神戸大学附属図書館 デジタルアーカイブ 【 住田文庫 】

住田文庫について

 「住田文庫」は、「廻船式目」の研究や「海事史料叢書」の編纂で知られる住田正一氏(1892-1968)が大正14年頃までに収集していた主として海事関係や地誌関係の和漢書約6,500点を、本学の前身官立神戸高等商業学校が大正15年に同氏から譲渡されたもので、江戸時代の木版印刷本や写本、それに古文書・古記録のほか古地図なども少なくない。

 住田氏は東大法科在学中から古書の収集を始め、大正7年に大学を卒業して当時日本一の総合商社だった神戸の鈴木商店に入社したが、在神中は、神戸で最初の図書館桃木書院図書館を開設し後年神戸市立図書館の設立にも貢献した桃木武平氏の協力を得て、とくに積極的に海事関係資料を集めた模様である。

 住田氏は、その後、鈴木商店を退社して昭和2年から主として海運・造船関係の会社の役員などを勤めながら日本海事史の研究をつづけ、昭和31年には「廻船式目の研究」で法学博士の学位を授典されているが、この間、昭和22年からは3年間東京都の副知事を務めたりして、各方面で多くの業績を残している。

 しかし、この人の残したもっとも大きな業績は、何と言っても昭和4年から6年にかけて出版された「海事史料叢書」全20巻の編纂を独力で成し遂げた点であろう。

 ところで、「海事史料叢書」の内容を見て気付くのは「住田文庫」から収録された史料がたいへん多いことで、この叢書は主として「住田文庫」の海事書を典拠にして編纂されたのではないかと思われるほどである。

 最後に、「住田文庫」に含まれる近世成立の郷土資料のうち代表的なものだけでも次に紹介しておくことにする。

 「神戸村・二ツ茶屋村・兵庫津関係海運史料」全76点(帳簿49冊・文書29冊)〔註〕:延宝7年(1679)から慶応2年(1866)に至る間の船往来手形・廻船帳・諸船改帳・船賃定書などであるが、神戸村(神戸浦)関係のものがもっとも多い。

 「姫路藩浦状控」全13冊〔註〕姫路藩の船役人だった半澤氏が文化・文政期(1804-1830)に姫路藩領の沖合で起こった海難事故を処理した際の船体破損・人身安否・積荷流失などについての海への公式報告書(浦状・浦証文・浦手形)を記録した写本である。

 以上のほかにも「住田文庫」には近世成立の郷土資料とみられるものが少なくないが、紙数が尽きたので、この程度で止めることにする。

〔註〕資料内容の詳細は、昭和43年に当時の六甲台分館が「住田文庫目録」を発行しているので、それを参照されたい。

(神戸大学附属図書館報 4巻4号 所収 寺脇弘光著 より)




 海運研究学者として知られた住田正一氏が、多年苦労して蒐集した海運海事史関係である。慶長より明治初年のもの約6500点である。大正15年に本学の前身である神戸高等商業学校に寄贈されたもの。

 以下は、大正15年の学生新聞に掲載された記事から抜粋したものである。

 「我国従来の商業は経験を先にし学理を後にしたのです。一体我国の商業組織は非常に簡単に出来ています。例えて申せば商売が成り立てば手を打つ、この手打ちというは最も簡単な商法です、ところが西洋の学問が入ってきてからはとかく学問を丸呑みにし経験が後にせん。かかる事情より少し深く研究にはいる場合にはどうしても原本が必要になってきます。」