神戸大学附属図書館報 Vol.7 No.2(1997.7)

教育・研究のインフラの整備を目指して

小 林 哲 夫

 図書館長に就任してまだわずかな日数しか経っていないわけですが、結構忙しい毎日を送っています。もっとも、私の研究室のある建物(兼松記念館)は図書館の管理棟の横にあって、研究室から館長室まで行くのに1分もかからない。そこで、館長室で仕事をしても、用事が済むとすぐに研究室に戻れるので、その点では助かっていますが、この近距離がかえって気ぜわしさを感じさせているのかも知れません。
 本学の図書館・図書室は7カ所に分散していて(この4月に医学部保健学科の図書室が正式に名谷分室として附属図書館の組織に組み込まれました)、そのすべての状況を把握するだけでもかなり時間がかかりそうです。辞令を交付された日とその翌日の2日間にかけて各図書館・図書室を回りましたが、それぞれの場所で問題がある一方、整備の状況には相当な差があると感じました。特に国際・教養系図書室の書庫は足を踏み入れることも躊躇するような状況で、ユーザーに相当な不便をかけていると感じました。ご存じのように、この図書室は旧教養部図書室を引き継いだもので、現在は国際文化学部と大学教育研究センターに主として対応するものとなっているわけですが、図書室の内容はまだその新しい体制にふさわしいものとなっていず、旧教養部時代の図書はいうに及ばず、かつての姫路分校にあった図書も書庫の中に押し込まれている状態になっています。
 他方、昨年10月にオープンした医学部の新営図書館では素晴らしい閲覧室やグループ研究室などができたほか、この4月からは自動入退館装置の設置により休祝日も含めてIDカードでいつでも利用できるようになりました。また、全学的に情報検索システムの整備も少しずつ進んでおり、学内LANを利用することにより、ユーザーは図書・雑誌の検索やCurrent Contentsの利用サービスを研究室などでも受けることが可能になっています。けれども、すべての図書館・図書室の整備を一度に進めることは到底不可能なことであり、情報検索システムにしてもその本格的な整備はまだこれからの大きな課題になっています。
 この数年、新営総合図書館の計画について全学的に議論が行われ、また、昨年から今年にかけては学術審議会の建議に基づいた電子図書館化構想が話題になっていますが、それらの構想のなかで全学のユーザー、しかも現在のユーザーだけではなく将来のユーザーのニーズを満たすことができる図書館をどのように実現していくのかがいま問われていると思います。
 いうまでもなく、大学図書館は、大学の教育・研究を支える大切なインフラであり、しかもこのインフラの整備は全学的な協力がなければとうてい実現できるものではありません。ある部分が良くなれば全体も良くなるというのは一面の真理を表していますが、利用環境が良くなったユーザーは全学的に見ても整備が進んでいない所に目を向けてもらわなければなりません。そのような全学的な協力のもとではじめて、大学の教育・研究を支える図書館というインフラの整備が進むものと思います。
 全学的な整備を進めるには、相当な知恵と工夫が求められます。知恵と工夫がなければ、いたずらにコストがかかって本来の教育・研究活動がかえって阻害されることになります。それに、本学の地域的・地理的な条件もあって全学のユーザーへのサービスを考えるにはきめ細かい配慮も必要です。電子図書館化構想のなかにあるバーチャル・ライブラリーの構築によって地域的・地理的な条件を少しでも緩和できたらと思っていますが、バーチャル・ライブラリーを具体化する上でも全学的な協力が大いに必要になります。
 図書館長に就任して図書館が抱える課題の大きさをあらためて痛感しましたが、いまは将来をふまえた大きな構想をじっくりと考える一方で、緊急に解決を要する問題と将来構想を実現する問題をどのようにバランスをとって取り上げていくかを私なりに考えていきたいと思います。しかし、さまざまな問題を解決していくためにはなによりもユーザーの皆さんの創造的で革新的なアイデアが必要と思います。それらのアイデアを全学的な協力のもとで実現させていくことが私の仕事であると思っています。

(こばやし てつお 附属図書館長)