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石川雅紀先生インタビュー2010.8.6 於・経済学研究科

2010年4月30日、神戸大学学術成果リポジトリKernelの学術論文登録件数が1,000件を突破いたしました。ご協力いただいた皆様に御礼申し上げます。

それを記念して、1,000件目の登録となった経済学研究科の石川雅紀先生にインタビューを行いました。先生はまたNPO法人ごみじゃぱんの代表も務めていらっしゃいます。

1,000件目となった論文について

図書館(以下「図」):この度は論文のご登録ありがとうございまいた。1,000件目の論文について教えて下さい。

90001127
日本の容器包装産業のトレンドと展望
石川, 雅紀 日本包装学会誌 13(4), 195-203, 2004

石川先生(以下敬称略):1997年に制定された「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(包装容器リサイクル法)が2000年に完全施行され、5年後の見直しを踏まえて、全体を概括するレビューです。この法律はそれまでのごみを処理する責任に変化をもたらしました。

図:変化というのは?

石川:再商品化にかかるコストをメーカーが負担する点です。それまで、ごみの責任は市町村が負っていましたが、この法律によって包装容器のリサイクルに市町村とメーカーの双方が責任をもつことになりました。各メーカーは日本容器包装リサイクル協会と契約しその費用を支払っています。そして2005年の争点は、市町村とメーカーの費用負担の割合についてでした。

図:なるほど

石川:このグラフ(<90001127>p.128 図2)を見て下さい。容器包装は経済成長と関連していて、2度のオイルショックで落ち込むと、より効率的になるように構造が変わりながらも比例関係を保っています。

図:このあたり(2000年前後)はちょっと変わっていますね。

石川:そうです。バブル崩壊以後は経済が停滞、あるいは成長しても容器包装は増えていません、むしろ減っています。これは容器包装リサイクル法と何らかの関連がありそうですが、さらなる分析が必要です。

研究について

図:先生のプロフィールを拝見したところ、工学博士を取得されていると伺っています。現在の研究について、またこの研究をはじめるきっかけについて教えて下さい。

石川:もともと、環境アセスメントモデルの開発をしていました。関西空港の開発事業に際して、開発がもたらす海への影響について研究していました。海の流れは研究やシュミレーションできますが、赤潮の発生を予測するのは難しい。魚に至ってはまったく無理です。
自分の経験を通して感じたことは、社会からの要請にこたえるという意味で、理学的、自然科学的な研究は必要とされているときに間に合うとは限らない。工学は社会のニーズと結びつきが強い分野ですが、自分が予測しようとしていたことに関して言うと、難しいということです。また、世の中で大事な問題というのは、十分な情報がない状況で、何かを決めなければならないということに気が付きました。ではどうやって合理的な答えを出せばいいのだろうという関心から社会科学の研究を始めました。

図:研究分野をまたいでみて、双方の研究方法、情報の集め方などに違いはありましたか?

石川:それはまるで違いました。工学時代、私の先生は研究する前に調べるなという方でした。先に自分でモデルを作ってから文献調査を行っていました。経済学の大学院生を見ていると、先行研究をとてもよくレビューしていることに驚きました。ただ、私は自分で白紙から考えた方が発見につながるのではないのではないかと考えています。先行研究の思考のフレームワークにとらわれて、その中で重箱の隅をつつくよりも、自分で重箱を作るというスタイルです。もっとも、車輪を発明して喜んでいる場合が多いですが。


ごみじゃぱんの事務局にて、お話いただきました

図:(机の上にあるiPhoneに気づいて)お仕事でiPhoneを使われることはありますか?

石川:メールをはじめ、連絡は全てiPhoneを使っていますが、仕事のやり方、生活が変わりました。これを持つことで「後で調べよう」ということが無くなりました。学会やシンポジウムで気になったことが出てきても、その場で調べることができます。人と話しているときも同様です。そのことで意思決定の速度が上がりました。

ごみじゃぱんについて

図:ごみじゃぱんについて、教えて下さい。

石川:ごみじゃぱんは、ごみそのものを減らすというミッションを掲げた活動です。主に簡易包装の商品の購買を促進する「減装ショッピング」と棚おちした商品を廉価で販売する「ReVALUE品」という社会実験を行っています。

図:昨年の公開講座で「減装ショッピング」について取り上げられていました。リポジトリにもご登録いただいた…

石川:どれでした?えーっと、VPNで接続しなければいけませんでしたか?

図:いえ、どこからでもアクセスできます。大学のHPにKernelのバナーがありますので…
(<81001668>「ごみ減装(へらそう)ショッピング : ごみじゃぱんの挑戦」を見つけて)これです。こういったイベントなどの広報はどのようにされていましたか?

石川:減装ショッピングの提携店の最寄り駅にポスターを貼ったり、学生達が店内ディスプレイのための棚を特注で作ってもらったり(<81001668>p.13)、今年は「減装マイスター」という研修を行いました。

図:ごみを減らそうとしたときに、どのようなことがポイントになるとお考えでしょうか。

石川:企業が簡易包装をしたくなるようにしてあげることです。その企業に影響を与えているのは生活者ですので、やはり生活者が大事になると思います。ただし、極端な解決法ではなく、簡易包装が合理的であればそちらを選ぶ、といった合理的で効率的な解決を目指すべきです。また、ごみの問題は継続性と構造的な安定性が重要です。例えばレジ袋の廃止は最初のハードルは高くても、一度、マイバックを持つことが習慣になれば元に戻ることは少ないでしょう。ですが、デポジット制などは日本のライフスタイルや空き瓶を保管する場所などの理由から、構造的に難しいと思います。このことはあまり議論がされていないように思うのですが、私は大切な論点だと思います 。

今後について

図:無理なく続けることが大切なのですね。最後に、今後の研究や抱負について教えて下さい。

石川:減装ショッピングは今年で、三年目を迎えました。結論から言うとこの取り組みは意味があると考えています。これを成長させていくために、提携する店舗を増やす水平拡大を目指すというより、この取り組みを深めていき、ごみ問題への解決としての神戸発の「神戸モデル」を発信できないかと考えています。効率的で合理的な解決を示すことで、自然に広がっていくのではないかと思います。減装ショッピングは11月までですが、それ以降も何らかのかたち続けていけるような次のステップを考えていきたいです。

図:石川先生、お忙しいなか、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします

後記

石川先生には現在の研究活動をはじめ、多岐にわたって丁寧にお話いただき、1時間のインタビューが短く感じられました。
お邪魔したごみじゃぱんの事務局には、宣伝のポスター、Tシャツや缶バッジなどのグッズも並べられてあり、みんなが楽しく、自然とごみを減らせるようにというお話が思い出されました。
まだまだ話題は尽きないのですが、最後にご協力いただいた石川先生へお礼を申し上げるかたちで、この記事を締めたいと思います。ありがとうございました。

(文責:附属図書館電子図書館係 末田)

<石川先生に今回ご登録いただいた9編>

90001126
名古屋市の容器包装リサイクル法完全施行に伴うフロー分析
岡山, 朋子 / 石川, 雅紀 / 柳下, 正治 日本包装学会誌 14(2), 101-118, 2005

90001127
日本の容器包装産業のトレンドと展望
石川, 雅紀 日本包装学会誌 13(4), 195-203, 2004

90001128
An analytical Model of sorted collection activity of household waste considering the inconvenience of consumers - multiple-category case
Ishikawa, Masanobu 日本包装学会誌 11(2), 99-113, 2002

90001129
包装業界の環境対応
石川, 雅紀 / 山口, 治子 日本包装学会誌 9(6), 327-336, 2000

90001130
Theoretical analysis of the environmental and economic impacts of sorted collection system for used packaging considering the inconvenience of consumers
石川, 雅紀 日本包装学会誌 8(5), 233-246, 1999

90001131
環境リスクアセスメント
中西, 準子 / 石川, 雅紀 日本包装学会誌 8(4), 157-167, 1999

90001132
A theoretical model of redemption system when consumer inconvenience can be described as a linear function of distance
石川, 雅紀 日本包装学会誌 5(4), 267-277, 1996

90001133
A logistics model for post-consumer waste recycling
石川, 雅紀 日本包装学会誌 5(2), 119-130, 1996

90001134
家庭における紙パック処理過程の現状に関する考察
小松, 真弓 / 猪瀬, 秀博 / 石川, 雅紀 日本包装学会誌 5(1), 22-31, 1996


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