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寺田先生インタビュー2018.8.3 於・工学研究科

kernel通信では研究者の方々に、普段のご研究の内容や方法、図書館のサービス等につきご意見をうかがい、ご紹介しています。今回は工学研究科の寺田努先生です。

――寺田先生の研究室がおもしろいと、すごく評判ですよ。

寺田先生(以下 寺):ありがとうございます。

――研究室のほうでも新聞を作っていますよね?

寺:作ってますよ。[1](Vol.23を配っていただく)
半年ごとに刊行していて、最初はデザイナーさんに編集をお願いしました。もともと研究室の部屋の立ち上げの時も知り合いのデザイナーさんに関わってもらったんです。 一度、自然科学総合研究棟4号館の僕らの部屋を見てもらえたらと思うんですけど、ダンスフロアとか鏡張りの部屋とか持ってるんですよ。
僕は10年ほど前に来まして、それが自然科学総合研究棟の4号館がちょうど建つ時だったんです。そのころ大規模なプロジェクトを持ってたので入居申請をしたら、その時のメリットが、 自分たちが中のデザインを決めてもいいという事だったので、各設備を特殊な配置にしました。 当時ダンスの研究をしていたので、ダンスフロアとフィットネスエリアとシャワールームを設置しました。学生スペースは全部フリーアドレスで、机も可動式で、4つ組み合わせると大きなテーブルになる形状です。 そういったものを全部知り合いのデザイナーさんにお願いして、コーディネートしてもらいました。

――外側のイメージと全然違う世界が広がってますね。

寺:結構お客さんがびっくりされます。研究室っぽくはないですね、少なくとも。

ダンス、音楽、演劇

――先程ダンスの研究とおっしゃっていましたが、今先生のHPをみたところ、音楽もされているのですね。

寺:はい、両方やっています。変わってますよね。
例えばこの映像、ももいろクローバーZなんですけど。
★(衣装が点滅し、流れるように光っている)

寺:この服はELチューブという光る線を利用しています。これを制御するシステムを我々の研究室で作りました。LEDのパターンだと、EXILE が紅白歌合戦で着てたものもあります。 たぶんうちの学生がハンダ付けしたものですね。[2][3]
これを研究していた学生が卒業してベンチャーを立ち上げて、今三代目 J Soul Brothers from EXILEなどのサポートをしています。他にも、このXperiaのCMとか。[4]

寺:一見、電話のCMには見えないのですけど、こういった作品をダンスクルーと一緒に演出してます。電気の付け消えによっていろんな見せ方をしてるんです。 例えば完璧に同期を取るためにはどうすればいいのか、考えなければいけないのは課題の一つですね。100分の1秒でもずれてしまうとすごくカッコ悪いんです。あそこにコンピュータが300個くらいついているわけですけど、 それを全部完璧に同じタイミングで動かす。そういう技術をダンス系で取り組んでいました。この技術は演劇でも使われてます。京都に、ギア[5] という老舗の舞台があるんですけども、例えばこれ。[6]

寺:特定の場所で衣装が光るようになっています。
他にも音楽の領域では、センサーを用いた技術に取り組んでいます。

これ[7]は、ドラムスティックにセンサーがついてて、空中を叩いたら音が出るんです。つまり、振ったスティックを空中で止める動作をしたら電子音が鳴るようになっていて、本物(のドラムセット)を叩いても電子音は鳴りません。
プロフェッショナルな人たちが使う場合でも、自分の機材を用いつつ、空中を叩いた時だけ電子音を足すことができる。精密なものだから使ってもらえるんです。振ったらとにかく音が出る、では使ってくれないですから。

――本物を叩こうとして、その途中で音が鳴ってしまいそうですよね。

寺:それが技術的にもかなり難しいところで、この辺(振りかぶって少し降ろしたくらい)で判断してるんですよ。この人は空中で止めようとしているのか、 それとも本物を叩こうとしているのか。0.05秒後先のタイミングを予想して電子音を出す。コードの先読みをしているようなイメージです。

――筋肉の動きからも?

寺:いえ、スティックにしか仕掛けはないです。スティックを振っている時の加速を分析すると、空中で止めようと思っている時は若干ブレーキがかかるんです。 本物を叩く時はストレートにスパンといくんですけど、ここで止めようかなと意識があると加速度に現れるので、それを読み取っているんです。

寺:コマーシャルサービスもいくつかやってます。梅田のHEP ホールで、お客さんに30分間アドリブで演劇してくださいというイベント。 お客さんは料金を支払ったらコスチュームと名前と、キャラの説明を受けて、あとはホールの中に放り込まれるんです。[8]

――普通の素人のお客さんが?

寺:素人です。しかもほとんど初対面で。大阪だからできるかな。基本的にはアドリブ演劇です。 センサーテクノロジーが入っていて、どこを歩いてもスポットがついてきてくれるんです。すごく没入感が出るんですよ。自分の動きに対して、環境が逐一リアクションしてくれるということが分かるんですね。 これはライトオンって言ったらライトがついて、ライトオフって言ったらライトが消えたり。虫網を持っているこの子は昆虫好きの役で、虫網を振った時のリアクションも全部入っている。 他にも、これは宇宙空間なのでみんなに酸素ゲージが付いているんです。激しく動くとどんどん減ってしまいますから、これが切れちゃう子もいるんですよ。この子は自分の酸素ゲージが切れたことに気づいてもう倒れています。 こういった演出のために使われています。
脱出ゲームだと、基本的にはクイズに答えて次に進みましょうという、一本道のストーリーをそのままなぞっていくようなものなので、作るのは簡単なんです。けどこれは演劇であり、人が何するか分からない。 その何するか分からない人達に対して、それを環境が常にリアクションを返そうと思ったら人間が何してるか、とかどういう動きをしているかというのを正確に読み取って、そこで適切なリアクションを起こすシステムを作らないといけないので、センサーの技術がすごく効いてくる。

――お客さんがアドリブしてくれるのを導こうと思ったら、一本道じゃなかなか難しいですね…

寺:ええ、もう本当に多様なんですよ。80ステージくらいやったところ、毎回本当に全然違うストーリーになったりするんで、それに対応していく。 普通、一般参加型の演劇はちょっとゲーム仕立てにして、何もない舞台で普通の衣装で立ってアドリブしてもらうんですけど、それはあまりにも敷居が高い。なのでこういう演出を加えることによって、一般の人たちでも参加しやすいようにしています。

――こういうお話って、企業側から依頼が来るのですか?

寺:そうですね、基本的にはその場合が多いです。プロフェッショナルが困ってることを解決するというのが一つの方針ですね。
学生を募集する時に、僕らは、プロ級の一芸を持ってる人は是非うちに来てくださいと呼びかけます。例えば電飾のダンスをしたのは、ブレイクダンスのコンテストで賞をたくさんとっているような学生が入ってきたからですし、 さっきのドラムのセンサーもしっかりミュージシャンとして活動してるドラマーが研究室に入ってきたので取り組んだんです。
他にも、鉄道の写真を撮るいわゆる撮り鉄というやつ。それも単に趣味で撮ってるだけじゃなく、ちゃんと本とかにも雑誌とかにもちゃんと写真がのるようなレベルの人が来たことがあって、その時はやっぱり鉄道系の研究テーマにしました。

――どんなテーマでも構わない?

寺:はい、我々の研究室はコアテクノロジーがあるわけじゃないので。だいたい大学の研究者というのは自分の本当に得意とする何かがあって、それに頼っていろんなテーマに取り組む場合が多いんですけども、 僕らはあんまり、「これでなんでも解決するぞ」というようなコアテクノロジーは持ってないです。対応力みたいなもので対処していく感じですね。センサーを使わない時もあります。ダンスの学生は、最初はセンサーを使ってモーションを読み取って、 モーションに応じて音を変えて演出するというシステムを2年ほど構築していました。ですが、ステージでプロフェッショナルなダンサーに使ってもらうようになると、認識する意味があまりなくなって。プロフェッショナルなダンサーは毎回同じ動きをするので、 わざわざセンサーで読み取る必要がないんです。絶対この動きするんだから、この動きに合わせて細かく演出を詰めていったほうがいいものができるじゃないかと。コアテクノロジーを持っている研究室だったらもちろんそこでそれを捨てるわけにもいかないんですけれども、 僕らは別にそうではないので。その学生さんに関してはセンサーをそこでスパッとやめて、ハードウェアとか通信とか認識じゃない部分の研究テーマに切り替えて、やったら凄いことになったと。
僕らは基本的にはアイデアを出せる人間になることとか、その現場で使えるシステムを作るためのノウハウを身につけてもらうというのが目的なので、その時々にあったやり方をします。

先生ご自身について

――もともと先生はどういうバックボーンだったのですか?

寺:学生時代は大阪大学でデータベース、データエンジニアリングをやってました。大阪大学の今の総長である西尾先生の研究室に所属していて、そこで僕の指導教員だったのが塚本先生なんです。
塚本先生も元々は数学者でした。僕は当時からミュージシャンとしても活動していたんですけど、塚本先生に「好きなことやっていいよ」という風に言われて、そこで音楽をテーマに研究を始めたんです。それが変革期ですね。 塚本先生も急にコンピュータを体に装着し始めて。僕はそのまま大阪大学に就職したんですが、12、3年前、塚本先生が神戸大学に教授として異動されて、僕はその後に准教授としてこちらに移って来ました。 なのでバックボーンはデータエンジニアですね。今とは全然違います。データ処理の仕方を学んだことは、一応知識として持ってますし、すごく役には立ってるんですけど。そういう意味では僕自身も学生時代から特にこだわりはなかったです。 ただデータと名の付いた何かをやってくださいと言われていたので、第一興商…

――カラオケの?

寺:はい、カラオケの。その人たちとカラオケの背景をリアルタイムで出すシステムみたいなものを作ってました。音楽とデータベースの折衷案ですね。僕は音楽をやりたかったので。 例えばデジカメで写真を撮ってから、SD カードをそのDAMのカラオケのシステムに入れると、歌詞にあった当日の自分たちの写真を後ろに出すことができるんですよ。明るい歌詞なら明るい写真を出すといった具合に。 そういう文脈に合った背景をデジカメ写真から引っ張ってくるシステムを作っていました。他にも楽器を作ったり。で、その方面で上手くいってたので、ちょっとずついろんな違う方向をやり始めて…という感じで研究は進んでいきましたね。

――10年前にこちらに来られた後の10年間でも、やる事がどんどん変わっていってるんですね。

寺:はい、変わってます。大学はすごく良い所ですね。別にテーマを変えてもいいわけですから。
ただ、どのテーマであってもそこに生じるメリット、デメリットをクリアにしています。マイナス面も示す方が信頼性は上がりますし、それが研究者として誠実な立ち位置だと思っています。 面白い現象や技術が社会実装されたらどうなるか、僕が関心があるのは現実社会への影響の方ですね。そこで僕自身にコアテクノロジーが存在したらなかなか軸足を移せないんでしょうけど、そうではないので気軽に挑戦が出来ます。

――昨今、よく学際領域という言葉を聞きますけど、それは違う分野同士の人が一緒にやることもあるし、一人が複数の分野を跨って研究することもありますよね。

寺:そうですね。組んでも上手くいかないときは、一人で両方をやればいいんです。広く深くやれる研究者が強いので、そこに力を割いた方がいいと思います。一つの研究が終わればまた別の、面白いテーマを探せますし。

――それは製品の開発のための研究とはまた違う研究の在り方ですね。

寺:はい。もちろん予算についても考えますけど、そのための研究期間は長くて3年で、その間で学生さんたちも入れ替わるので、学生さんごとに僕らは全く違うテーマをやってます。
継続テーマも特に設定しておらず、例えばあの演劇やダンスをやっていた学生が卒業したら、そのテーマは終了します。音楽のテーマも同様ですね。ドラマーの学生が抜けたらやっていない。なので、常に新鮮。

――入ってくる学生さんによって研究が変わるってことですね。

寺:はい。また一から考えます。

研究室から着ぐるみが誕生

――今は何人の学生が在籍していますか?

寺:30人くらいです。

――それは多いほうですか?

寺:そうですね。神戸大学の人数がそもそも多いんですよ。教員1人当たりの学生が多い大学なんです。大阪大学にいた時は1教員当たり1学年5名くらいでした。今研究室には1学年10人ぐらい入ってきて、 僕と塚本先生の2人で対応しています。そう考えると非常に多いですね。しかし学生が多ければ多いほど色々できますから、僕にとっては良いことです。イベントもよくやってるんですよ。

――ルミナリエの募金は寺田先生の研究室ですよね。

寺:うちの研究室ですね。 LEDを使ったオリジナル募金箱を作って、ルミナリエに参加[9]してます。 研究の延長でボランティアを行うというスタイルがなかなか面白いので、毎年、学生30人くらいで神戸市の人と協力してやっています。募金箱の製作では神戸芸術工科大学の学生がデザインしてくれました。色んな方々と連携していますね。

――30人の学生さんに対して、どのようにコミュニケーションをとっていますか?

寺:ミーティングです。 5、6チームに分けて、週一くらいで行っています。
ミーティングの他にも、うちでは変わったイベントをたくさんやってるんですよ。2チームも作れない人数なのにグリーンスタジアムを借りて草野球しに行こうとか。ミーティングも気分変えて有馬温泉でやって、 それでせっかくだから釣り堀も行こうとか。ジンギスカン食べて帰ってくるとか。そういう本質的ではない行事が山ほどあるので、そういうのに親和性が高い学生が入ってくる。

――(研究目的以外の行事について)新聞だったり、着ぐるみだったりもそれに含まれますか。

寺:うちの研究室、着ぐるみ[10]全力で作ってますよ。2種類あって、よく学内で着て歩いてるんです。もちろんルミナリエにも参加しています。
研究室内で二次元の絵のキャラクターのコンペをやって、それで優勝したのが猪だったんです。その後、デザイナーさんにお願いして、二次元のイラストから三次元のキャラクターを起こしてもらって、それを基に着ぐるみの業者さんに作ってもらいました。 本気でキャラクターメイクしています。ちなみにうちの研究室のロゴも、二次元イラストのキャラデザイナーさんに作ってもらいました。
右の着ぐるみ(らぼりん)の、この花びらの中全部に超音波センサーという距離を測れるセンサーが入っているんですけど。[11]

左:ツカボー 右:らぼりん

寺:ルミナリエで子どもたちに囲まれて、たとえ後ろから蹴りに来ても、センサーのおかげで避けることができます。 この花びらのところ全部カメラです。360度方向に10個くらいカメラがついていて、 中で顔を動かすと、カメラで切り替わった映像を常に見られる。首を90度くらい横に向けると180度ぐらい後ろまで見えるようなデザインになってます。この研究では大阪の着ぐるみ学校、つまり着ぐるみのアクター専門学校にも協力頂いて開発を進めています。 [12]

出典 : 中山 遼, 寺田 努, 塚本 昌彦「着ぐるみ非装着環境における着ぐるみポージング練習システムの評価」『エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2017論文集 』123-130 (2017)

――着ぐるみを装着しなくてもこれを使えば練習ができますね。

寺:着ぐるみ学校の生徒たちは、自分の着ぐるみを持っていないですから。しかも着ぐるみによって操作感覚が全然違うんですよ。これ見てもらうとわかるんですが、みんな同じようなポーズなのに、 実は中の人の腕の角度は全部異なっています。例えばミニオンとか、ああいう人型以外のモデルの時に、どういう動作をすればどういう風に見えるのかというのを、あらかじめ理解していると操作する上ですごく役に立ちますよね。 そして、これは宇宙服にも応用できて、JAXAの人たちともプロジェクトを立ち上げていて、宇宙服をデザインしたり、宇宙服の作業練習をするためのシステムとして使えるんですね。宇宙服の場合、関節の位置が自分の関節の位置と違いますし、 顔も大きくなります。元々この研究は宇宙服を対象に取り組んでいたんです。宇宙服の実験というのは、基本的にはプールに沈めて、無重力のような状況を作って実験するんですけど、これと同じような状況がないかなと考えてみたら着ぐるみに出会いました。 しかも着ぐるみの場合「本番」もあって、そこで緊張感のある中でちゃんとした動きをしないといけないという環境も非常に近いですよね。
こんな具合に、僕が研究の紹介をするとどの時代の話をするかによって内容が全く違ってきます。

データ管理

――過去の研究とか実験データのストックはどのように管理されていますか?

寺:大体のものは残っています。学生さんが入れ替わるので、とにかくなんでも残しておかないと後で困りますから。その辺は気を使っています。共有サーバを用意していて、 論文に関しても論文のデータを残すだけじゃなくて、例えば図の元のイラストであるとか、もちろんグラフの生データとか、そういう情報はとにかく全部残すように指示しています。容量は無限にあるから、自分の判断で消さないようにと。

――私たちも業務で共有サーバを使っていますが、整理に苦労しています。

寺:蓄積したデータを便利にするためには、それぞれの用途に応じたインデックスをどれだけ事前に貼っておくかという事がポイントですね。音声でも動画でも、たくさんのデータがあった時に、 そこに目次が存在していればすごく使いやすいデータに変わります。各データのインデックスと、それらが連なる階層構造のデザインを考えることが、蓄積したデータを管理する上でとても大事な事だと思います。
うちの研究室でも、各々が好きなように自分のフォルダを作ってアップロードしていますけど、発表のプレゼン資料だけは別にまとめて置いています。僕が参照したいのはだいたいそこにあって、報告書を作ったり、 過去の実績をプレゼンしたりする時に、時期と発表内容からリンクを貼ってすぐ辿り着けるようにしています。あとは論文に関しても、貼り付ける図にすぐアクセスできるようにそういったファイルは別置しています。 というように、使い方次第で構造が変わってくるので一概には言えませんが、データ管理がなかなか大変というのは僕にもよくわかります。
最近は、ローカルにGoogleが提供しているカスタム検索エンジンを入れてる所も多いのかな。 僕らの研究室で使ってるのはGoogleではないんですけど、30TBぐらいのストレージに検索エンジンを乗せて、そこに皆がバックアップのデータなどを入れています。

――サイト内検索のように使えるんですね。

寺:そうです。ローカルストレージに対して使えるものが登場していて、そういったGoogleクラスの検索の仕組みがあれば階層構造にする必要がだんだんなくなってきて。

――全文検索できるんだから、もうそれでいいじゃないかと。

寺:はい。関連するデータもちゃんと出てきてくれるので。だから、少しずついらなくなってきてるのかなという気がしますね。
(登録作業について)Kernelに関して、僕は何もしたことがなくて、以前は図書館にやってもらったんです。今もそうなんですか?

――はい。先生方にやって頂くのは、著者最終稿が必要な時に提出して頂く事ですね。

寺:今も新しいものが入っていると思っていいんですか?

――先生のサイトを拝見して、登録できるけどまだしていないという論文のリストがあったので、近日中にまたご連絡させて頂きます。

寺:新しいのが入るのであればすごくありがたいです。

研究の今後

――先生は論文を読む時、(出版社版ではなく)著者最終稿でもお役に立ちますか?

寺:結局、僕らが他の論文を読むのは、自分の論文を書く時にプルーフが欲しいからなんです。この人たちはこんなことを言っているけれども、僕らの研究とはここが違いますと、 典拠を示す必要がある。つまり内容さえわかればいいので、それを参考文献として書くことができれば全く問題ありません。フォーマットの違いや、文章のクオリティとかは特に気にしないですね。
僕らの場合、関連研究を増やさないと信頼性が高まらないので、とにかくたくさん書きたいんですよ。だからアクセスしやすい論文は参考文献として紹介しますけど、承認が必要だったり、気軽に引用し辛い論文は諦めてしまう事が多いです。 よほど良質な論文なら別ですけど、その関連研究の一つ一つにそれほど思い入れはないですし、普通は自分の論文を組み立てる際の材料にするための物なので、内容さえある程度わかれば充分なんです。

――わかりました。この件については先生方の中でも様々なご意見があるので、貴重なお話を頂けて感謝いたします。

寺:恐らくこれはジャンルによって状況が異なると思います。特に情報の分野では出版のスピードが速く、全部を俯瞰することが出来ないので、自分の観測範囲にある論文を選ぶ事が常です。 逆にサイテーションしてもらおうと思ったら、相手にとって観測しやすい所に自分の論文を置いておくことが重要ですね。

――分野によりますけど、基本的にE-Journalですよね。データだし、紙じゃない。

寺:使うのは紙の本ではなくほぼ電子書籍です。最初から後ろまで順番通りに読むという読み方もほとんどしなくて、何か困った時に、そこを検索して探すという感じなので、 生身の本はだんだん触らなくなっていますね。

――文系はやはり紙の方を利用される方も多いですね。昔の文献をよく利用されますので。学部が違うと本に対する意識とか使い方が違いますよね。

寺:電子書籍と紙の書籍とでどのくらい認知能力が変わってくるかとか、記憶に定着がどのくらい変わってくるかとか、僕らの分野でもその手の研究は盛んです。結論から言うと、 紙の本は優秀なんですよ。ディスプレイよりも解像度は高いですし、触った感覚でどの部分を読んでるかわかりますし。ページ間のジャンプも電子的にやるよりも感覚的にやったほうが早いですね。紙の本が持つ利点を電子に取り込もうという動きもあります。 読み進めると、側の厚みが変わっていったり、外枠だけ紙のままで、中はディスプレイが2枚ある電子書籍とか。

――図書館としても、電子資料の便利さをすごく感じています。

寺:電子化技術はどんどん進んでいきますからね。それはセンサーの分野でも同じことが言えます。センサー能力があまりにも発達しすぎて、昔は1秒間に10回しかデータが取れなかったのに、 今は1000回ぐらい取れるんですよ。その1000回取れるようになった時代に、1秒間に10回のデータを使って評価しても意味がないので、古いデータは不要になりつつあります。この技術の移り変わりの中でデータを残していくことは、より困難な作業になるかもしれません。

――最後にこれからの展望を教えてください。

寺:そうですね。研究を進めていくと新たな分野が必要になってくるので、学問分野の立ち上げが、次の目標ですね。
学問分野というのは、国際ワークショップを開いて、そこに集う人を増やして、その分野を冠する新しい名前のジャーナルを作るといった流れの中でだんだん形成されていくんですよ。認知心理学とか行動経済学とか、ああいう最近出来た分野というのも、大体その流れです。

――新たな学問分野は、そうやって出来上がるんですね。

寺:そうなんです。今流行っているものも歴史は浅いんですよ。特にコンピュータだと、最初のコンピュータができたのが1950年くらいなので、まだ70年とかそんなレベルです。 数学とか物理に比べたら、人一人分の寿命ほどの長さしか歴史がない。経済学もそれ自体は歴史が長いですけど、そこから派生してきた行動経済学という分野。あれも最初に、一人の研究者が面白いことを言い出したんです。 価格の決定に需要と供給は関係なく、人間によって、恣意的に決まるものであると。そして行動経済学という名前を付けた。それが面白かったので、人々が賛同して、集まってきたんです。 分野の立ち上げというのは、研究者をやっている以上は誰もが考えるところかなと思っています。

――先生ほど多岐にわたる分野を研究されている方だと、行く先々によって全く違うプレゼンをされているのでしょうね。

寺:出席する学会ごとに僕のキャラクターは全然違っていると思います。そのジャンルの研究者だともちろん思われているでしょうし。そういう意味では大学の研究者は複数の分野を切り替えつつ研究できるので、すごく良いと思っています。

――自分の看板を、自由に変更できるという事ですね。

寺:そうです。だから面白いですね。


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  12. 中山 遼, 寺田 努, 塚本 昌彦「着ぐるみ非装着環境における着ぐるみポージング練習システムの評価」『エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2017論文集 』123-130 (2017)

インタビュー:附属図書館 松村, 中村, 末田 / 文責:山下(研究所図書係)