)日本動物福祉協会阪神支部も会員の多くが被災し、奉仕活動ができる人数は僅かです。それでなくても日常的に有り余る人数で活動をしているのではないのです。少数であっても真の奉仕活動を心得た人々に支えられていることが阪神支部の強みですが、先行きを考えると不安でした。日常活動の経験と知識が多いのに役立ちましたが、同時に全く見通しの立たない未経験の部分が多すぎるのです。
 1月25日川崎市開業獣医師馬場先生のボランティア参加のご意向を受けて、先生のご経験に多いに期待を持ちました。1月27日神戸動物救護センターの開所と共に早々と数名のボランティアが駆け付けて下さいました。その中には以前に私が住んでいた街の方が活動を聞きつけて参加してくださった例もあり本当にうれしく感じました。彼女は、交通事情で職場に出勤できない間、黙々と働いてくださいました。日常の人様との交流の大切さをしみじみと思い返すことでした。どんなに組織が大きくても、小さな集まりでも、基本は個人の集まりなのです。
 個人の信頼が団体を支えるのです。今回の活動の発足に付いても、(社)神戸市獣医師会と(社)日本動物福祉協会阪神支部とは決して良好な間柄にあったとも言えない両者が、直ちに行動を開始できたのも個人的な信頼が基本になっていると思います。(社)神戸市獣医師会代表が旗谷先生であったことが幸いでした。以前の居住地では我が家のホームドクターとして10年間お世話になり、私がそう大胆な脱線をすることはないとご承知頂いたことでしょうし、私も旗谷先生のご誠実な仕事ぶりはよく知っていましたので、信頼できると思ったのです。また、行政機関との関わりでも、極端な言動は謹んで、節度は守ってきたつもりですので、行政機関との協力活動であっても支障は無いと考えられました。(社)日本動物福祉協会阪神支部の代表としてこの活動に参加できたことを感慨深く思っています。
 兵庫県南部地震動物救援本部設立と同時に(社)日本動物福祉協会阪神支部会員が本部電話応対等のボランティアに参加しました。(社)日本愛玩動物協会下部組織の管理士会派遣の方々にもご協力頂きました。
 この度のボランティアについては職種の多様なこと、個性的な方々の多いこと、年齢格差等難しい側面もあったのですが大過無く過ごせたことは各人の意識が高かったのだと考えます。大災害と言う非常事態の元では人は寛大になれるのだと悟りました。各人が自己の職種に固執することなく、本当に奉仕の精神に徹していただいたことが成功の鍵のように思います。例えば、獣医師であっても診療にのみ拘ることなく、大工仕事から雑用に至るまで何の不足も口にされずに実行してくださいました。専門職に秀でた方々が雑用に甘んじてくださることは、職業人としての自信があればこそではないでしょうか。見方を変えれば、自己の職種や地位に固執されるのは、職業人としての実力が乏し、自己主張を強くして他に認めさせようとしないではいられないのかもしれません。
 神戸動物救援センターでは、初期から獣医師とAHT(動物病院介護者)各一名を職員チーフとして採用し、新たなボランティア参加者の指導に当たって頂きました。
 ボランティアのリーダー的な位置に立つ方は自然発生的に、実力のある方で落ち着いたようです。組織運営側がそれを認め、不都合が無ければリーダー的役割を公認し、可能な限り自発作業に任せることにしました。しかし、施設入所動物の判断、里親の決定、診療方針等、根幹に関わることに付いては決定権を委ねることはせず、あくまでも何時でも責任ある態度がとれるように注意を払いました。全てを任せることは一見良き信頼関係を保てることのようですが、責任を持つ位置にない人に責任を被せることをさせないためには、運営者は毅然としていなければならないでしょう。
 少しばかりの経験者であるほど、組織の根幹に携わりたくなるようです。その点、馬場先生は熟練者として、私たちの判断を尊重してくださりながら、実に上手く私たちをサポートしてくださいました。
 このように、多数のボランティアが集まる場合、ボランティアのためのケースワーカーが必要です。若い人が多ければ、恋愛感情等の問題も生じますし、運営者が常に彼らに気配りをしている余裕はありません。
 今回は、(社)神戸市医師会の先生方がボランティアの不満解消に対処していただき助けられました。
 事業の最初から、第三者的な立場で事業展開の記録に専念する人も必要だと思いました。記録が必要なことが分かっていても、救護活動に迫られているのに先ず記録とは行きません。
 今後に備えて、馬場先生のような指導者を育成する必要があります。事業の成功については経済約基盤と人材に掛かっていると思います。
 1996年9月18日

日本動物福祉協会阪神支部 松田早苗

(c) 1996兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会 (デジタル化:神戸大学附属図書館)
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