神戸大学附属図書館 デジタルアーカイブ 【 稀覯書・貴重書 】

社会科学系図書館所蔵の稀覯書・貴重書

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「Summa de Arithmetica Geometria Proportioni et Proportionalita」

ルカ・パチョーリの「スムマ」社会科学系図書館(9-1-923)

 パチョーリ(Pacioli,Fra Luca)は、1445年頃イタリアに生まれ、1517年頃に没したイタリアの数学者である。有名なレオナルド・ダ・ビンチと親しい友人関係にあったと伝えられているので、まさにルネッサンスの真只中を生きた人物である。この著作は、パチョーリの主著で基本的に数学書であるが、その中に複式簿記に関する記述を含んでいることによって、印刷出版された世界最古(1494)の会計書として栄誉を担っている。「スムマ」と略称されるこの書は、縦31.5cm、横22.3cm、308丁の一冊本であるが、題名は通常「算術、幾何、比及比例全書」と和訳されている。当時の出版物はラテン語が主流であったが、本書はイタリア語で書かれていることから一般大衆用の著述であるとも言われている。初版本には「コロンビア大学図書館所蔵版と」「日本大学図書館所蔵版」の二種類あり、本学図書館所蔵のものは「コロンビア大学図書館所蔵版」により近いと思われる。

 



A treatise of commerce, wherin are shewed the commodies arising by a wel orderd, and ruled trade, such as that of the societie of merchantes adventurers is proved to bee, written principallie for the better information of those who doubt of the nevessariences of the said societie in the state of the realme of England.」
1601

 Wheeler, John.社会科学系図書館(5-3-1832)登録番号38367 昭和3年4月19日受入

 16世紀末、イギリスではチュドル王朝の中央集権が確立したが、王室の財政は100年戦争以後の戦費がかさんで苦境に陥っていた。このため、多額の関税収入が得られる商業・輸出業に目を向けるようになっていった。 当時、イギリスで輸出第1位を占めていた羊毛は、ステープル商人(個人商人団)がそのほとんどを独占していた。その後毛織物がにわかに発展し、毛織物の輸出税も国家にとって重要となってきたのだが、その毛織物輸出は、マーチャント・アドヴェンチュラース会社が独占していた。 ここで、海外貿易の組織形態として、「ステープル商人(個人商人団)」と「マーチャント・アドヴェンチュラース会社(会社組織)」のどちらが貿易業として適正か、という論争がわき起こった。時の税関吏トーマス・ミルス(Thomas Milles)は、“The customers apology”(1601)を著して、マーチャント・アドヴェンチュラース会社を非難し、自由貿易を主張した。本書は、これに反論して、マーチャント・アドヴェンチュラース会社の秘書であった著者が著したものである。ミルスとホイーラーの論争は華々しく繰り広げられたが、1604年、ミルスの自由貿易法案が議会で否決され、マーチャント・アドヴェンチュラース会社に軍配が上がる形で一件落着した。

 


 

「The Trades Increase.」1615

Roberts,John?社会科学系図書館(5-3-1841)登録番号38378 昭和3年4月19日受入

 「ステープル・システムか会社組織か」の経済的論争がミルスとホイラーの文献を生み出したことは前述したが、その後、東インド会社(株式会社制)が設立された際、「遠距離貿易では、マーチャント・アドヴェンチュラース会社と東インド会社はどちらが適正業者か?」と言う論争に発展した。著者は1613年東インド会社の最大の商船「Trades Increase」号が難破したことから両者の得失を論じ、前者の利益を認める一方で東インド会社の弱点を指摘し、さらに東インド会社が営む貿易がイギリスの海上権に不利益をもたらすことを痛烈に非難している。

 


 

The defence of trade : in a letter to Sir Thomas Smith Knight, Governour of the East-India Companie, etc. From one of that societie.」1615

Digge, Dudley?社会科学系図書館(5-3-1830)

  当時東インド会社に対する世間の非難は痛烈であったが、本書はこれに対し、同会社の重役である著者が反論したものである。貿易の危険、船舶及び海員の損傷増加と、その結果としての海上権の減少等を論拠とした東インド会社攻撃論に答え、併せて、同会社設立後、東インド貿易によりイギリス産織物類の輸出額は増加し、一方で香料その他インド産貨物の価格は下落したため、イギリスに国家的利益が生じたことを指摘している。

 


 

A discourse of trade, from England unto the East-Indies : Answering to diuerse objections which are usually made against the game.」1621

Mun,Thomas?社会科学系図書館(5-3-1840)

 著者トーマス・マンは東インド会社の重役である。金銀の輸出によるイギリス国家財宝の喪失、その他諸々の理由に基づく東インド貿易反対論に対し、本書を著し明確にこれに反論した。彼は「貿易平衡論」を論拠とし、金銀の一時的輸出が結果的には国外に流出するよりも多くの貴金属の流入をもたらす過程を極めて巧妙に論述している。

 


 

Free trade; or, the means to make trade florish; wherein, the causes of the decay of trade in this kingdome, are discouered, and the remedies also to remmoue the same, are represented.」1622

Anon. Misselden, Edward?社会科学系図書館(1-10-334) 昭和3年4月19日受入

 本書は17世紀初頭におけるイギリスの貿易衰退の主な原因が貨幣の欠乏に基づくことを論証し、いかにして貨幣を充実させ貿易を繁栄させるかの救済策を提示している。著者はその1つとして 「貿易統制の必要性」並びに「独占の排除」を主張しているのだが、ここで問題となるのは当時の自由貿易の概念である。近代的意味における「貿易の自由」は17世紀においては、ほとんど問題にされなかったのである。なんらかの統制は必要であり、そのため会社組織が選ばれるべきことは一般に認められていた。前述した「自由貿易法案」も目的は貿易の自由競争に対する制約を外すためではなく、会社に参加を希望する個人に会社を開放するためのものであった。個人の参加を阻む「会社の独占」に人々の非難が集まったのである。このように「独占の排除」こそが近世初期における自由貿易論の本質であった。ミス・セルデンの本書は自由貿易概念の発展を知る上において重要な意義を持っている。しかし、同年マリーネスの著 The maintenance of free trade according to...によって本書は反論されることになる。


 

The circle of commerce : or the ballance of trade, in defence of free trade : opposed to Malynes little fish and his great whale, and poized against them in the scale. Wherein also, exchanges in generall are considered and therein the whole trade of this Kingdome with forraine countries, is digested into a ballance of trade, for the benefite of the publique; necessary for the present and future times.」1623

Misselden,Edward?社会科学系図書館(5-3-1833)登録番号38368 昭和3年4月19日受入

 本書は前述のマリーネスの著書に対する答弁である。著者ミス・セルデンは、マリーネスの外国為替の学説に反論すると共に、貿易平衡論に基づいて金輸出の利益を指摘し、東インド会社を擁護している。 かつて東インド会社による金の輸出を貿易衰退の一因としていた著者が、このように転向したのは、彼が東インド会社と特殊な関係を持つに至ったためで、当時の論客の議論が個人的地位によって変わることの多かった一例として、注目に値する。 ミス・セルデン(マイセルデンとも呼ぶ)の両書は、古版経済書としても大変な稀覯書であると言える。

 


The center of the circle of commerce : or a refutation of treatise, instituled the circle of commerce, of the ballance of trade, lately published by E.M.」1623

Malynes,Gerard 社会科学系図書館(5-3-1834)登録番号38369 昭和3年4月19日受入

本書は、ミス・セルデンに対する反論である。著者は外国為替の学説を繰り返し、ミス・セルデンの主張する金輸出の利益は結局は幻想に過ぎないと述べている。著者マリーネスは徹底した重金主義者で、貨幣の欠乏こそあらゆる社会悪の根源なりと断定し、唯一の実際的救済策として、ステープル・システムの復活を提唱したのであった。


 

The treasure of traffike : or a discourse of forraigne trade. Wherein is shewed the benefit and commoditie arising to a common-wealth of Kingdome by the skilfull merchant, and by a well ordered commerce and regular traffike. Dedicated to the high court of parlament now assembled.」1641

Roberts,Lewes 社会科学系図書館(5-3-1853)登録番号38412 昭和3年4月19日受入

 本書は東インド会社並びにレヴァント会社の一員である著者が、商業の機能を説明し、それを発展させるための実際的方策、例えば金銀の自由輸出、関税の低減、独占および個人的特許権の排除を提唱したものである。著者は商業に対する国家的統制の必要を認め、したがって貿易の組織形態としては個々の貿易商人よりもむしろ、地域的制限を有する貿易会社を擁護している。

 


 

The key of wealth; or, a new way , for improving of trade,:lawfull,easie, safe and effectuall.」1650

 

Potter,William? 社会科学系図書館(5-3-1845)登録番号38387 昭和3年4月19日受入

 

 本書は匿名で出版されたが、著者ポッターの意図は、いかに商業の発展が商品の迅速な流通に依存するのかを示すことにあった。彼は商取引を迅速にするためには土地、家屋または顕著なる資本を担保にして振出される手形を流通させること、並びに自分の名前で発行する手形に責任を持つべき信用ある商人の会社を作ることが必要であると主張したのであった。流通資本の増加に着目し、新たなる要素を経済的論議の対象とした点において学説史上重視されている。

 


 

Sir William Petty's quantulumcungue concerning money 1682: to the Lord Marquess of Halyfax.」1695

 

社会科学系図書館(5-1-88)登録番号9383 大正6年6月16日受入

 

 世界的稀覯書として定評のある小冊子。

 


 

「Proposals for raising a coledge of industry of all useful trade and husbandry.」1699

 

John,Belleers 社会科学系図書館(5-3-1855)登録番号38418 昭和3年4月19日受入

 

 カール・マルクスによって経済学史上の ein wahres Phaenomen と称せられる社会思想家である著者の傑作の一つ。

 


参考文献: 南 諭造 「古版経済書管見」<神戸商大新聞 昭和10年3月20日号>