生きる力は愛の中で育まれる : こうべキッズビタミンIの子どもたちの記録 / ビタミンIリーダー会編 - 発行:大阪 : 大阪YWCA(大阪キリスト教女子青年会), 1999.4. 請求記号:震災-7-330. p15-18

4)青年ボランティア経験交流のつどい

(1)ねらい

 震災を契機に始まったビタミンIの活動をふりかえり、この経験を他地域でボランティア活動する青年たちとの交流の中で分かち合うことをねらいとしてつどいを実施した。

(2)内容

集いもビタミン風に!

 東京のオリンピック記念青少年センターで実施。関西からは夜行バスで上京。集いの全体構成はビタミンI座の公演スタイルを真似た。初めに座長からのごあいさつ。みんなでテーマソングを歌ったり、緊張をほぐし仲間をつくるためのアイスブレイキングのゲーム。リーダーによるビタミンIの活動のエピソードを物語るスタンツ(寸劇)、引き続いてビタミンの4年間をまとめた感動のスライド上映。
 そして小西聖子、金香百合のふたりによる「ボランティア活動を考えるシンポジウム−こうべキッズビタミンIの活動からみえてきたもの−」が行なわれた。

 コニ・キムコンビの絶妙なやりとりの中、ビタミンIの活動を多様な角度から分析してみせ、あとのグループディスカッションへの有効な誘い水となった。さていよいよ、4つのテーマ別のグループタイム。(4つのテーマ:1.こころのケアの視点をもったボランティア活動 2.新しい青少年活動・プログラムの可能性 3.青年にとってのボランティア活動の意味や効果 4.地域・コミュニティに開かれたボランティア活動の可能性)熱心さのあまり時間延長したその話し合いをスタンツにまとめ上げて、全体交流会でそれぞれ発表。
 スタンツに対するコメントをシンポジストからもらい、ゲームや歌を楽しんで、最後の最後はキャンドルセレモニーの中で参加者ひとりひとりが自分の思いを語って、感動的にしめくくられた。

初めてのシンポジウム

 ビタミンIのリーダーにとって、子ども対象のプログラムをつくってきたことはあっても、成人対象のプログラムを計画実施することは初めてであった。「シンポジウム」という言葉に象徴されるような、堅苦しそうなプログラムはもっとも苦手な意識があった。
 そのせいもあって準備の段階はまたまたいろいろな議論百出となった。ここにきてこの集いの意義や意味がみいだせない、というものから、4つのテーマについて考えられない、自分たちに何が語れるのか、スタンツなんてつくれるのか、誰が参加してくれるのか(誰も参加してくれないのではないか)といった不安まで。

 また実際、事務量も大変なものだった。案内づくり、関東と関西での宣伝、資料づくり、スライドづくり、プログラム用品のとりまとめ、往復の交通手段の手配、会場と宿泊先の手配、話し合いの中身をつくっていくこと、など。キャンプのあと一息つく間もなく、これらの作業に突入していった感がある。肉体的にも精神的にも、無理の上に無理を重ねた時期であった。にも関わらず、私たちはこの困難な課題をも乗り越えていった。

 関西・関東の参加者たちからのアンケートはこの集いを準備計画してくれたことへの感謝と、参加しての喜びや感動が綴られている。参加者・主催者ともに、ここに辿り着くまでは見えなかったもの、わからなかったものが改めて明らかになってきたのだ。それぞれの地域で青少年活動をしているリーダーたちが抱える問題や体験には非常に共通するものが多く、互いに語り合うことの中で問題は随分整理され、解決の糸口さえみつかることがあるということがわかったのだ。

テーマ別のグループディスカッションでは?

 関西、関東のボランティア経験をもつ青年の熱心な話し合いではこんな言葉が語られた。

1)

こころのケアの視点をもったボランティア活動

  • トラウマに問題意識をもっていたので参加した
  • 心の傷が開いてしまった状態になってしまったらどうするのだろうと心配
  • 知的ハンディキャップをもつ人にもこころのケアは必要だと感じて参加した
  • 人間関係はむつかしい。自分もうつ病に悩んでこころのケアを受ける体験をした
  • 臨床心理を学んでいたのに友人の心の病に対して何もしてあげられなかった
  • 震災を通して改めてこころのケアの視点をもつことの大切さを感じた
  • 「何をしてあげたらいいのだろうか」から「一緒につくりあげるもの」とわかった
  • 問題を抱える子どもは限られた子どもと思っていたが、実際はどの子にもおこりえるもの、ケアの必要性を感じた
  • 家では「よい子」をしながら、キャンプでやんちゃぶりをみせる子どものストレスをどう解消させてあげられるか、と悩む
  • 不登校や暴力の問題が表出して、はじめてケアが必要になるのではない。本当は普段から日常においてケアの視点は必要だと思う
  • キャンプに参加する子はまだ愛情を受けている方だと思う。
  • 親を亡くした子どもに実際ケアなんてできるのだろうか
  • いろんな事情で親と暮らせない子に接していると、愛情に飢え、自分のことを受け入れられていないと感じる
  • ケアというとおおげさだが、リーダーが自分でできることを把握しておくことも大切
  • タミンIでの学習会や活動後の毎回のふりかえりをしたのはその意味でもよかった
  • 親の心の状態によって子どもたちは状態も違っていた
  • 「自分を認めること」の大切さを思う、自己開示は1度にできるものではない
  • 知的ハンディをもつ人には自分を閉ざしがちな人も多いが、人前でハーモニカをふいて拍手をもらったことで社会に出ていくことのできた人がいた
  • 安全であたたかい方法で子どもに「私が見ている」ことを伝える必要性を思う
    ビタミンのEye(眼差し)に通じるね
  • ほめられること、そして人にあげることができると大きな喜びになる
  • 自分で選んで、自分が発揮できる場、そのチャンスに出会えること、ビタミンIみたいなのっていいね
  • ケアなんていうと、研究に走ってしまう傾向があるけど、そういうことはすぐ子どもに伝わってしまう。でも一度参加させてもらった時、ビタミンIにはそれを包み込むやさしさや温かさがあると感じた
  • 何度も震災の話をする人に、いつしかはねつけていた自分がいたが、何度でもきいてあげるべきだった
  • でも自分の中にも聴ける範囲というものがあると思う。私はもう、「それ以上聴けない」といったことがある
  • 「つらくて、もう聴けない」と言うことで、相手に同じように痛みを感じてもらえたと思ったことがある
  • いやー、こころのケアって奥が深いですねぇ。
 
2)

新しい青少年活動・プログラムの可能性

  • 新しい、古いってなに?
  • 新しいことを考えだすのは大変、同じことを続けるのも大変
  • 子どもたちのやりたいことをさせてあげたい、その可能性は?
  • 自分の中でのマンネリ化が時にある
  • メンバーの中から意見を取り入れることをするが、メンバーにもよるかもしれない
  • 子どもは騒いだりするかと思えば親の前では行儀よく、どちらが本当の顔?
  • メンバー同志の間で関係ができあがっているようには思えない。関係が希薄
  • 子どもを取り巻く社会が急激に変化している中でさまざまな問題がおこっている。
    そんな中で青少年活動も新しい着眼点や取り組みが必要になっているということではないか?
  • こころのケアという視点や、パフォーマンスを取り入れることや、ボランティア体験をとりいれることなどがそういうことかもしれない
  • また、昔からのYWCAのキャンプのやりかたのよさみたいなものも継承しながらできるといい
  • 全く新しいというわけではないが、身障児のキャンプなどもしたい
  • それも以前だったら、まったくなかったのではないか。
    そういう意味で、やはり新しいと思う
 
3)

青年にとってのボランティア活動の意味や効果

  • どうしてボランティアをしようと思ったか?
  • ボランティアをするというより、同じ時間を仲間と共有できることが大切。
    それによって得られるものが大きい
  • ボランティアをしているのか、自分が楽しんでいるのか、それ自体不明
  • 子どもを見ていると自分の子ども時代をふりかえることができる
  • 子どもと関わってきて、一緒に何かをやって作る活動を通して自分が楽しんでいる
  • 自分が楽しいっていうのがいい、大事
  • ボランティア=何かをしてあげるというより、みんなで楽しむこと
  • リーダーはひとりひとりの気持ちを聴くことで、キャンプを通してひとりひとりの成長や向上を考えられるきっかけになれるといいな
  • ボランティアとは「無償の奉仕活動」というより社会活動に自分から参加すること楽しいから行っている。でも大変なことも多い。しかし嬉しそうな顔を見るとそれも吹っ飛ぶ
  • 楽しいことを一緒にのびのびやりたい
  • 楽しんでいるリーダーを見ているとメンバーも楽しい(「もらい笑い」現象がおこる)
4) 地域・コミュニティに開かれたボランティア活動の可能性
  • コミュニティの定義が変化して、ふたつの意味がある(例:コミュニティ心理)
    • 同じ地域にすんでいる人々
    • もっと広域で同じ価値観や共通の趣味をもっている人々
  • 農村と都市部など、場所によってはコミュニティといってもイメージが全然違う
  • 都市型では好きなもので付き合っていけば良い
  • 農村部では地域に密着した活動をしていこうとする雰囲気がある
  • 子ども会活動も親がいやがって役員をしたくない人がふえている
  • 大阪の堺でのだんじりまつりの例から
    • まつりにはヤンキーの若者たちも参加し真剣にだんじりを曳く。連帯感やまつりの心さわぐ雰囲気のなかでアイデンティティが育てられる気がする
  • うちでは、小学生までは喜んで参加するが、中学高校生は出てこない
  • 中学生には自分でやっているという雰囲気が重要だ
  • セルフエスティームについても注目するといい関わりのヒントが得られるだろう
  • ひとり者でも地域で生きていける社会、同性愛者でもシングルでも受け入れられく社会であってほしいと思う
  • 地域に人が集まれる環境も大切、仮設住宅でのふれあいセンターの意義は大きい
  • ハードとソフトの両方の条件に注目したい
  • マンションでまつりの運営を呼び掛けたひとがおり、その呼び掛けにこたえて一緒にやりだす人がおり、周辺地域まで一緒にまつりをするようになった。
    働きかける人と応える人がいて成り立つ
  • ビタミンIでは子どもたちが同じ地域の中にあっても、接点の少ない仮設住宅に訪問することで神戸の街の復興を担う一員であるというアイデンティティの形成にも効果があった
  • 自分の生まれた街に愛着をもてるってしあわせなことだ
  • 2001年から始まる総合学習でも学校を地域に開いていくことがいわれている
    子どもと地域とをつないでいくことがますます重要でかつ難しい時代だ
  • ビタミンIの着眼点のすばらしさは、子どものエネルギーを地域に還元していく仕組みをつくったことではないか、しかもそのことで子どもたちのセルフエスティームは高まり、子ども自身もエンパワーしていっている

(3)評価検討

 この集いを企画実施することによって、リーダーのこれまでとはまた違う新たな力が引き出され合った。また、大変ではあったが、この準備のプロセスで、自分たちの活動をふりかえり、スライドやビデオ、スタンツ、配布資料といったものにまとめていく作業をしたことによって、改めてそのすばらしさに気づくことができ、感慨新たであった。

 集いの当日にそれらを用いて興味深い報告をすることができ、参加者の高い評価も得て、達成感があった。
 青年同志の関係をつくっていくことにも新たなチャレンジがあった。

 さらに、メインの課題でもあった経験交流はグループディスカッションを中心に、プログラムの端々で深められ、参加者それぞれの今後の活動にむけてエネルギーを養った。


(c) 1999ビタミンIリーダー会 (デジタル化:神戸大学附属図書館)
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