大地震の被災動物を救うために : 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録 / 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会編. - 発行:[神戸] : 兵庫県南部地震動物救援本部, 1996.12. 請求記号:震災-7-156,318,319. p103

結  語

 兵庫県南部地震に際し、このような大規模な被災動物を救う活動を誰が予想したであろうか。動物福祉行政に関わる人々は、この地震によって、直接あるいは間接的に被害を受けた動物(被災動物)を救う必要性を痛感しつつ、なお「人」を優先しなければならない立場に悩んだ。このような思いは、当初、動物救護にあたった誰もが、少なからず思い、肌身に感じていたことであろう。
 しかし、地震直後から、被災動物を救うための物資ならびに人的提供が途切れなく寄せられた。この背景には、恐らく二つの重要な事柄があろう。一つは、「動物福祉」の精神であり、もう一つは動物が人間社会のなかで掛け替えのない存在になっていたということであろう。
 家族を失い、家を失い、生きる希望さえ失った人、あるいは震災により心に大きな傷を負った人々が、動物がいたから生きられたと語る人、動物を生かすために生きる力を得た人、また不安な毎日を送っている多くの人々が、動物と一緒に暮らすことにより、何とか心の安らぎを得ようとしたこと。神戸動物救護センターで保護収容し、里親に引き取られた動物の実に69%が被災地である神戸市を始め兵庫県下で暮らしている事実、地震前まではそれほど気にもかけていなかった犬や猫を急にかわいがりだしたり、新たに動物を飼育しだした人が増えたという事実、さらには動物病院を訪ねる人と動物が増加したという事実は、大震災のなか、動物は掛け替えのない家族の一員として、人と共に逃げ惑い、避難し、生きていたということであろう。この大震災は、コンパニオンアニマル、伴侶動物という言葉が盛んに使われるなかで、確実に日本における動物の地位向上が認められたと同時に、人間がこの地震により心に大きな傷を負い、不安定な生活を送っているなかで、目に見えない精神的な痛手を無意識のうちに動物を愛しむことにより癒そうとした行動、あるいは無心な動物と接することにより知らず知らずのうちに心の安定を得ようとした行動が浮き彫りにされたといえる。
 こうしたことがまさに正しいとすれば、今後ますます「人と動物」の関係は重要になり、獣医事に関わる人々の責任が大きくなることになる。そして、人々が来るべき災害に備え、災害防止に知恵を絞っているように、動物の側に立つ人々は、「災害時の動物救護」を真剣に考えねばならない。


(c) 1996兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録編集委員会 (デジタル化:神戸大学附属図書館)
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